「おもてなし」のルーツ
■「おもてなし」のルーツ
本当によく使われる「おもてなし」という言葉ですが、「おもてなし」とは何なのでしょうか。まずは、その意味ルーツを知っておきませんか。
「おもてなし」の語源を調べてみると「もて成す」からきているようです。その意味は、①ご馳走・ふるまい ②(人に対する)取り扱い・待遇 ③取り繕い、取り計らい とどの辞書にもたいてい3種類の意味が説明されています。諸説ありますが、恐らく、この「もて成す」に丁寧語の「お」を付けて、相手に対する、配慮全般を示す言葉といなったのでしょう。
これを際立たせたのが、茶道でしょう。そもそも茶道は、鎌倉時代に臨済宗の僧、栄西が中国から持ち帰った喫茶の文化が元になっているようです。 禅の言葉で「喫茶去」は貴賎を問わずとも真心を持って接することを示すそうです。階級に関係なく寺院を訪れた人には、健康長寿の秘薬だったお茶を振る舞う、この習慣が茶道のルーツであり、「おもてなし」は、まさにここにルーツがあるようです。
■利休七則
茶の湯は15世紀に織田信長と豊臣秀吉に仕えた千利休によって大成しました。その千利休が茶の湯の心得を聞かれて答えたとされるのが、「利休七則」です。
一、茶は服のよきように点て
一、炭は湯の沸くように置き
一、花は野にあるように
一、夏は涼しく冬暖かに
一、刻限は早めに
一、降らずとも傘の用意
一、相客に心せよ
これらは、お客様を迎えるためには当然行われると思われることばかりですが、これらが出来る人であれば「私は弟子になりましょう」と利休は答えたそうです。
それくらい、当たり前のことを当たり前に行うのは簡単ではありません。とりたてて特別なことではなく、あるがままに客がくつろげる用意をする、最後の「相客に心せよ」これは茶席で一緒になった人へ心配りをしなさいということですが、これらが利休の良しとした茶会であり、おもてなしの基本です。
■一期一会
そもそも茶の湯は、男性のたしなみとして戦国時代に盛んになりました。日々、敵味方が分かれて戦う時代、明日の命も知れず、また今日、同じ茶席にいた相手が、明日は敵となることも稀ではありませんでした。また同じ主客が一緒に居合わせる会があったとしても、季節、場所、準備した花、人々の心持ちなど、何一つ同じものであることはありません。
今日の出会いはもう2度と繰り返されないかもしれない、今日限りのものかも知れない。だからこそ、主客は互いに誠心誠意を尽くして交わらなければならない、これが「一期一会」です。
■「おもてなし」と「ホスピタリティ」の違い
英語のホスピタリティは厚遇、歓待、心のこもったサービスと訳され、日本の「おもてなし」と同様の意味に使われています。ホスピタル(病院)やホスピスと同様、ラテン語のHospicsが語源で、客人の保護を表し、無償で相手に尽くす気持ちが含まれています。
これに対し、日本の「おもてなし」は双方向であるところが特徴的です。相手がどうしたら喜んでくれるのか、何を望んでいるのか、徹底的に相手に思いを寄せて準備するのはホスピタリティと同じですが、受ける方も相手が自分を思って用意してくれたその心配りを汲み取って振舞うことで、初めて「おもてなし」の場が成立します。
もてなす側だけではなく、もてなされる側にも思いやりが求められるのです。