全社的経営課題「若手の早期退職・定着」~【解説】人的資本可視化指針(第17回)
「若手がやめてしまう」という声をよく聞きます。大手企業であっても、です。新入社員の3人に1人は3年以内に離職してしまうという調査もあります。
そして様々な研究があります。退職要因として、給与の低さ、仕事を通して感じるストレスの大きさ、残業や業務における精神的負荷、仕事のやりがい・意味、仕事の面白み・楽しさ、職場の希薄な人間関係、会社の将来性、自分の未来のキャリアなどなどがあげられることが多いものです。人によって要因は様々なので、共通要因を見つけることも難しくなりました。
辞めたくなる会社の特徴
会社に入る際に、定年まで働いて・・・・という時代ではないということ、安泰な会社などないことを皮膚感覚で若い人はわかっているのかもしれません。また、メンバーシップ型の企業にはいって過ごしていると専門性がつかず将来自分が生きていけるのか不安になるのは当然のことでしょう。
会社にはいっても、
・仕事にやりがいを感じられない
・人間関係がメンドクサイ
・上司がいけてない
・職場の考え方が昭和的、権威主義的なルールに縛られていてめんどくさい
・スキルが身につかず成長できない
と思ってしまうことが度々直面し、その度合いが強ければ、そうした選択になるのは普通のことでしょう。それぞれ人によって様々な違いはあるでしょうが、仕事のやりがい、職場の人間関係、将来のキャリアの複合的な要因で「やめる」という選択に至るのではないでしょうか。
CHRO、HRBP、人事がまずやらないといけない分析
就社ではなく就職と言う感覚の若者、長らく会社にいることも想定していない若者からしたら当たり前の感覚であり、当然の行為でしょう。そこを理解しないといけません。
退職者が続くと、「何やっているのだ?」と経営者から人事は言われるでしょうし、採用コスト・育成コストからすると自分たちとしても、「何かがおかしい?」と思ってしまいます。HROやHRBP、人事部門の立場にとって今回の課題は全社課題でもありますが、自部門のメインテーマでもあります。
まずは現状分析です。把握している退職理由や入社時のやりとり、バックグランドをもとに、特徴・傾向をつかみます。早期退職要因を職場要因、仕事要因、キャリア要因などグループ化するのも手です。様々なパターンやタイプがあるので、それを分けて分析をしてもいいです。
そこから仮説を設定します。仮説をもとに、再度深堀分析をかけます。分析を繰り返し、比較などもしてみましょう。仮説が検証できたら、いったんその仮説をもとに、もう一度現状を違って目で見てみえるでしょう。そうすると採用、配置、人材育成・研修などの問題点も浮き彫りになります。それが第一段階でしょう。コミュニケーション改善だ!1on1だ!と直ぐに、安直に対策を打つのはおすすめしません。
組織風土の改善、働き方改革も
第二段階は、経営とのすり合わせです。これは、経営戦略や将来的な業界内における見通しに不安である、組織風土が硬直的である、ルールや不文律についていけない、といった全社的共通課題が退職理由の決定打だった場合は特にです。
やめる人自身の理由、たとえば、当初より辞めるつもりだった、全く別の仕事につく、自分のキャリアを見直した、家族の問題などなどいった理由の場合は除きます。
比重の大きい退職理由要因を踏まえ、社内ルールや不文律は変えないといけないのではないか?そもそもなんでそうなっているのか?を見直していきましょう。
よい人材が来てもらわないと、結局競争力が落ちるというのが「人的資本」の考え方のベースになっていますから。多様な人材が交わり、個々人が楽しく仕事をして、役割を貫徹しつつ、創造性を発揮し、結果、画期的なサービスや商品が生まれる。その意味で、組織風土の改革改善、働き方改革を進めていく必要があるのならすべきでしょう。
ただし、「理想の人材像」「未来に成果を上げるコンピテンシー」が前提にないと、たんなる「いごごちのいい職場」になってはいけないのでそこは注意が必要です。それが業績や収益向上につながるものでないと意味がありませんから。
人に関わることですから、人の行動の背景にあるルールなどの改革改善もHROやHRBP、人事部門の役割です。「戦略人事」というのは会社経営にまで責任を持つことです。人的資本の「全社的経営課題」今後も考えていきます。
PS:TL人的資本ガイドブック もし欲しい方がいらしたらご連絡ください(企業の人事担当者に限ります)。