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三笘薫。3試合連続ゴールと縦に抜けなくなったウイングプレーとの関係

割引あり

(写真:岸本勉/PICSPORT)

 カズこと三浦知良がブラジルから帰国し、当時の読売クラブに加わったのは1990年イタリアW杯の直後だった。迎えた最初のシーズン。カズは日本リーグ、JSLカップ、天皇杯に計21試合出場。成績は4得点7アシストだった。世間の反応は冷たかった。鳴り物入りで入団した背景も手伝い、FWにもかかわらず得点が少ない現実を厳しく指摘した。


 ブラジル時代カズは主に左ウイングとしてプレー。高い評価を得ていた。イタリアのクラブからも誘いがあったという。だが、日本代表としてW杯に出場したいとの希望を持っていたカズは、Jリーグ開幕を目前に控えた日本出プレーする選択をした。


 だが、当時の日本にウイングの文化はなかった。読売クラブは特にその傾向が強かった。ブラジルサッカーを志向していたにもかかわらず、だ。サイドに開いて構えるウインガーにパスは簡単に回ってこなかった。プレー機会の少なさにカズは苛立つことになった。


 そこで一念発起したカズは、ウインガーからストライカーへの転身を図った。厳しいマークに堪えられるようにと、ジムに通い身体を鍛えた。ヒラヒラと舞うような軽量級から、筋肉質の中量級へと身体を改造。すると得点は急増した。Jリーグが開幕するや、毎シーズン得点王争いに絡み、1996年シーズンには23ゴールをマークし、タイトルを獲得した。4得点7アシストだった帰国当初とは、別人のようなプレースタイルになった。


 ウインガーはアシストだけでは物足りない。ウイングでありながらストライカー的な動きができる選手こそが一流だ。ゴール前で臭覚を発揮するゴールゲッターは評価されるが、ウイング専門の選手は評価されにくい。そうした風潮は世界的なものだ。しかしメッシもクリスティアーノ・ロナウドも元々はウインガーだ。ストライカー出身ではない。言ってみればカズ的だ。


 ヴィニシウス・ジュニオール、モハメド・サラーという現在のバロンドーロ級選手も、ウインガーでありながら決定力にも富む幅の広さがある。キリアン・エムバペも中央より左サイドに適性がある。ヴィニシウスがいなければ左のウインガーを普通にこなしているに違いない。

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