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言葉にならない詩



空の青さを
目を閉じた人に伝えるように

波の音を
耳を塞いだ魚に語るように

光の踊りを
影に説明するように



月を指さす指は
月ではないけれど
月を知る心は
指の先に宿る



蝶の夢を見た荘子か
荘子の夢を見た蝶か
夢見る意識だけが
確かに在った



風は見えないけれど
木々の揺れる姿に
確かに宿り
花びらの舞いに
その本質を映す



水に描いた文字は
消えゆく運命でも
水そのものは
永遠に在り続ける



沈黙の中にこそ
全ての音が眠り
闇の深みにこそ
全ての光が宿る



概念の外には
概念では捉えられない
無限が広がり
理解の外には
理解を超えた
永遠が踊る



言葉で織りなす詩は
言葉にならないものを
指さす指であって
月ではない

けれど時に
その指先に宿る月の光が
心に触れることがある



存在とは
波の上に描かれた
円のように

完全でありながら
形を持たず
在りながら
在らず



この詩もまた
風に向かって
風を説明する
むなしい試み

それでも
風に吹かれた木々は
確かに踊り続ける

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