幻のAV「です。」シリーズ5作目 インタビューシーン

——こんにちは。

こんにちは。

——今日は遠いところからありがとうね。

いえ、全然。

——前乗り?

はい、そうです。

——昨日はどこ泊まったの?

アパです。

——アパね。じゃあ改めて、お名前聞いていいですか?

はい、破魂刀死者竈沙羅遮那(はこんがたなししゃかまどしゃらしゃな)です。

——前も聞いたけどほんとにそれでいいの?

全然いいですよ。本名ですし。

——本名なんだ。

これって「です。」シリーズの5本目の予定なんですよね?

——そうだよ。

じゃあタイトルが「破魂刀死者竈沙羅遮那(はこんがたなししゃかまどしゃらしゃな)です。」になるんですか?

——なっちゃうね。

そうですか。

——うん。

めちゃくちゃエロい体してますよね。

——それ俺が言うやつだから。

あ、そうですか。

——足とかめちゃくちゃエロい足してるよね。

やめてくださいよ。AVじゃないんですから。

——AVだよ。

あ、そうですか。

——なんでこういうビデオ出ようと思ったの?

金が欲しくて。

——あけすけだね。

どのぐらいもらえるんでしたっけ?

——カメラ回ってるところで言わないよ。

10万円です。

——言わないでよ。

果てしなウィーン闇のむ~こうウィーン

——なに?

ミスチルの桜井和寿がメカになったら、です。

——年齢聞いていい?

17です。

——嘘じゃん。

23です。

——セクシャリティは?

ゲイです。

——いつからゲイなの?

知りませんよ。

——なんでだよ。

バスケの試合でちんぽを2本同時に舐めると「ダブルフェラチオ」という反則をとられるらしいですよ。

——知らないよ。

男の人と初めてSEXしたのはいつ?

——それ俺が言うやつだから。

はい。

——男の人と初めてSEXしたのはいつ?

男の人とSEXしたことはないです。

——ないの?

ないですよ。

——ないのにAVに応募したの?

別にSEX経験者優遇とか書いてなかったですし。

——そんなの書いてあるとこ見たことある?

AV男優が全員SEX好きだと思います?

——え?そうなんじゃない?

偏見ですよ。卑しい、恥ずべき偏見です。葬儀屋がお葬式好きだと思いますか?

——でも葬儀屋はSEX好きじゃない?

それもそうですね。

——じゃあ今日が初体験なんだね。

処女性を貴ぶ男はキモイです。

——別にそういう意味じゃないけど。

じゃあどういう意味なんですか?説明してくださいよ。キモいな。臭いし。

——怖いよ。

すいません。

——どんな人がタイプなの?

エネゴリくん、みたいな人ですね。

——エネゴリくん?エネゴリくんってあのエネオスのCMの?

そのエネゴリくんです。本名はエネルギーゴリラ、です。

——エネゴリくんの本名とかあるんだ。

あります。だからエネゴリくんはかしこまった場では「初めまして。エネルギーゴリラです」って挨拶するんですよ。

——エネゴリくんの話そこまで興味ないよ。

それ言い出すときりがないですよ。

——なにが?

この後ろに貼ってあるポスターが今までの「です。」シリーズですか?

——そうだね。左から「ヒロシです。」「翔平です。」「武田です。」「佑介です。」だね。

へー。「ヒロシです。」ってエンタの神様世代には別のヒロシしか出てこないですよね。

——そんなことはないと思うけど。

じゃあ他にヒロシで有名な人います?

——野原ヒロシとか阿部寛とか。

阿部寛は確かにヒロシですね。すいません。

——阿部寛が一番ヒロシではないと思うけど。

なにを言ってるんですか?

——この中で好きなタイプの人とかいる?体型とか込みで。

え~誰でしょう。てら…おっと、佑介さんもいいですけど、王…おっと、翔平さんもいいですよね。武田…くんは別名とかあるんですか?

——ないと思うよ。

じゃあいいか。

——失礼だな。

すいません。許してください。

——実際はピー音入るからまぁいいよ。

整いました。放送禁止用語と掛けまして。

——なに?

あなた!死なないで!あたしを独りにしないで!嫌!嫌よ!いやぁぁぁ!!と解きます。

——その心は?

ピーーーーーーーーーーーーー、でしょう。

——1週間に何回オナニーするの?

王様のオナニー、御ナニー。

——感じるところはどこ?

日本の社会保障の手厚さは常日頃感じています。

——今日は2人に犯されちゃうけど、どうですか?

あれ?ちょっと待ってください。あそこにあるディルド、取ってもらえますか?

——これ?

え?これ俺のちんぽとまったく同じ形してますよ。え?なんで?ほんとにまったく同じ形。なんで?

——似たような形なだけじゃない?

いえ、まったく同じです。え?こわ。俺のちんぽの型をとって作ったってことですか?え?そんな記憶ないですよ。

——いや、これはいつからあるんだったかな。覚えてないな。

ていうかそもそもここどこですか?俺なんでここにいるんですか?

——え?だからAVの撮影で。

AVの撮影なんて俺応募してませんよ。それにさっきからそのドアの外にいる男は誰ですか?黒い。全身が黒くて口の中だけ真っ赤。どの赤よりも赤い赤が口の中に広がっています。なんで中に入ってこないんですか?

——落ち着いてください。

なんか臭いませんか?木が腐ったような、何かが朽ちた臭いがします。窓の外の月が、月が大きいです。ていうかなんですかあなたたち。全員、全員同じ顔してますよね。特徴のない顔が全員に張り付いてる。どうなってるんですか?

——今日は2人に犯されちゃうけど、どうですか?(今日は2人に犯されちゃうけど、どうですか?)(今日は2人に犯されちゃうけど、どうですか?)

ドアの外の黒い人間の足元から闇が、闇が広がってきて、ああ!やめてください!闇が!闇が!暗い!たすけて!!

映像はブツっと途切れ、数秒後、極めて写実的に描かれた老婆の顔の絵が画面いっぱいに映し出される。






俺はKO-VIDEOから送られてきたプレミアム特典Disc『幻の「です。」シリーズ5作目の蔵出し特典映像!!』を見ていたはずだが、どうやらKO-VIDEO側が間違えて別の映像を送ってきたようだ。俺はそう判断して、KO-VIDEOに「別のDVDが入ってました」というメモと共に特典Discを送り返すと、数日後、汚く殴り書きされた「合ってます」というメモと共にまた同じDVDが送られてきたのだった。


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