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医薬品『零売』規制の妥当性って?
日本総合研究所のレポート「医薬品『零売』規制の妥当性を問う」がちょっとした話題になりました。出典は以下です。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/viewpoint/pdf/15551.pdf
皆さんは「零売(れいばい)」をご存知でしょうか?
この制度は、処方箋なしで医療用医薬品を購入できる仕組みであり、特に医療機関への受診が難しい方々にとって大きなメリットがあります。しかし、現在この零売を規制しようという動きが進んでおり、大きな議論となっています。零売の現状、規制の背景、そして今後の展開についてお話ししようと思います。
厚生労働省は、「医療用医薬品は原則として処方箋が必要である」との方針を示しています。しかし、これは法律ではありません。厚労省の「通知」によるものです。しかも、法的な根拠は曖昧なままとなっています。現在、国会ではこの通知を法制化し、零売を明確に規制しようという動きが進められています。
一方で、これに対し一部の薬局が「通知による規制には法的根拠がない」として国を提訴しています。この問題は単なる規制の是非を超え、医療用医薬品の流通の在り方そのものを問うものとなっています。
医薬品分類の問題点
日本の医薬品は、「処方箋医薬品」と「医療用医薬品」の二重構造になっています。
処方箋医薬品 … 厳格な管理が必要な薬剤で、必ず医師の処方箋が必要。
医療用医薬品 … 法律上は処方箋が必須ではないが、厚労省の通知により原則として処方箋が必要とされている。
この「医療用医薬品」というカテゴリが曖昧な立ち位置となっており、約7,000品目がグレーゾーンの中に存在しています。この分類が零売の是非を巡る議論をさらに複雑にしています。
本来は医療用医薬品と処方箋医薬品という分類そのものがおかしいわけで、医薬品である以上医療用に決まっています。こういった制度上のおかしさを知っていただきたいです。
零売のメリット
利便性の向上:病院を受診せずとも必要な医薬品を購入できる。
医療費の削減:零売は保険適用外のため、公的医療費の負担軽減につながる。
市販薬よりも効果が高い:市販薬に比べ、零売で購入できる医薬品はより高い効果が期待できる。
零売の課題
安全性の担保:医師の診察を受けずに薬を購入することで、誤った服用のリスクが高まる。
薬剤師の負担増:患者の状態を適切に把握し、安全な服薬指導を行う責任が薬剤師に課される。
制度の曖昧さ:現在の法律と通知の間で零売の位置付けが不明確であり、明確なルール整備が求められる。
こんなところです。ところで、オンライン診療を利用した「処方」には、ほぼノーチェックで医薬品が販売されるという実態があります。特に「やせ薬」や「美容目的の薬」など、一部の医師がオンライン診療を通じて大量に処方し、ビジネスとして荒稼ぎしている状況が問題視されています。このような医薬品の流通が許される一方で、零売のように薬剤師が関与して販売する仕組みが規制されようとしていることは、大きな矛盾をはらんでいるのではないでしょうか。
結語
処方箋なしで医療用医薬品を売る商法「零売(れいばい)」は、1889年(明治22)に薬品営業並薬品取扱規則が施行された時に既に存在したとされています。
薬学部の6年制化により薬剤師の臨床スキルは大幅に向上し、医療の担い手としての役割が強化されています。現代の薬剤師は、当時と比較して、専門知識を活かして患者の健康管理に深く関与する存在となっていますよね。
「零売つぶし」は、患者の利便性を奪い医療財政にも大きな影響を及ぼします。一律の規制ではなく、より柔軟で実情に即した制度の整備が必要だと思うのですが、令和になっていよいよ選択肢そのものが失われようとしています。
「病院を受診せずに必要な薬を手に入れることができるとしたら、あなたはどう思いますか?」
この問いに対する答えが、今後の医療制度の方向性を示す一助となるかもしれません。
以上、(医薬品の供給をつかさどるはずの)薬剤師からの意見でした。
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