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OJC2024 有志団体総選挙にみる「良いコミュニティの運営」
昨日開催されたONE JAPAN CONFERENCE 2024(OJC2024)にて、有志団体総選挙の審査員を務めてまいりました。今年も多数の企業から参加があり、素晴らしい活動結果が共有されました。本稿ではその内容から感じた、良いコミュニティの運営について書き留めておきます。私は当日早めの帰宅となってしまったので、ご参加の方々に置かれましては私からの講評コメントの代わりとしていただけたら幸いです。
有志団体総選挙とは
これは企業の中で風土改革や新規事業創出、その他自分たちがやってみたいという取り組みを自発的に行っている従業員の取り組みを「有志団体」とし、その活動結果を発表する全国大会のようなイベントです。過去数度にわたって実施されており、活動結果として実際に新規事業を立ち上げたり、企業内大学を作ったりと様々な取り組みが発表されてきました。
私は会社役員などではありませんが、過去数回にわたって研究者の立場から審査員として参加してきました。このような活動は大きな成果を出すまでにいくつものハードルがあり、志半ばで夢折れる事も少なくありません。しかしこのような成功事例を目にすることでまた立ち上がり、再度取り組みを始める人もいます。個々の活動は孤立しがちですが、この取り組みによって他者を認知し、工夫や成果を知る事でその影響が広まっていくという意味で、このイベントの果たす役割は年々大きくなっていると感じます。
こういう活動は成果や動機が着目されがちなのですが、私は研究者として具体的なコミュニティの設計や運用について評価するようにしています。
参加と実践のデザインができている
活動年数が長くなってくるにしたがって、新しいメンバーや会社からの指示で参加してくるメンバーなど、多様な新参者を迎えるコミュニティが増えてきたように思います。
このような活動は自発的な物なので、創設時のメンバーはモチベーションが高く、多少の困難は乗り越えるタフさがあります。しかし、初期メンバーと後から来る人ではスキルやモチベーションにどうしても差があります。
これはコミュニティ運営の困りごとあるあるの一つです。やりたいことベースで人が集まるコミュニティの場合、いろんな差が古参と新参の分断を招き、コミュニティの分裂に至ってしまうのです。イメージとしては、全国大会を目標としている部活に、楽しく試合できたらいいと思っている初心者が入ってきたようなシーンをイメージしてもらうといいでしょう(部活系漫画でよくあるやつ)。先輩が専門用語や部活内でしか通じないようなキーワードを使って当たり前に会話していても、新入部員は何もわからず疎外感だけ感じますよね。これは具体的な言葉遣いや行動だけでなく、ノリみたいなものもそうなのです。
コミュニティが継続的に発展するためには、(全部とは言いませんが)一定程度のモチベーションやスキルの差は埋めていくような取り組みが必要となります。それが参加と実践のデザインです。その際に重要なのは、新しいメンバーでもコミュニティ参加、貢献できるような具体的な行動や入口を設定しておく事です。今回の発表では新メンバーとの1on1徹底(入口)や、多数の分科会の設置(参加プロセスの多様化)などの取り組みが発表され、新しいメンバーの参加道程が分かりやすく示されているのが印象的でした。
新メンバーでもできる事は何か
そのはコミュニティの発展につながっているか
古参と新参が知識や経験を交換する場があるか
新メンバーが居場所を感じられるようになっているか
活動領域が明確で、深みを持つようになってきた
やりたいことというのは、一番最初は漠然としていることが多い物です。「もうちょっとみんなでつながりたいよね」とか「うちでも新規事業やった方が良いよね」みたいな感じで。ただこのままでは具体的な実践にたどり着かず、何度か勉強会や交流会をやって終わってしまうというのがよくある死のパターンです。
今回の発表ではそのような入り口から具体的に「どんな活動をすればゴールにたどり着けるのか」が語られていたのが非常に印象的でした。これは例えば新規事業をやりたいというゴールに対して、何をしたら事業立案ができるのかを分解できている状態と言えるでしょう。なんとなくデザイン思考の勉強会をする、みたいな感じではなく自社の現状に対して何ができるかを適切に考えられていたコミュニティが多かった印象です。
また、活動領域そのものを具体的に定義できている活動も見受けられました。DE&Iを推進したい、AIの活用を広げたいといった超具体なテーマは、それだけで活動内容が形になりやすいです。これから活動を始める人たちは、テーマをどこまでシャープにできるかにこだわっていただけると活動の初速が圧倒的に早くなると思います。
そして最後に重要なのが、「やりたい」だけでなく「会社を良くしたい」と思うのならば独善的ではいけないので、成果が組織の方向性に沿っている必要があります。この点、多くのコミュニティが「会社が9時~5時ではできないこと(富士通 福田様の講評コメントより)」にアプローチされているのが非常に印象出来でした。
自分達の活動内容を具体的な言葉で表現できるか
具体的なアクションは、ゴールや課題に基づいて具体化された物か
コミュニティメンバーは同じ目的、同じ対象を明確に共有しているか
具体的アクションは、最終的に組織の経営成果や課題と接点を持っているか
本当の仲間が増えてきた
最後に、ここ数年で一番感じたのは応援団の熱気でした。
こういう活動はとかく言い出した数人だけが頑張って走り続けるというのが多いものですが、今回は全国各地から、組織のトップから現場の社員まで、あらゆる人が応援に駆けつけて凄い熱気となっていました。また、いくつかのコミュニティでは自社内にこだわらず社外の人たちを頼るケースがありました。自主的な活動ならではのものとして、越境的な仲間の作り方も非常に有効ですね。
理想的にはコミュニティとは、各メンバーができる限りの貢献を持って相互に支えていくものです。そういう意味では、代表者でない人達の参加(誰もがリーダーシップを持つ)が何よりも重要です。今回ファイナリストとして勝ち残った4つのコミュニティにはいずれも多くの支援者や主体的な参加者がいました。これこそが何よりの成果なのではないかと思います。