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天地の境が揺れる日

雨が降り続いている。

しとしとなんて優しい雰囲気はない。一日中ざあざあと激しい。どこかに屋根から伝って地面までじゃばじゃば水が流れる仕組みがあるらしく、ずっと激しい音をたてている。誰かがシャワーを浴びているみたいだ。

部屋から出ない正当な理由づけがなされる気がして、ちょっとだけ楽だった。ほんとは今日済ませたほうがいい用事はあったのだけど。この雨の中に出かけるなんて御免こうむる。そうしてまた壁のなかにこもった一日だった。


何日かぶりにBradに会った。というか部屋を訪ねてきた。たばこが欲しかったらしい。最初来たときは飯食ってる最中で、なんかめんどくさくて居留守使っちゃった。めんご。でもしばらくして再訪してきたので顔を合わせることになった。

やっぱ何日か実践を離れると言語ってのは瞬く間に退化する。それが外国語ともなればなおのこと。まだまだ真っ青な学習者だからこれは大きい。そんなんまじでもったんないからしちゃだめよ。

だから今日のは会話にカウントされるのかとっても疑問だ。なに言われてるかはだいたいわかってんだけど、言いたいことがなかなか言語に変換されねえんだ。そもそも言いたいこともそんなに湧いてこない。必然的に相槌ロボットみたくなっちゃう。あかんよほんまに。カウントしないんだとしたら、また無会話記録が一日伸びたことになっちまうな。


あと何日かぶりに元気なゴキブリ見た。毒餌にまだ関与してないだけだよな?耐性を獲得したわけじゃないよな?トイレ中の目撃だったので狩り損ねた。やつが敵陣営の希望の存在でなければいいのだけど。


雨の日って天地の境が曖昧になるよね。雲は空よりも手がかかりそうな気がするし、遠くの地平線と天上を区切る線がぼやける気がする。そして雨。この雫が降り注ぐ間は、天地は雫の連鎖によって繋がっている気がする。雨の日は街が空にのまれる日なんだ。僕たちも空の一部。今日みたいな日に通りを駆けあがったら、もう僕らはいくらか空を飛んでるみたいじゃない?

っていう妄想。飛びたいね。空。

そんな貴重な日に、空飛ぶ努力もしないで引きこもりっていうのは、さすがにちょっともったいなかったかな。


雨の日にこういう気持ちよさがあること、自分だけは少し覚えておきたい。放っておいたらなんだかどんよりしてしまうんだもの。


今日は雨音とともに眠るよ。おやすみ。





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