カメラマンとしての誇り
ある夏の昼下がりのこと。
アミーゴ達が元気に記念撮影をするフォトスポットに、1組のご家族がやってきました。
お母さまに抱きかかえられているのは、まだ1歳にもなっていないくらいの、小さな男の子。
旦那様と3人で撮影にご参加いただけるということでしたので、私は撮影場所までご案内しました。
「3名様です!」という私の言葉に、カメラマンのアミーゴは「はーい!」と元気よく返事をしてくれました。
そのままアミーゴに促され撮影用ベンチに座られたご家族でしたが、なんと座ったとたんに男の子が泣き始めてしまいました。
それを見たアミーゴは、すかさずダッシュで男の子に近づきます。そして、あの手この手で、泣いている男の子の気を引こうと頑張ります。
「いないいないばあっ! ばあっ! ばあっ!」
「それーっ! こっちだよーっ! ばあっ!」
アミーゴは巧みなかけ声とともに、両手に顔を引っ込めたり出したりを繰り返します。
それが効果なしと見極めるや一転、次は不思議なポーズを激しく何度も繰り返しました。
「はいっ! ほらっ! ばあっ!」
その迫力に負けてか、気づけばお子様は泣き止んでいました。そしていつの間にか、笑顔になっていました。
お子様の笑顔を確認したアミーゴは、すかさずカメラの位置までダッシュで戻り「えーび ふーら いー!!」のかけ声で記念撮影。
見事、写真にお子様の笑顔を収めることに成功しました。
その後ご家族に仕上がった写真をご覧いただきましたが、お母さまも我が子の笑顔をご覧になって「えっ? うそ、笑ってる!」と驚きの表情。
ご家族にはとてもお喜びいただき、素敵な想い出をお持ち帰りいただけたと思います。
私はその後、ご家族の嬉しそうな様子をアミーゴに伝えました。
そしていままでずっと不思議に思っていたことを聞いてみました。
「アミーゴはなぜ、目線取りのパペットを使わないのですか?」
実は、撮影現場にはお子様を笑顔にしたり、気を引いて目線を取るためのパペットやおもちゃが用意されていることがあり、私の現場もそうでした。
ですがアミーゴは頑なにこのパペットを使おうとはしません。これまでも使っているところを見たことはなく、私はそれをずっと不思議に思っていたのです。
そんな私にアミーゴは答えてくれました。
「人を笑顔にする、その手柄をパペットに持っていかれるなんて悔しいじゃないですか」
私はその答えに、アミーゴのカメラマンとしての誇りを垣間見た気がしました。