見出し画像

オタク経済圏創世記をちょっと要約して柔道のこれからを考えた。今の時代のコミュニティの作り方。

2020年3月のコロナ以降、毎週金曜日の夜、オンライン上の勉強会&交流会を開催しているのですが、昨日7月17日(金)、自分のほうから、中山淳雄氏の「オタク経済圏創世記-GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件-」を紹介させていただき、柔道のこれからを考える、というテーマで勉強会を開催しました。

「オタク経済圏創世記」を少しまとめたので、せっかくなのでここで共有できたらと思います。

なお、本は具体的で細部まで描かれ、分かりやすいのですが、ここでは必要な範囲だけ取り出し、自分が理解した範囲で単純化しています。本の内容のごく一部であり、またと異なる部分があるかもしれないのでご容赦ください。

2次元のキャラクターはどのようにファンを得てきたか?

第1章では、戦後から2000年ぐらいまでにアニメ・アニメ・ゲームがどのように日本で形成されてきたか、について。

マンガは、マガジンやジャンプのような週刊誌でとにかく低価格にして大量に供給することで、漫画を読む人を増やしていった。米国の漫画雑誌と比較すると、ページ単価が10分の1以下だったそうが、赤字をどこで補っていたかというとコミック本。

アニメもまた、低価格で作成していて、どうやって赤字を回収したかというと、アニメキャラクターを玩具やお菓子などの販売に活用することで。このときから、消費者にとっては、テレビでみるアニメのキャラクターがスーパーの売り場でも見かけるようになっていて、多チャンネルでキャラクターに接する下地ができている。その後、玩具メーカー以外にも様々な企業がアニメのキャラクターを活用できるスキーム(アニメ委員会方式)ができることで、資金が集まるようになり、たくさんのアニメが生まれるようになった。

ゲームは、「アタリショック」でゲームから人が離れた後、任天堂のファミコンが登場して世界の市場を寡占、当初はシューティングゲームのような、キャラクターもストーリーが特にないものだったのが、「ドラゴンクエスト」の登場を機に、キャラクターの物語が導入されていく。

そして大きなポイントは、キャラクターがマンガ・アニメ・ゲームを行き来するようになったこと。そのおかげで、本屋で、家のテレビで、スマホゲームで、様々な媒体を通じてキャラクターに接するようになり、ファンが増えていった。

その集大成がポケットモンスター。なんとポケモンの経済圏は約10兆円。

このように、マンガ・アニメは低価格で作品を提供することで市場を広げていき、その後、キャラクターが、マンガ・アニメのほか、ゲームにも出現するようになって、そのキャラクターのファンがどんどん広がっていく。

2000年代以降、2次元のキャラクターがファンを得る方法がどのように変わったか?

第2章は、2000年以降、ITが盛んになっていく時期であるが、本、雑誌、CD、DVDなどの「モノ」が売れなくなる一方、音楽ライブのような「体験」はどんどん売れるようになっていく。このあたりは「モノ消費から͡͡͡コト消費へ」などよく言われていることだが、面白いのは、マンガ・アニメ・ゲームという「2次元」にいたキャラクターが、音楽ライブなどのイベントなどを通じて「3次元」に出てきたこと。

「BanG Dream!」(バンドリ!)というガールズバンドのキャラクターが例に挙げられていたので、その動画を探してみたのですが、以下がそのアニメ。

このアニメのキャラクターの声優さんが実際にライブをやっている映像が以下。

日本武道館にたくさんファンが集っています。

上記はキャラクターが二次元の世界から音楽ライブという3次元に出現した例ですが、このほかなじみがある例は「ポケモンGO!」。家でゲームをするのではなく、リアルの世界(三次元)がゲームの舞台になった。

もともとグッズという形でマンガやアニメのキャラクターが3次元の世界にいたわけですが、2000年以降、音楽ライブ、ポケモンGOのようなゲーム、コスプレイベントなど、様々な形でキャラクターと「3次元」で接点をたくさんもてるようになる。

したがって、これからのキャラクターを中心としたビジネスとは、マンガやアニメなどの「2次元」と、イベントのような「3次元」を組みわせて、キャラクターを愛するファンをどんどん増やしていくこと。例えば、具体的には、テレビでアニメを放映したら、そのキャラクターのゲームを発売してファンをゲームに誘導したり、声優さんのイベントなどを開催するなどして、ファンがアニメ、ゲーム、イベントとキャラクターと接点を持ち続けられるようにすること。

なるほど、なるほど、とうなずきっぱなしでした。

2次元のキャラクターがファンを得るやり方は、3次元のキャラクターにも応用できる。

第4章は、海外進出について。

海外でどのようにしてファンを増やしていったか、という点ですが、アニメだけ、マンガだけ、ゲームだけ、というのは難しくて、一つのキャラクターが、アニメ、マンガ、ゲームなど、様々な媒体を通じて登場していくことでファンを増やしていったという指摘。大きい影響があったのがマンガ・アニメの海賊版の大流行。ここでたくさんの人々が日本の漫画・アニメに触れたからファンが増えただろうという点。そういえば第1章でもマンガ週刊誌を低価格で提供したことでマンガの読者を増えた旨の指摘がありました。

そして、第4、5章にいきます。

これまではマンガ・アニメのキャラクターの話でしたが、著者は、この手法が、マンガやアニメだけでなく、日本文化から生まれた製品・サービス全般に使える、とお話されます。すごい。。

その具体例が新日本プロレス。2019年、アメリカで一番大きい会場を満員にしてプロレスをやったそうですが、低迷していた新日本プロレスがどのようにして復活を遂げたかというと、プロレスラーをアニメのキャラクターとして捉え、マンガやアニメと同じようなキャラクタービジネスとして捉えなおしたこと。

テレビアニメの放送、モバイルゲーム、レスラーのカードゲーム、レスラーをタレントとしてテレビやSNSで露出していくなどなど。

要は、プロレスのファンは、会場でプロレスを堪能し(3次元)、テレビのアニメ、ゲームでもプロレスに触れ(2次元)、レスラーのSNSをチェックして(3次元)と、2次元と3次元をミックスして、プロレスというものに触れ続けるように設計したこと。

著者は「ライブコンテンツメーカー」と表現しますが、キャラクターを中核にして、2次元(マンガ、アニメ、動画)と3次元(ライブ・ソーシャルゲーム・グッズ)を駆使してコミュニティを作っていく、この手法は、新日本プロレスの復活に活用できたように、マンガ・アニメだけでなく、他の日本文化に起因する製品・サービスに当てはまる。

だからそれぞれ「ライブコンテンツメーカー」となって(このビジネスモデルを使って)、それぞれの分野で世界を獲ってほしい(グローバルな市場をつくってほしい)、とお話されています。

本の副題にあるとおり、

「GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる」

なぜそうなるのか、新しい視点で社会を見ることができるようになった素晴らしい内容でした。

柔道への応用について

こんな感じで柔道関係者の勉強会で「オタク経済圏創世記」の紹介をさせていただき、柔道の場合はどうしたらいいか、という点を話し合ってみました。

柔道は他に先駆けて世界を獲った(グローバル市場をつくった)日本の文化製品ですが、日本の柔道人口は急激に減少、これからどうしたらいいか、なかなか先が見えない、というのが現状のように見受けられます。

著者が示してくださった枠組みから見ると、柔道のファンが増えていくためには何をしたらいいか、見えてくることがたくさんあって、勉強会ではこの枠組みに沿って様々なアイデアが出され、議論が盛り上がりました。

今の時代のコミュニティの作り方を解説

さて、キャラクターを中核として2次元と3次元を組み合わせてコミュニティを形成していく、この元祖は宗教かなと思いました。神様でも、アニメのキャラクターでも、実在の人でも、「物語」を中核にして、2次元(例えば聖書)、3次元(例えば教会で賛美歌を聞く)をミックスさせていくことでコミュニティをつくっていく。

総じて、アニメビジネスの展開などの話を通じて、いまの時代のコミュニティの作り方を学んだような気がします。アニメとか柔道とか大きい単位でも、自分が関わる小さいコミュニティの単位でも、いろいろ見えてくれる視点をいただきました。感謝です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?