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賄いは残飯ではなく、美味しいものをください
賄いが包み焼きハンバーグで泣きそうになった。
賄いがないバイトを3ヶ月続けて、私がモチベ高く働くにはやっぱり賄いが必要なんだと気づいたので、賄いがあるバイトを始めた。
久々の賄い、ここの職場では初めての賄いということで初日は覚えることたくさんあったにも関わらず正直賄いのことしか考えられず、ホール業務なのに、キッチンをいちいち覗いて賄いチェックしていた。そのため、業務が色々遅くなってしまい怒られたりもしたがそんな時でも賄いが頭から離れなかった。
賄いといえば、その店で出しているものか、たくさん仕入れて余っているもの、作りやすいもの、原価が安いもの・・・と言った感じになることは今までのバイト経験でなんとなくわかっていた。
なので、ここの店での賄い予測は、水炊き屋なので鶏系の何かでそれにご飯がつく感じだろうと考えていた。
しかし、私の目に映ったのは、しっかり黒の線で焼き目がついた茶色の大きいハンバーグ。オーブンから取り出されている!!!!
小躍りしそうになった。
大きい!
ハンバーグ!
焼き目!
オーブン!
うれしいポイントが重なりすぎている。
これにケチャップソースみたいなのをかけて、ご飯と共に食べるのが今日の賄いなんだな。と思いワクワクしながら、ハンバーグを見てからは、ハンバーグで脳みそいっぱいで業務をおこなった。
終業後、私の目の前には、オレンジに染まったクッキングシートで包まれたハンバーグと色付きのおにぎり。そして鮮やかで量が多い浅漬け。
賄いを渡されたときはそのずっしりとした重さと、あたたかさに涙が出そうになった。
そして、一息置いたら、踊り出す寸前だった。もはや足はステップ踏んでいた。
あれだけで既に美味しそうだったのに、包んだの!??!しかもソースもたっぷり!デミグラス!
しかもハンバーグの下に野菜まで敷いてあった。
ハンバーグは既製品の肉か肉じゃないかわからないような安いやつではなくて、しっかり手作りなのがわかった。ミンチ肉の状態が想像できたくらい手作りが伝わるハンバーグだった。玉ねぎもしっかり大きめ飴色だった。
これだけハンバーグ欲が高まった状態で、なおかつ大食いの私がお腹いっぱい!と食べ終わる前に思うくらい大きな大きなハンバーグだった。
ソースもたっぷりかかっていたため、白米でも十分味わえるのに、さらに嬉しいのはおにぎり。明太子と胡麻が混ざっていた。しかも3個。しかも、ラップに包むだけじゃなくて、アルミホイルに包まれていた。保温すごい。
お店では使えないような見た目の野菜とかでいいのに、そもそも、賄いに彩りなんて必要ないのだから野菜類はなくてもいいのに、茶碗一杯分の浅漬け。キャベツときゅうり。さっぱりして濃厚なデミグラスと相性抜群だった。
包まれていたクッキングシートについたソースまで舐めて、ラップに胡麻や明太子の1粒たりとも残さず吸い取って、浅漬けの汁まで堪能した。
食べてからもハンバーグで頭がいっぱいだった。包まれている姿のハンバーグ。
感謝の気持ちでいっぱいで、次の出勤は20分前に行き、張り切りまくって仕事をした。そしてこの日の賄いも、嬉しくて、鳥の唐揚げと、もも照り焼きのセット。ちゃんと容器に入ったマヨネーズと厚みのあるレモン、プチトマト、千切りキャベツが添えられていた。おにぎりも味付きで、今回は大葉も添えてあった。そしてまたあたたかかった。
私が食いしん坊だから、バイトにおいて賄いはやっぱり一番大事だ!と思ってしまうのもあるかもしれないが、賄いの重要さをあらためて実感した。
賄いも、お客さまに提供する時と同じように、「美味しい状態で美味しく食べてもらいたい!」という気持ちで提供。賄いだから、冷えてていいや、残り物でいいや、詰めればいいや、食べれるものであればなんでもいいや。ではない、心のこもった食べて作り手が感じられまくる賄いは本当に幸せ。
居酒屋を営む祖母は、昔から賄いが豪華すぎて、差し入れまでたくさんするので私はそれを見て、「時給あげてるんだから、そんなしなくていいじゃん」と毎回しつこく言っていた。
おかずが4品もあって、混ぜご飯もついている賄いにデザートまでつけた時は、デザートをこっそり奪ったくらいだ。(おばあちゃんごめん)
利益も大きくない小さくて単価の安い居酒屋において、賄いは一番無駄な出費と考えていた。
しかし、この賄いがあったからこそ、多くの従業員が長く毎日一生懸命働いてくれて、お店も常に潤っていたのだとやっと気づけた。
言葉にして感謝されるのももちろん嬉しいけれど、働いてくれている人への感謝を伝える時、賄いは一番伝わりやすい。
美味しい賄いを食べるたびに思いだす、2日でやめたバイト先。
冷え冷え、カピカピのただ色がついただけのほぼ具なし炊き込みご飯の小さいおにぎりをまかないとして出してくれたバイト先。
賄いあり!の文字を見て飛びついたのに。
大皿に30個小さいおにぎりが並べられてあって、それを自分の好きなタイミングでとって、さっと食べてね。というスタンスだった。レンジの棚の上に乱雑にドンと置かれたのを強く覚えている。
食べたかったが、誰も手に取らないので結局食べずに帰った。
こんなことで・・!?と思われるかもしれないが私はこれ以降バイトに行けなくなってしまった。
その後はバイト先に恵まれまくって幸せな賄いバイト生活を送っていた。
そんな豪華な賄いに慣れてくると、
「自分で自分の好きなタイミングで好きなものを食べたいから賄いはなくてもいいや。」というとんでもわがまま発想になり、賄いがないバイト先を選んで、結局、美味しい賄いが食べたいというところに行き着いた。
美味しい賄いをしっかり受け取る姿勢を持って、美味しい賄いがあることを当たり前と思わない!!感謝!!そして今日も賄いを楽しみにキッチンを頻繁に確認しながら働こうと思う。
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