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大宮見取図#10 あなたの「わが家」であるかのようにお酒を楽しめる場所。

●串八丁 
  古川 弘一(ふるかわ こういち)さん

大宮駅東口から南銀座通りを南へ。
看板と提灯が黄色くぼんやりと光り、いかにも呑んべえが吸い込まれそうな景色が現れる。
 
今回ご紹介するのは、2023年で創業28年目となる居酒屋「串八丁」さん。
 
営業時間での取材につき、飲みたい気持ちをぐっと抑えながら、串八丁さんが長くこの街で愛される秘密をうかがいました!


 営業時間すらもお客さんに合わせる。

お話を聞いたのは、オーナーの古川さん。
気取らず自然体なスタイルで多方面から人望を集める、名物オーナーです!
 
お店の特徴は、家飲み感覚が味わえる庶民派リラックス空間。
店名にある串料理以外にも、さつま揚げや真イカの沖漬けなどメニューはバラエティに富んでいます。
 
客層も幅広く、お一人様から、仕事帰りのちょい呑み、仲間との語り呑み、会社での宴会などなど、さまざまなシーンで利用されています。
 
古川さん「お店としては『ようこそわが家へ』がテーマです。わが家だからこそ気軽に立ち寄ってほしいし、心から寛いでいってほしいと思っています」
 
 
わが家とはもちろん、お客さん一人ひとりにとってのわが家。
その徹底ぶりは、営業時間にも表れています。
 
古川さん「今は16時オープンですが、以前はもう少し遅かったんです。ところが、準備のために16時とかにお店にいると『もうやってる?』とお客さんが来てしまうんですね。せっかく来てくれるお客さんがいるんだったらと思って、時間のほうを変えちゃいました」
 
なんでも「お客さんが来るから」という同じ理由で、深夜の営業時間は朝4時までとしていた時期もあったそう(コロナの影響もあり現在は深夜12時まで)。
 
古川さんの徹底したおもてなしの心が垣間見られます。

 自分らしくお客さんを楽しませる。

20年ほど前に父親からお店を引き継ぎ、現在に至っているとのこと。
飲食店を出したいという思いは特に持ち合わせていなかったが、父親から「店を閉じようと思う」と聞いて、それなら自分がやってみようと、すんなり引き継ぎを決めたそうです。
 
古川さん「せっかく自分のお店になるんだから、自分らしくやりたいようにやろうと考えました。例えば父の時代の内装はシンプルな白壁という普通の内装でしたが、今は自分の趣味や、お客さんから『飾ってほしい』と渡されたお土産なんかで賑やかになっています。BGMだって、お客さんの要望に合わせて変えちゃってます。やっぱりお客さんに楽しんでもらうのが一番ですからね」
 
 
とにかくお客さんに楽しんでほしい。
そんなサービス精神は、もしかしたら古川さんのミュージシャンとしての一面が顔を覗かせているからかもしれません。
 
現在ロックバンド「Swimming Fly Walkman」のドラムとして音楽活動を行っている古川さん。常連客からはバンド内でのアーティスト名「PAPA」と呼ばれ親しまれているのだとか。
ミュージシャンの他にも、PA、出張料理人、フードバンクの手伝い、イベント出店など、いくつもの顔を持っています。
 
ただし、そんな個人のことにはふれずに「そんなに深く考えていない。来てくれたお客さんが楽しくなってくれればそれでいい」と、あくまでもお客さんを思う姿勢に、頭が下がる思いでした。

ミュージシャンの顔も。

ALLさいたまで地域を盛り上げたい。

串八丁さんの人気メニューのひとつに、埼玉産の食材を100%利用した「ALL埼玉らーめん」があります。
 
古川さん「全国的にはあまり知られていませんが、実はさいたまにはいろいろな美味しいものがあるんです。地元のいいものをお店で発信していきたいし、ぜひ多くの人に食べてほしいと思って、地産地消メニューを出しています」
 
 
そこには、この街の盛り上がりを願う古川さんの並々ならぬ熱意がありました。
 
古川さん「飲食店同士、横と横のつながりをつくり、協力し合って地域を活性化していくことが大事だと思っています。地産地消なんかはまさにその一環。これからもぜひALLさいたまで地域を盛り上げていきたいですね」
 
 
現在も、飲食店のつながり強化をめざし、夏祭りを画策中とのこと。
あくまで自然体でありながら、情熱的に楽しく街を盛り上げていこうとする古川さんに、巻き込まれていく人が多発中です!

まるで大宮の街のように「受け入れてくれる」お店。

取材終盤、お客さんの数も増えてきて、お店の対応をしながらお話ししていただき、終了後にはそのまま一杯いただくことに。
 
店内がさらに混んでくると、一人で飲みに来ている顔なじみのお客さんを紹介してまとめてテーブルに座らせる古川さん。
そこに自然と巻き込まれる取材陣。
 
古川さんの紹介により、ひょんなことから会話が盛り上がり、気兼ねなくお酒の場を楽しむことができました。
 
「なるほど、ここに来るお客さんはこの時間を楽しんでいるのか」と納得。まさに「わが家」のように、飾らずに飲み食いできる居心地でした。
 
 
どんな人でも受け入れて楽しく飲ませてくれる串八丁さん。
新しいものと古いもの、どちらも拒まず受け入れて発展してきた大宮の街そのものに、どこか通じるものがあると感じた、ほろ酔いの取材陣でした。

自然と人が集まる場所。
串八丁 オーナー 古川 弘一(ふるかわ こういち)埼玉県さいたま市大宮区下町1-43-7南銀プラザ1F
MAP OMIYA 2023 発行:アーツカウンシルさいたま (公益財団法人さいたま市文化振興事業団)さいたま市南区根岸1-7-1-4階 編集・制作:株式会社Funwacca  2023年8月発行

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