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大阪はライトパック、東京はフルパック

先日、気になっていた家の近くの美容院に、初めて行った。
去年の秋に表参道から移転してきたというその店は、白と黒が基調のおしゃれな内装と、涼しく静かな空間で、とても居心地がよく、リラックスできた。その日の美容師さんとの会話がとても面白かったので、記しておこうと思う。


大阪に行ったことがない

担当してくれた美容師さんは、私と同い年の方だった。(30歳で店長とのこと。すごい!)自分の同級生に髪を切ってもらうと考えるとなんだか気恥ずかしいなと思いつつ、仕事や趣味の話をしている中で、私が関西出身であること、今年の4月から東京に住んでいることを伝えた。
すると彼はこんなことを言った。
「今まで僕、大阪に行ったことがないんですよ。」
「え、一度も?修学旅行とかでも?」
「京都はあるけど、大阪はないんです。だからUSJも行ったことなくて…。」
「どうして?大阪嫌いですか?笑」
「嫌いじゃないよ!でも、今後、自分が東京を離れて、名古屋とか福岡とか、他の地方に住むイメージは何となくつくけど、大阪で暮らすイメージだけはつかないんです。僕からしたら、東京と大阪はほぼ同じなんです。仕事や暮らしの拠点にするなら、東京か大阪か。僕は生まれも育ちも東京だから、もう大阪に住むことはないと思うし、遊びに行きたいともあまり思わなくて。」

なるほど、言っていることは分かる。でも…

似ているけど、違う

「確かに大阪と東京は同じ『都市』なので、雰囲気は似ています。けど…全然違うと思います。」
「本当に?どの辺が?」
「やっぱり東京の方が人やモノが多いから、情報量も圧倒的だし、選択肢も多いです。大阪は人も店もそこそこあるけど、地方感が残っている気がします。例えるならそう…東京が都市としての機能を全部つめこんだフルパッケージだとすれば、大阪はその中から必要なものだけをピックアップしたライトパックみたいな感じです。」

大阪はライトパック、東京はフルパック

東京には全てがある、と思う。人、モノ、働く場所、娯楽…街中がたくさんの情報と選択肢で溢れかえっている。駅は広くて大きいが整備されていて、旅行者でも分かるよう案内表示に工夫が凝らされている。何駅か電車に乗っただけで、全く違う場所に来たような感覚になるほど、街ごとの色も強い。日本の首都としての一切の機能を持ち、不便ない暮らしを送れるようにするだけでなく、より便利に、新しく、前に進んでいこうという姿勢を街全体から感じることができる。
一方、大阪は東京ほど人も多くないし店も少ないが、不便さを感じさせないぐらいにはある。観光地やテーマパークもあって、大きな駅には百貨店も隣接しているから旅行や買い物も楽しめるだろう。
そして、大阪の地方感を作っているのは人だと思う。人情の街と言われるだけあり、おせっかいで温かい人が多い。(飴を持ち歩くおばちゃんは本当に存在しているのだ…。)
東京を、人が住む街として必要かつ、あると便利な要素を全て持つ街とするなら、その中からよさげなものを組み合わせて、さらに地方感というオプションをつけたのが大阪、というイメージの話をしたのだが、美容師の彼は大阪に少し興味を持ってくれたようだった。

終わりに

東京にきて5か月が経つが、いまだ自分が街になじめていないような感覚がある。でも今回、彼との会話を通して、自分の中にあった違和感を言語化することができ、私は東京の先進的な空気に気圧されてしまっているのかもしれないと思った。今はまだ大阪が恋しいが、いつか東京の空気が自分にとって当たり前となり、自分もその中に溶け込んでいくかもしれない。その時、私は東京にどのような評価をするのか、少し楽しみではある。


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