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コロナ後遺症のメカニズム仮説の補足と検証
以前、下記記事を投稿しました。
上記の記事は唐突感があり、取っかかりにくいところも多いと思われるので、本記事では、解説や補足を試みたいと思います。
なぜ電解質異常に注目したか
まず、コロナ後遺症様症状(ワクチン接種後の長期副反応も含む)を呈する疾患は、ギッテルマン症候群をはじめとする致命的ではない電解質異常(代謝性アルカローシス)を引き起こす先天的な疾患が原因ではないかと考えました。
その考えに至った理由は下記2点です。
・ギッテルマン症候群とコロナ後遺症/POTSの症状が酷似(下図参照)
・カリウムと生理食塩水の補給で、実際に症状が改善(自分や妻の体験)
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メカニズム仮説の解説
上記の着想から、メカニズムの仮説を立てました。
下記メカニズムを既知の情報から、情報のソースも含め解説していきます。
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アルドステロンとは
アルドステロンは、副腎(腎臓の上にある小さな臓器)から分泌されるホルモンです。コロナ感染により上昇することが分かっています。
最近の知見では新型コロナウイルスはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合することにより、ACE2の活性を低下させ、その結果、増加したアンギオテンシンIIがアンギオテンシンII受容体と結合し、アルドステロンの上昇を引き起こすことがわかっています。
体内のアルドステロンは日内変動があり、夜から深夜にかけて上昇、朝6時にピークを迎えます。症状が酷い時、朝、起き上がれないのはこのためではないかと個人的に考えています。
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/137/3/137_3_120/_pdf/-char/ja
アルドステロン上昇によるカリウム排出
アルドステロンは腎臓に信号を送るホルモンであり、アルドステロンが上昇すると、カリウム排出が促されます。
アルドステロンは副腎でつくられ分泌されるホルモンで、ナトリウムをより多く保持し、カリウムをより多く排出するよう腎臓に信号を送ります。
実際にコロナ感染により低カリウム血症が頻発している報告があります。
中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。
代謝性アルカローシス
カリウムが欠乏すると代謝性アルカローシスが生じます。
代謝性アルカローシスとは、酸塩基平衡異常のひとつで、血液のpHがアルカリ性に傾く現象です。血中のカリウムが欠乏すると、それを補完するために細胞内からカリウムイオンが放出され、その結果細胞内に水素イオンがシフトします。血中のpHは水素イオン(H+)と重炭酸イオン(HCO3-)のバランスで決まるので、血中の水素イオンが減った分、相対的に重炭酸イオン(HCO3-)の割合が増え、アルカリ性に傾きます。
これが代謝性アルカローシスのメカニズムです。
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代謝性アルカローシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の増加で,二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の上昇を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは高値またはほぼ正常範囲内である。一般的な原因としては,遷延性の嘔吐,循環血液量減少,利尿薬の使用,低カリウム血症などがある。
仮説の検証
血液ガス分析
実際に代謝性アルカローシスになっているのか、私自身の血液検査で確認しました。血液ガス分析と呼ばれる、血液のpHや血中のイオン濃度を確認できる検査を受けました。町医者ではなく、そこそこ大きな病院でないと、この検査は受けられません。私の場合は近所の内分泌内科で大病院への紹介状を書いてもらい、紹介先の病院で検査を受けました。
その結果を下記に示します。
カリウム接種後5week後にも関わらず、重炭酸イオン(HCO3-)は正常範囲をオーバーしており、仮説通り軽微なアルカローシスは発生していることが確認できました。(医師は異常なしと言ってきましたが、目の前に苦しんでいる患者がいてなぜそんなことを言うのかは謎でしたが。。。)
医師は微妙でしたが、カリウム補給は間違っていないことを確信し、治療に専念できるようになりました。
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血中カリウムの基準値(下限値)は適切か?
上記の結果におけるひとつ大きなポイントは、血中カリウム濃度は正常範囲内(になってしまっている)ということです。つまり、現状の血中カリウム濃度の基準では代謝性アルカローシスであることの判別が適切にできないことが分かります。
血中カリウム濃度の基準値はコロナ禍前から変わっていない基準値であり、(町医者で不可能な)血液ガス分析に頼らずに代謝性アルカローシスを判別できるような値に見直すべきであると私は考えています。
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代謝性アルカローシスと思われる、私以外の事例
SNS上で私同様に代謝性アルカローシスが生じている方々は散見されます。
下記の方(コロナ後遺症思われる)も、私同様にカリウム値は正常範囲内ですが、HCO3-は32.2mEq/Lなので、私よりも重度の代謝性アルカローシスであると思われます。
うわー私と同じ傾向だ…
— おもち omochi (@omochixyzw) November 15, 2023
やっぱりそうなのかー#longcovid#コロナ後遺症#血ガス#血液ガス分析 https://t.co/VVHHYNbfwq
呼吸性アシドーシスと代謝性アルカローシスの共存は #longcovid で起こり得ると思います。
— おもち omochi (@omochixyzw) November 15, 2023
私も血液ガス分析で同じ結果が出ました。
I think coexistence of respiratory acidosis and metabolic alkalosis can occur in longcovid. I had the same results from my blood gas analysis. https://t.co/Lc7olJGoF1
血液ガス分析をもっと詳しく知りたい方は、下記の記事が分かりやすいです。
後遺症を長期化させうる根本疾患
再度下記を抜粋します
アルドステロンは副腎でつくられ分泌されるホルモンで、ナトリウムをより多く保持し、カリウムをより多く排出するよう腎臓に信号を送ります。
通常、ナトリウムは尿細管で再吸収されますが、先天的な異常があると再吸収が阻害されるケースがあります
尿細管での再吸収と分泌に関する図解#循環器 #血管 #尿細管 #ECG https://t.co/LfX0H1H5z6 pic.twitter.com/gEb0T5KB06
— ECG-Cafe (@ECG_Cafe) December 18, 2018
そうした先天性の疾患のひとつがギッテルマン症候群であり、カリウムだけでなくナトリウムやマグネシウムも慢性的に欠乏します。
ギッテルマン症候群の患者に特徴的なのは、塩分を欲することで、極端な場合は塩をなめたり、しょうゆをそのまま飲んだりする人もいる。疲れやすさ、夜間の頻尿、手足のしびれ、筋肉のけいれん、低身長などの症状もある。#ギッテルマンhttps://t.co/rh1o1FsYBy
— 時事メディカル (@jijimedical) January 11, 2022
俯瞰したメカニズムは下図が網羅的に説明されています。
【Gitelman症候群】ギッテルマン症候群はバーター症候群と同様に四肢麻痺や筋力低下、多飲・多尿などの症状を呈するが、低マグネシウム血症・低カルシウム血症をきたす点と成人発症が多い点で異なる。(病みえ8p.172) pic.twitter.com/pofqrIA65Z
— 病気がみえる (@byo_mie) August 19, 2023
根本疾患の検査
血液ガス分析の検査を受けた病院からさらに紹介していただき、某大学病院で根本疾患(ギッテルマン症候群)の検査をお願いしに行きました。
しかし・・・明確な根拠もなく断られてしまいました。
ギッテルマン症候群は「稀に起こる病気」とされていますが、実際には検査のハードルが理不尽に高く、正しい診断に至れていないケースがほとんどなのではと確信しました。妻はカリウム値が低い過去の検査結果があったので、なんとか遺伝子診断をさせてもらえましたが、私はダメでした。
妻の遺伝子検査の結果が出るまでに半年~1年かかるとのことなので、気長に待ちたいと思います。
遺伝子診断のお願いをしに某病院に行きましたが、明確な理由の説明なく断られました。極めつけは、「稀な病だから、夫婦揃って、は、ありえない」というトンデモなコメント。検査しなきゃ分からないだろそれは…?
— おもち omochi (@omochixyzw) November 20, 2023
どうやら循環論法が大好きな医師は少なくなさそうです。https://t.co/jLhOjOPSpa
軽度(=致命的ではない)ゆえに診断のハードルが高い事実を身をもって体験することになりました。
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一旦ここまで。
また追記していきたいと思います。