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おもてなしの要素を知る

 

 日本の「おもてなし」には3つの要素があります。おもてなしをするときには、しつらえ、ふるまい、よそおい。この3つを意識してみましょう。

 ・「しつらえ」、おもてなしの場をくつろいで頂けるよう、季節感を出し、主人の美意識を表現し整えます。また目的に相応しい場所、道具、装置をそろえます。茶席であれば、

掛け軸、床の間の花、茶碗など一つ一つに迎える側のこだわりが示されます。

・「ふるまい」、この日、あなただけをもてなすという気持ちを動作に表します。

・「よそおい」、もてなす人のよそおいにも清潔感と季節感、そして目的にあった衣服を

選んで、歓迎を示します。もてなされる側もその意図を汲んで、装います。

この3つが調和して初めてお客様をお迎えし、もてなしの場が整います。その上で、さらに重要なことは、もてなす側ともてなされる側が同じ共通認識にたったルールを守ることです。

例えば、私は、お寿司屋さんや少し高級な和食の店へ行く時、緊張します。

というのも、お店に入ると「いらっしゃいませ」という大きな声と同時にちらりとカウンターから視線が飛んで値踏みされた気がします。

 カウンターに腰をかけると、「何にしましょう」と聞かれるのですが、何から頼んだらいいのかしら、順番があるはずだ、慣れていないと思われるのは嫌だなとドキドキしてしまいます。そして、香水は付けていなかったかしら、とソワソワします。

ようやくお寿司が来ると、お箸を使っていいのか、そのまま手で頂いていいのか迷います。お茶のお代わりが欲しい時に、「大将」と呼びかけるのか「板さん」と声かけていいのか、呼び方が分かりません。お茶も「あがり」なのか「お茶」なのか迷います。

 お勘定は、どう伝えるのか・・・などなど、常連でないと分からないルールがあって、そのルールに当然、客の私が知っていることを前提として、もてなす側のお寿司屋さんも振舞います。

お茶席と同じ、招かれた側のルールではなく、招いた側のルールに従うのが日本の「おもてなし」です。この緊張感とルールの共有が、特別な選ばれた場にいるという優越感をくすぐり、高揚感をあおります。ここから上質な空間が生まれます。

だからこそ、ルールを知らない人が他のお客様の邪魔をしないよう「一見さんお断り」という約束事が生まれたのではないでしょうか。

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