私を変えた一冊『青嵐の庭にすわる』
森下典子『青嵐の庭にすわる』
『日日是好日』シリーズの集大成とも言える本作は、同作の映画化が決まってから筆者自身が大森組の一員として映画制作に携わる姿を描いた一冊だ。
筆者が樹木希林、黒木華、多部未華子、監督、助監督、その他様々な俳優、スタッフと関わっていく中で、自分の今まで書いた本、そしてさまざまな背景をを見直していく場面がとても印象的だ。
しかし中でも私が一番心惹かれたのは、筆者が樹木希林に言われた一連のやりとりだ。
「えっ、あなた結婚してないの!?」
「それはいけないわ…一人で不自由はないの?」
「私はずーっと独身だから、自分が不自由なのかどうかがわからない」
むしろ「結婚して不自由はないんですか?」と逆の質問が頭に浮かぶのだけれど、その質問を樹木さんにするのは気が引ける。
このシーンだ。
本当にそうだよなあ…としみじみ思う。
「結婚していない」「子供がいない」ことに対して、なぜか世間はずかずか土足で入ってくる。
「寂しくないの?」「周りは心配しないの?」「何かできない理由があるの?」「主義主張があるの?」と質問攻めだ。
かたや、結婚している人に対しては「どうして結婚したんですか」とはほとんど聞かないだろう。
「結婚していて不自由はないですか?」
という質問も、してみたい!と思った。
「不自由はない」と即答できる人がこの世に何人いるだろうか。
「不自由で制限のある生活なのに、結婚することを選んだんですね!」と言って不思議そうな顔をしてみたい。
「そこに至るには、よほど強い思い、主義があったんでしょうね」と言ってみたい。
今まで結婚していない人がやられてきたことを、結婚している側にやってみたい笑
そんな意地悪じゃなくても、世間がそんなこともう気にしないようになればいいんだけどな。