冬になると何もない
何もない。無くは無いんだけどコース料理作るには圧倒的に何もない。本当にない。わりと9年間困っている事である。ジビエも良し悪しがあり定期的に仕入れられない。まず地元に処理場もなければ職業ハンターも居ない。野菜は美味しいが…その分淡路島は良い。肉ある魚ある野菜ある。何度羨ましいと思った事か。僕も冬の保存食に幾度となく挑戦した。生ハムやクラテッロなど、全部ダメだった。ここはローズマリーも枯れる場所。特にうちの店は冬になると1ミリも日が当たらない。そしてめちゃくちゃ寒い。
その分淡路島はイイ。冬でもちゃんと日が当たり適度な潮風が当たる。なんかちょっと暖かかったりする。淡路島で将来開業しようとする人の話を聞いたら大抵みんな淡路島の食材を使う!地元の食材を使わないなんて選択肢は無い!なんて息巻いてる。イイよな。塩も牛乳もある。なんかちょっと腹が立つ。好きにしろ。地元に著名な陶芸家さんも居るんだから作ってもらえ。なんなら自分で焼いたらいい。その既に流行りのレースに参加する気はさらさらない。
ただここには良い季節もある。その時期は誰にもマケナイゾなんて思ってたりする。レストランを経営していて常々思うのは波があってはいけないという事。それには未だに苦労する。食材頼みの調理に限界を感じる時が必ず来る。そこが岐路な気がする。自分がどうしたいのか常に考えてる。大袈裟じゃなくほんとに。肉も魚も無い。野菜だって満足に種類が毎日あるわけじゃない。でも小旅行してくるお客様にその土地の料理を提供したい思いもある。あなたならどうする?って聞ける人も限られてる。僕はこれは同じ境遇の方からしか学べないと思ってる。両親が仲良くて幸せな子供に片親の子の悩みなんか分かんないのと同じで少なくとも後者は前者に聞いても満たされない。じゃぁなんでこんな所でレストランをしているのか?なんて尋ねられたらキレる。割とこんな状況も楽しんでるからかもしれない。別に卑屈じゃ無い。尊敬すべき料理人の背中を見るたびに追いかけてはダメだと思うようになった。自分は自分である。その人も羨むような料理を作れてナンボである。考え方も変化するし変化させなければならない。変わった自分を見たいという欲求がある。まだまだ修行が足りません。ほんとに。