大宮見取図#17 埼玉には美味しいものがたくさんあるんです!氷川参道近くに埼玉県産を味わうビストロ、ではなく茶店(ちゃみせ)あり!
●デリカ
山﨑 暢(やまざき とおる)さん
氷川参道「二の鳥居」から少し裏手へ。
2階建ての民家の1階に入居する「デリカ」は、白とナチュラルウッドをベースとした、誰もがリラックスできそうな小空間。
しかし、ここはただの小洒落たビストロではありません。
なんと、調味料とワイン以外の食材はすべて埼玉県産。
そして店主自ら「ビストロではなく、茶店(ちゃみせ)です」と言い切るほどの、超カジュアルスタイル。
何かとこだわりが詰まっていそうなデリカさんに出向き、店主の山﨑さんにお話をうかがってきました!
実は、埼玉にも美味しいものがたくさんあった。
大宮で生まれ育ったという山﨑さん。
一度は地元を出て、都内の有名フレンチ店で働いていたそう。
大宮の実家に帰ったある日、山﨑さんの心を揺るがす出来事が起きました。
山﨑さん「父が埼玉県産の朝採れブルーベリーを買ってきてくれて、それを食べたら本当に美味しくて。正直、東京で食べるものよりも断然美味しかったんです。それをきっかけに地元食材を食べるようになって、埼玉には知られていない美味しいものがたくさんあることに気づきました。いつかは自分でお店を出したいと思っていたこともあって、地元大宮で埼玉の食材を使用した店を出そうと考えるようになりました」
まさに大宮(埼玉)での地産地消! なのですが、山﨑さんはそのニュアンスとは少し異なった感覚でいることがわかりました。
山﨑さん「地産地消はあくまで結果的なものであって、本心は『埼玉にはこんなに美味しいものがあるんだよ』と、多くの人に紹介してあげたいのが一番です。せっかく美味しいものを作っている農家さんがいても、やっぱり農家さんだけでその美味しさを伝えるには限度があります。それに、大宮を含め、埼玉にはウリとなるものが少ないイメージがあるので、そこを変えていきたいと思いました」
大宮をはじめ、埼玉県産の美味しいものはデリカに行けば食べられる。
それが、山﨑さんが多くの人に抱いてほしい、自身のお店のイメージなのかもしれません。
茶店であることに徹底してこだわる。
地元の美味しい食材にこだわる山﨑さんですが、実は、お店としてはさらなるこだわりを持っているんだとか。
それが、冒頭でもご紹介した「茶店」です。
山﨑さん「ビストロじゃなくて、茶店。よく時代劇なんかで参道沿いに茶屋があるじゃないですか。そんな感じで気軽に立ち寄れる場所でありたいと思っています」
そんな思いがあったからこそ、店舗物件は氷川参道に近い場所がいいと思い、今の場所が見つかるまでなんと約6年も要したのだとか。
それに、オープンの時間帯も工夫し、徹底的に茶店であることにこだわったそう。
山﨑さん「デリカは14時オープンです。この辺りは明るい時間帯にも、参拝前後の人や散歩中の人など、多くの人が行き交います。皆さんには休憩や待ち合わせで気兼ねなく使っていただけるお店でありたいんです」
デリカの茶店スタイルは本当に徹底していて、なんと開業当初からメニューに羊羹を揃えるほど。
山﨑さんの並々ならぬ意志を感じます。
気軽に立ち寄れる場所が増えれば、街も賑わう。
生まれてから東京に出るまで。そして2018年の開業からこれまで、氷川参道のすぐ脇からこの街を眺めてきた山﨑さん。
改めて大宮の魅力について聞いてみました。
山﨑さん「うまく言えないんですが……説明はいらないんです。とにかく氷川参道の、特にお店からも近い二の鳥居のところで、氷川神社に向かって立ってみてほしいです。それでわかると思います」
歴史的な場所に対して、人々はそれだけでも価値を感じる。
だから、旅行などで何度も訪れる。
多くを語らない山﨑さん曰く、それが大宮で言うところの氷川神社であり、そのまま大宮の魅力なのです。
最後にいただいたコメントには、山﨑さんの地元への思いが溢れていました。
山﨑さん「最近はデリカをはじめ、少しずつお店ができ始めましたが、まだまだ少ない印象です。気軽に立ち寄れる場所が増えれば、氷川神社だけではない街の魅力を示すことにもつながります。例えばデリカであれば、埼玉県の美味しい食材を知ってもらう機会になります。茶店的な立ち寄りスポットが増えることで、街がより賑わっていけばいいと思っています」
デリカの料理はどれも本当に美味しく、ただ地元食材を出すだけではない、相当なこだわりを感じます。
その美味しさを支えているのが、山﨑さんの「茶店でありたい」というおもてなし精神であることは、おわかりいただけたかと思います。
大宮を訪れたら、ふらっと立ち寄ってみたいお店ですね!