タイトル未定
秋の風が吹いたんだ
だけど、それっきり。
私の中の季節はとまった
確かに悪夢からは抜け出した
終電の車内で、駅前の花壇で、人目も憚らず号泣することもなくなったし、男の人と寸前になって酔った勢いですらごまかしきれずタクシーで逃げることもなくなった
あっという間に冬が来て、人肌の恋しさなんて感じる間もなく気づけば桜が咲いていた
世の中は緊急事態を繰り返し、おじいちゃんが死んだ
苦手な上司は異動したけど、プロジェクトは炎上
大学の先輩は転職し、元カレは結婚した
私は梅雨の始まりとともにまた意味のないセックスを繰り返すようになり、いつの間にか朝帰りの時間でも、うだるような暑さに襲われる季節になっていた
確実に世の中は動いていて、周囲の人はみな前に進んでいて、でもオリンピックは東京2020のままぬるっとはじまった
2021を迎えたあのカウントダウンは何だったんだろう
いっそのことみんなせーので2020やり直さない?
なんて冗談で言ってみるけど、やり直したところで私はこのときの動かしかたを知らない
季節の移ろいとともに生きていても、道端に咲く花と一緒に成長できるわけではないらしい
ちゃんと2021を生きている人からしたらまっぴらごめん、大変ご迷惑な話であろう。失敬失敬
私だってちゃんとそれなりに生きてきたつもりだった
自分の機嫌は自分でとれるようにならなきゃって心の底から思っていた
だから、ひとの言葉じゃなくて自分の言葉で話しなよって。
そう言われたことが悲しくて、悔しい
お前に私の何が分かんだよって思うけど、どっかの誰かの言葉を借りて自分に言い聞かせているだけなのも事実で
自分の本当の気持ちなんて永遠にわからないし、情熱を注いでやりたいことなんて一生見つからないまま死んでいく気がする
そしてふと、誰かを好きと思うあの感情すらもう永遠に生まれなかったらどうしようという恐怖に襲われる
私の自我とともに芽生え、恋愛脳と呼ばれてきた所以。
時に人生を彩り、時にめちゃくちゃにしてきたあの子にすら愛想をつかされてしまったのかと
そばにいないことに心細さを覚える
セックスしたら相手を好きになれる単純な脳みそが欲しい
でも私相手に勃起しといて偉そうに世の中を語る男ばかりでみんな嫌い
そしてそんな現実から目をそらして今が楽しければそれでいいじゃんて呟くダサい自分がもっと嫌い。楽しくないのに
けど、本当にダメになりそうな時にはちゃんと寄り添ってくれて、私以上に怒ってくれる人がいる。
そしてどれだけ病んでみてもおなかはすくし夜は眠くなって、結局憎らしいくらいに体は元気なままなことも知っている
だから私は今日もご飯を作ってもりもり食べてとりあえず明日を生きる
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