思惟かねの一口ニュース解説【社会面/7月】 「アイスランドが週休3日社会実験」「外為法違反サーボモーター不正輸出」「中国BCマイニング規制」「任天堂コロプラ特許訴訟決着」
この記事は、私、思惟かねのニュース解説ツイートのアーカイブです。気になるニュースを5ツイート程度の一口サイズで深堀り解説します!
◆給与そのままの「週休3日」で生産性向上も アイスランドで試験導入
アイスランドでの「週休3日」社会実験の背景には、同国が欧州のOECD諸国の中でも労働集約的な、余暇の少ない国である現実があります(ちなみにチリ、メキシコと並んで日本の名前も挙がります)。
そこで労働組合の後押しにより、政府とレイキャビク市議会が協力した大規模社会実験が行われました。その実験とは、給料を下げることなく、労働を週35~36時間に短縮し、ワークライフバランスを改善できるか?またそれでも生産性を維持できるか?というもの。対象者は実に2500人!
数年に渡って行われたこの実験の結果、週休3日でも生産性を維持、あるいは高めることも可能という結果が得られました。
この背景には、時短労働の実現のために雇用者と労働者が協力し、仕事の無駄を省く努力があったとのこと。
また残業が増えて実労働時間が変わらないのでは?という懸念についても、比較的負荷の高い職場でも、労働時間が20時間短縮したのに対して残業は3時間の増加に留まったそうです。
もちろん、労働力が不足する職場は少なからずあり、その補填としておよそ37億円の政府支出が必要だったそうです。ただうち2/3は医療介護分野での支出で、これは社会保障費全体の数%に過ぎません。
無論、その効果としてのワークライフバランス改善については全面的に肯定的な結果だったとのこと。このように週休3日を目指した労働時間の短縮は可能であると結論されています。ただしそのためには職場はもちろん、社会全体での協力が不可欠です。
また週休二日制でも、日本は1965年頃の導入開始から、定着までおよそ30年近くを要していることから、今日明日にでもという話にはならないでしょう。
けれど、私たちが労働時間短縮という声を上げることがなければ、社会が前に進むことはありません。
いつかそういう時代が来ることを夢見つつ、より楽に、楽しく仕事ができるよう努力していきたいですね。
参考:ICELAND’S JOURNEY TO A SHORTER WORKING WEEK
◆中国に不正輸出未遂 精密機械会社を書類送検
日本では技術や製品の軍事転用を防ぐため、外為法による輸出規制があります。
これは「リスト規制」と「キャッチオール規制」の2段から成り、前者は懸念度の高い品目リスト(図)に該当するもの、後者はそれ以外のほぼ全ての工業製品を対象にした規制です。今回のサーボモータは後者に該当します。
リスト規制該当品は、少額あるいは基礎科学関連などの例外を除き、全て許可申請が必要です。
またキャッチオール規制品は安全度が高い対象国グループA(下記)を除き、個別の要件判断を行い、明らかに問題ないと判断できない限り、これも許可申請が必要になります。
参考に、経産省の資料に記載のキャッチオール規制に関する判断のフローチャートがこちらの図です。
こうした輸出規制は安全保障貿易管理(安貿)と呼ばれます。
例えばこのPanasonicのサーボモータでは、製品説明にリスト規制(輸出令別表第1の1-15項)に該当しない旨の判断が説明されており、またキャッチオール規制(輸出令別表第1の16)には該当することが書かれていますね。
今回のケースはリスト規制は対象外ながら、キャッチオール規制には該当し、輸出先の中国はグループCで個別確認が必要。
真っ当に考えれば許可申請必須の上、さらに経済産業大臣から輸出許可申請を求める通知を受けていた(インフォーム要件)にもかかわらず、無視して輸出を試みた悪質なケースです。
過去の例から見るに、刑事告発(おそらく懲役数年+執行猶予)と数百万円の罰金、輸出禁止の行政制裁は免れ得ないでしょう。
個人、少額であればあまり関係のない話ですが、海外輸出の機会があるお仕事をしている方は重々お気を付けて!
◆中国のビットコイン規制と「鉱山閉山」
中国政府は近年様々な理由からビットコインとマイニングの規制を強めています。
一つが海外への資金流出防止。富裕層による資産の海外移転が経済を不安定化させているという問題が中国の長年の悩みであるためです。
また他方で環境破壊の問題があります。ビットコイン採掘の本丸である四川では、水力発電の豊富な電力を背景にマイニングが行われますが、その四川が渇水期に入り安価な電力が不足すると、採掘業者は安価な石炭火力の電力が得られる内モンゴルや新疆に「渡り」を行うそうです。
再エネである水力を食いつぶし、環境負荷の高い石炭火力も使うのですから、環境への悪影響は避けられないわけです。
その外にも、2020年から中国は既に「デジタル人民元」の実証実験を始めており、これがビットコインとバッティングすることでデジタル通貨導入によるメリットが減少することも懸念されていると思われます。
ビットコインの価格が乱高下してきた一つの要因は、こうした背景の下での中国当局による取引規制やマイニング規制でした。
さらにその背後には、強硬な経済政策に対する不信や金融基盤の弱さ、環境問題など、中国が抱える様々な問題が反映されているのではないか…そんな風にも読み解けますね。
◆「白猫プロジェクト」の特許権侵害訴訟 任天堂とコロプラの和解成立
この訴訟は、コロプラの特許が任天堂の既存の特許を侵害しているとして始まったものでした。
当初、コロプラは任天堂の特許には進歩性・新規性がなく特許は無効と抗弁し徹底抗戦の構えでしたが、結局これは認められませんでした(2019年)。
これを受けて、コロプラは裁判のさなか、特許を回避した操作システムへの仕様変更をしており、訴訟戦略の転換を余儀なくされたという見方が濃厚でした。
しかしこれ以降も訴訟は続き、今年4月には訴訟の長期化を鑑みて任天堂は賠償請求額をほぼ倍に引き上げます。勝訴の公算が高くなった時点で請求額を引き上げるのは定石の手段で、これは任天堂が訴訟を有利に展開している証拠と言われてきました。
しかしこうした流れを踏まえると、今回報じられたとおりそこから半年足らずで一転和解、それも賠償も当初の請求額以下というのはやや腑に落ちない感があります。
もっとも当初徹底抗戦の構えだったコロプラが賠償に応じたので、結果が任天堂の勝利なのは間違いないでしょう。
こうした和解の詳細については公表がなされず、またその意図についても当然すぐに表に出るものではありません。
いずれ動きがあるでしょうから、続報を待ちたい所ですね。
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今回もお付き合いいただきありがとうございました。
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