他人が育てたウイングをウイングバックで使い「超攻撃的」と讃えられる森保監督。他人の褌で相撲を取るな
(写真:岸本勉/PICSPORT)
森保監督が代表監督に就任したのは2018年7月なので、以来6年3ヶ月が経過したことになる。残された期間は2年近くもある。サッカーには様々な考え方がある中でトータル8年はあまりにも長い。
欧州組は増えるばかり。選手のレベルは右肩上がりを示すが、国内の盛り上がりはそれに比例しているとは言い難い。外国に比べ、論点、論争、議論がないことが大きい。前回のW杯最終予選のスタートで躓いたり、今年のアジアカップでベスト8に沈んだり、この6年余りの間、森保監督にとってピンチはいくつかあった。森保サッカーの是非を論じるタイミングはあったはずだが、森保監督は志向するサッカーをハッキリと口にしない。反感を買いにくいことも輪を掛ける。言質を取られにくい曖昧な説明に終始することで、窮地を乗りきってきた。
2018年7月に行われた就任会見で口にした台詞「臨機応変」に、日本サッカー界はいまでも籠絡されている格好だ。
その傍らで、布陣はいまやすっかり3-4-2-1に回帰した。森保監督は代表監督に就任すると、サンフレッチェ広島時代に愛用した5バックになりやすい3バックを、ほどなく封印した。4-2-3-1、4-3-3へとシフトした。守備的サッカーを代表する布陣から攻撃的サッカーを代表する布陣に変化した。ところがカタールW杯本番では、何の前触れもなく3-4-2-1に回帰する。典型的な守備的サッカーでベスト16に進出。向こう4年間の続投を勝ち取った。
続投直後、森保監督は再び、4年前同様一般的な4バックで臨んでいたが、ほどなくすると3-4-2-1の影が忍び寄る。試合終盤、守備固めの道具に用い始めたと思いきや、最近では頭から臆面もなく使用。広島時代に戻ったかのように定番化させている。
何の説明もなく攻撃的サッカーを辞め、何の説明もないまま守備的サッカーに回帰した。議論が沸きにくい理由だ。それどころか、世の中にはもっと従順な人がいる。前で籠絡という言葉を用いた理由だ。「超攻撃的3バック」。4バック時におけるサイドバックではないウイングを、ウイングバックに配した布陣を、一部のメディアは躊躇うことなくそう呼んだ。
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