パンとアイドルを
かつて「パンとサーカスを」と言って滅んでいった文明があったらしい。
食と娯楽を満足させていれば民は政治、世の中の同行など興味が無くなり独裁政治が行いやすくなる。その独裁政治が進んだ結果、皮肉にも文明は滅ぶ…。
近年の事象を見ていると学ぶ事が沢山ありそうな話だなぁと思う。
僕らはアイドルから何を貰っているのか
最近、ひょんななりゆきでアイドルのドキュメンタリーを見た
僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46
https://watch.amazon.co.jp/detail?gti=amzn1.dv.gti.8cbb4c4f-133e-c299-57c7-ef1e1617273b&territory=JP&ref_=share_ios_movie&r=web
もちろん映像作品なのである程度の演出はあるのかもしれないが、描かれているのは少女達の苦悩とその苦悩から生み出される作品、捻れたエネルギーの魅力だった。
とりわけ追い込まれてゆくのは平手友梨奈さんだろう
暗い時代を背負ったが故に追い込まれていく彼女がステージでパフォーマンスをする姿は魅力的で大人達に反抗する姿は応援したくなる。
でもこちらが平手さんに感情移入して「現実を、この閉鎖的な空気をぶち破ってくれ‼︎」と思うと思わない程の間に「そんな事、1人の少女に背負わしてていいのか?」とも思えてくる。そこまで思考が持っていかれる作品になっていて純粋に感動した。
そして、このドキュメンタリーからある誠実な問いかけを投げられた気がした。
端的に言えば「君たちはどう生きるか?」だと思う。時代を反映してしまうのはアイドルの常だが、時代が暗い事で応援するとアイドル自身が追い込まれていく現実、時代的問題にどう向き合うのか?という誠実な問いにぶつかってしまった。
細部へのこだわり
欅坂のドキュメンタリーを見ていてこんな問いにぶつかったのは時代のせいだけで無く、欅坂の世界観の作り込みが細部まで行き届いていたからだと思う
ダンス、衣装、舞台装置
全て統一された世界観でリアルに追い込まれている彼女達をヒシヒシと感じる事が出来る。
足元で地団駄を踏んで手は拘束でもされているような窮屈な振り付けがあったり
衣装は明らかに軍服がモチーフで、下半身はフレアなスカートを履いて少女らしさはあるものの上半身のダブルボタンのジャケットは戦闘服に見えてならない
ライブの舞台装置も檻の中でパフォーマンスをする曲があったり
全体的に拘束されていて、追い込まれていて、常に力んでいる…いつ爆発してもおかしくない、危ない物を見ている気がすると思いながら鑑賞した。
陰極まれば陽に転じる
そんな永遠に終わらない閉塞感みたいな物を感じながらラストで欅坂から櫻坂へグループは変わる。
そして櫻坂では衣装も欅坂の頃の硬そうな軍服のようなデザインでは無く、柔らかく、優しく女性らしいデザインになっている。
1st single Nobody's fault の衣装が特にそうだろう。(曲名も「だれのせいでもない」だし)
もちろんそう言った明るい部分だけで無く、背部のベルトのデザインはアーミーさを感じられなくもない気がするので欅坂からの流れを汲んでいるのだろう。
更にこの衣装はスカート裾が淡いピンクになっていて桜がモチーフになっているらしい。
桜と言えば和のイメージだし、和と言えばかつて日本は和の国と呼ばれていた。
聖徳太子がかつて言った様に「和を以て貴しと為す」強調や協力が大切な事ですよと言っているのだ
そして、アジアには太陰大極図という考え方があり「陰極まれば陽に転ずる」と言われている。欅坂→櫻坂は正にその現象だと思う。
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そして、陽の中にも陰があり櫻坂の中には欅坂の流れが確実にある。「全てを内包しながら前に進んでいく」という中庸的な答えが櫻坂にはある
そしてそれは今の時代を生きていく上でも大切な考え方だと思う。
時代を反映させ、誠実に世界観を作り込んでいれば近代的なアイドル文化も普遍的な答えに辿り着く。そんな力が櫻坂にはある気がする。
娯楽の成熟
今回、ひょんな事からあまり触れて来なかったアイドルのドキュメンタリーを見たけれど一昔前の「ただの娯楽」から「何かを背負ってしまっている娯楽」が増えているんだなと改めて感じた。
最初に言っていた「サーカス」が成熟する事で二分化されたのかもしれない(もっと複雑に細分化されてるかも?)
ライトで、ただ、ただ楽しいという娯楽も娯楽としての存在は全く正しいと思うのでどちらもバランス良く摂取していきたいし、読み解ける目も肥やしていきたいと思った。