妻のやっていることの偉大さに気づく

妻はよく人から頼み事をされる。とにかく人を否定する事がないので、親身になってくれそうな気がするのであろう。何を隠そうぼく自身もそんな彼女の母性溢れる優しさに惹かれたもののうちの一人であった。

もちろん妻は神様ではない。彼女にも「やりたくない事」や「葛藤」などはある。しかしながら、一度引き受けた頼み事には、様々な思いを抱えながらも、相手のために全身全霊をかけて(多少大袈裟な表現かもしれないが)それに臨む。愛犬を「羊毛フェルト」で再現して欲しいなどと言うご依頼等にも、文字通り葛藤しながらも素晴らしい「作品」を通して答えている。

「涙が出るほど嬉しかったです!」

これは、先述の愛犬の「羊毛フェルト」のご依頼主から、納品後にいただいた言葉である。それを聞いた時ぼくとしては、「よかったなぁ」と思いつつも、「まぁ、そりゃ嬉しいよね」とどこか冷静に状況を静観していた。ご依頼主の、完成したその作品への「想い入れ」とか、「喜びの深さ」なんてものに関しては、全く気に求めていなかった。

それがこんな形でその喜びを実感できる日が来るとは・・・

YouTubeのブランディングのために、ぼくがほぼゼロの画力を駆使して描き上げた、YouTubeチャンネルのイメージキャラクター「■■坊」(現状、妻の許可が取れていないので伏字である)。今後のSNSイメージ戦略の一環として、その「■■坊」が呟くTwitterを開設することにした。そこでの使用を想定して、「■■坊」の羊毛フェルトの制作を妻にお願いすることにした。

「想像通りになるかわからないよ??」

妻はその様に言いつつも、やってくれることになった。「■■坊」はハリネズミのキャラクターなので、ポイントは背中のトゲ(?)である。元々羊毛フェルトはフワフワしているので、この様な鋭角なものの表現には向かないのだ。方法論はある様だが、今までやった事がなく、妻としては未知への挑戦で、今回もかなりの苦労を要した様であった。そして苦心の末、完成に至ったのだ。

「スゴイ・・・」

それしか言葉が出てこなかった。普段僕は、喜びの感情に関しては、実際よりも数割増しで表現する様にしている。喜びの感情が、次の幸せを呼び込むことを知っているからだ。何もなくたって喜ぶ様にしている。そんな僕が、(嬉しいはずなのに)今まで感じたことにないくらいの感動と共に茫然と「スゴイ」の一言しか出てこなくなってしまったのだ。

そこには相手を想いやる妻の人柄が滲み出ていた。

自分の「思入れのあるもの」を、「形」にしてもらうことはこんなにも嬉しいものなのか・・・。妻のやっていることはもはや単なる「技術」ではない。そこには「想い」が籠っている。そしてそれを受け取ったものの心の中には、何事にも変えがたい感動が潜んでいたのだ。この様な機会がなければ一生気づけなかったかもしれない。

この様な感情に誘ってくれた妻に心から感謝したい。ありがとう。

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