![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/163930721/rectangle_large_type_2_dea12c4857ded766674c7e01b357d37c.jpg?width=1200)
突然、目の前に座ったおじいにパンを10個以上もらった話(栗も)
インターンで訪れた田舎の地域に滞在中、私は家では勉強に集中できないタイプなので、その地域に唯一あるフリースペースみたいなところで課題をすることにした。
フリースペースといってもできて一年も立たない綺麗なところだ。田舎なのでスペースは広いが人は滅多に来ない。ほぼ貸切状態なのだ。
そして、作られたカフェミュージックではなく、本物の鳥のさえずりが聞こえる。テラス部分もあるので日光を浴びながら健康的に課題を取り組んでいた。
11時ごろ、突然目の前に「ここいいか?」と、お爺さんが座ってきた。
私以外に人はおらず、ほかに40席以上あるくらい広々した空間だったので、なぜわざわざここに座る必要ある?と思ったが、旅行者なのはこちらのほうなので、なんとも言えず、「いいですよ」とやる気のない声で返答した。
するとお爺さんは大きな紙袋を豪快に破いて開けて、「パンを買ってきたんじゃ。あんたも食べな」と言ってきた。
もともとどうするつもりだったの、、?という、老人が1人で食べるには一週間くらい持ちそうなほど大量のパン。
私もついついテンションが上がって、遠慮なく、わしゃわしゃパンを選定させてもらった。
これから誰かにさらにお裾分けするとしても同じ種類が全部2.3個あったので遠慮なく選べた。
お爺さんは真っ先にジャムパンを取って食べていたが、「若いのはチョコなんかがいいのでは?」といわれてチョココルネを勧められた。
だけどわたしはもう少し渋めのキャピキャピしてないパンがいいなぁと思って、「いや〜」と首を傾げ、再び、わしゃわしゃパンを選び、それなら「クリームパンはどうか?」とおじいさんに言われたので、クリームパンにした。
ここのスペースはコーヒーカプセルを買って、セルフサービスでコーヒーを淹れるスタイルなのだがお爺さんはそれができないので、施設のおばさんがコーヒーを入れて持ってきてくれた。
「おまえさんも持っていけ」とお爺さんはおばさんにいって、
そのおばさんは遠慮なくパンをわしゃわしゃして、即座にポップなドーナツと、あんぱんを選んで戻って行った。
お爺さんはものすごい勢いでジャムパンを食べ終わり、即座にあんぱんを食べていた。あんぱんのあんが白あんであることがわかり、わたしは前のめりになってしまった。
それをみたお爺さんが、「このパン、おいしいから次おまえさんこれ食べた方がいい」と言ってきたので、「わたしもそのパンすごくたべたいです!」と今あるクリームパンを途中下車してでも食べたかったので、お爺さんと2人で探したけど、そういえばあんぱんはおばさんが持って行ってしまったのでもうない。
かなり悲しかった。あんぱんがなくてかなり落ち込んでしまった私をみて、おじいさんは、「こっちもうまいぞ」と、ジャムパンをくれた。
そしてお爺さんはわたしがまだクリームパンを食べ終わってないのに3個目のドーナツに突入していて、結局私がクリームパンを食べ終わるまでにお爺さんはパンを5個も食べた。
パンを食べながらお爺さんに色々聞いてみた。町のこととかお爺さん自身のこと。
和食の料理人をしていたと言ったので、「特に得意な料理はなんだったのですか?」というと「切ったり煮たり焼いたり、、、」といろんな技法の話をされて結局、料理名は教えてもらえなかったし、その後の具体的なエピソードもなにも聞けなかった。
町のいいところや美味しい食べ物のことを聞いても「なにもない」の一点張りだった。
お爺さんは85歳で、40年前に親の介護をきっかけに里帰りしたらしい。親が亡くなってからはずっと1人で今日も人と話したのが1ヶ月ぶりだと涙目で喜んでくれた。
1ヶ月か、、、、とその数字の大きさに驚いて固まってしまった。
そして、わたしは午後から予定があったのでたった30分くらいの会話で、しかもそのほとんどはのんびりパンを食べる無言の時間もあったのに、それでも涙目になるくらいうれしかったんだ。と思うともっと丁寧に話せばよかったな〜と後悔したけど、誰かの役に立てたことがうれしかった。不思議とわたしもすごく心が満たされていた。(そもそも、パンをタダで何個ももらって雑な会話をしただけなのに、、!)
帰りにお爺さんは、たくさん地元の栗をお裾分けしてくれた。1000円でパンパンに入っていた栗の8割もわたしにくれた。お裾分けのレベルじゃない。大量すぎる。
そして残ったパンも全部くれた。
こんなに食べきれないです、、と言ったが、どうしても持って帰れ!というので持って帰らせてもらい、インターンのメンバーにあげた。
残ったパンは、カレーパン2つに、ドーナツ2つ、チョココロネ1つ。(結局わたしはクリームパンとジャムパン、チョココロネを食べた。最後のパン選びのときに結局若いものはチョコが好きなんだろの圧に負けてチョココロネを選んだ)
お爺さんも、わたしも最初から甘いものを選んで、次まで甘いものを選んでしまったため、完全にカレーパンを食べるタイミングを逃しまくっていた結果だ。
ちなみにチョココルネはたまたま遊びにきていた幼稚園児に一つあげた。最初お母さんは遠慮していたが、お爺さんがどうしてもパンをあげたいからあんたが直接手に渡してきて!と頼まれたのでわたしはお母さんに、「わたしもたべてるので安全です」という失礼すぎる文言と共にパンを授けた。
またおじいさんとお話がしたくて(というより、本音はまたパンをもらいたいだけ)「午前中はここで勉強するようにします。」と宣言して帰った。
おじいさんはずっと手を合わせて、私のことを拝むように感謝してくれた。
テラス席に座っていたので、自転車で帰る時何度も手を振ってくれた。
結局私は、次の日は行けたものの、それ以降はインターンが忙しくて現場から出ることができなくなってしまい、そのフリースペースに行けなかった。
その人はもちろんスマホももってないし、電話もしてない。
またいつか会えたらいいな。(パンも欲しい)
いいなと思ったら応援しよう!
![ぼんのう](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/114543066/profile_a88002f9ffd708dce8aa36036d343ac8.png?width=600&crop=1:1,smart)