【人財育成論第10回】ISO30414って何ですの?
ISO30414が注目を浴びています。またISO?と言われそうですが、今、人事領域で注目のISOなのです。2018年12月に国際標準化機構(ISO)が発表した「人的資本」に関する情報開示のガイドラインのことです。
■ISO30414とは
まずはISOとは何かというと、スイスのジュネーブに本部がある International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、国際的に通用する規格のことです。製品そのものではなく、組織の品質活動や環境活動についての規格があり、規格に適合していれば認証されるということです。
具体的には、
①コンプライアンスと倫理、ビジネス規範
②採用・雇用・離職等労働力のコスト
③ダイバーシティ、労働力とリーダーシップ
④リーダーシップ、従業員の管理職への信頼
⑤組織文化 エンゲージメント
⑥健康安全、労務
⑦生産性、組織パフォーマンス
⑧採用・異動・離職などの人事プロセス
⑨能力
⑩後継者計画
⑪労働力
について、指標で測定することになります。
■ISO30414が必要になった理由
これはアメリカでの動き、Human Capitqal、つまり人的資本に関する情報開示をルール化した動きを受けてです。そもそも人材情報開示と業績に関係性があるんじゃね?という問題意識から様々な研究が行われ、情報開示度合と業績、特に株価には関係がある、つまり、「開示した会社ほど株価が上がっている」ということがわかったようです。それで人事情報を積極的に開示するようになり、アメリカ議会にロビーイングし、そうした動きがルール化されました。ちなみに筆者が「CSRリテラシー」をアムネスティ・インターナショナルCSRチームにて策定した時から、人事情報が見えないと企業の社会的責任が見えない!といった活動をしていました。労働CSR面では、CSRレポートにおいては、人事関連の事実とデータが当時は見えませんでした。
日本でも経済産業省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」を発表しました。人的資本の活用が明記されるに至りました。
人事情報の開示が本当に企業の業績や株価に影響するのか、様々な条件があるので「人事情報の開示→業績」というロジックには皆さん疑問を持つところでしょう。しかし、人事情報の開示ができるほどの対外的にオープンな企業は組織力も高いでしょうし、結果として業績向上に大きく寄与するというのは納得できるのではないでしょうか。
■日本経済再生のための「ISO30414」
人事情報が可視化されて、投資家や利害関係者、社会への説明責任が果たせることが求められる時代になったというのが近年の流れです。特に、人的資本、人財の重要性はビジネスにおいてますます高まっています。
特に、この日本社会で。
高度経済成長の後に、企業が世界的なサービスを開発できず、電気製品などは新興国に追いつかれ、どうにもいかなくなったというのが失われた30年の結果だったともいます。バブル崩壊などが理由と言われていますが、やはり、グローバル市場が求める、付加価値の高い製品・サービス・事業開発ができなかったことに経済停滞の原因があるでしょう。
「マネをする」ことで欧米に追い付いてきた、高度成長の方法・手法が通用しなくなった時に、どうするか。日本社会は答えを見いだせず、「失われた30年」を経て今に至ります。1人当たりGDPはOECDでも下位になってしまいました。結局、イノベーションが起こせなかったのです。大企業はなんとか生き残りましたが起業などはあまり進みませんでした。その理由はひとえに人材育成面での要因が大いにあると思っています。企業側の問題意識が日本の教育システムを大きく変えるには力を持ちませんでした。意思決定のスピードが遅く、グローバル競争で遅れていってしまいました。
もう世界は人材の「創造性」での競争に突入しています。デジタル技術、ロボットやAIが普及したら、グローバル競争において勝負するのはそこでしょう。集団発想で、合わせ技でのものづくりはある程度3Dプリンタでできてしまいます。日本的な「しっかり」「きっちり」「正確に」「丁寧に」という思想よりも大切な思想や発想が必要になるでしょう。それが「創造性」です。そして、そうした人材戦略をさせえるのが「戦略人事」と呼ばれる経営改革や実績を出すことを重視した方法です。人事評価を経営との貢献を明確にして、きちんと運用、機能させて、しっかり面談をして人財育成の場としていき、創造性をもった人材を育てていかないといけません。
■ISOの意味
ISOにかかわった経験からしますと「これは面倒だな~」とか、「やっていけないよね~」とか、製造現場のISOの負担を見ていると、いいイメージを持っていない人も多いでしょう。
しかし、人事情報を把握していくこと、可視化することで、人事の現状が可視化され、比較でき、立ち位置も問題点もわかるようになります。活用次第ではありますが、とても役に立つと思います。筆者は企業の各種指標の専門家ですが、データ分析結果がないという問題でコンサルティングの質をあげられなかったという苦い思い出があります。データ分析ができ、それを活用できれば様々な説得材料ができたのに、もっと改革を進められたのに、社員のモチベーションを刺激する施策を提案できたのに・・・という思いです。
現在、人事業界ではISO30414は「黒船」と言われています。黒船かどうかは別として「人材投資の時代」のマクアケと言っていいかもしれません。これからの連載で、詳細を解説していきます。
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