間違って落ちてきた太陽2
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
【2度目のライブ参戦】
pillarsと初めての出会いから早くも7年の月日が流れようとしていた。
そしてあの日と同じ会場で2度目のライブに参戦できるなんて夢のようだった。
メンバーは皆大人っぽくなり、ここまで言うまでもなく大人気で大活躍だった。
ライブ当日は会場内はもう無法地帯ではないかと思うほどのごった返し方だった。何も起きなければ良いけれど。
私はちょうど2階席のような所からライブを鑑賞する事が出来た。
一瞬レンを含め、何人かのメンバーと目が合った気がしたのは気のせいだろうか?
野外ステージだったが溢れんばかりの人で、きっとあまりにも人垣が出来ていて諦めた人も居るだろう。私も良い場所だったが必死で場所を取ったのだ。
1時間足らずの短い時間が凄く盛り上がり、楽しくてすぐに過ぎてしまったのだ。
新曲の宣伝のようだった。CDや写真集を買えばメンバーたちと握手をしてもらえるというのは流石にやめたのか、無くなっていた。そこは寂しかったな。
でもレン…凄く色っぽかった…。
いつの間にそんなに色気づいてしまったの?
これまでは、遭遇率が結構あるなという芸能人だが気になる人という風に彼を感じていた。
しかしながら今回のライブで完全に私はレンに恋に落ちたのだ。
彼は世の中の男子はもちろん、女子が束になってかかっても勝てないほどの魅力を醸し出しているのだ。
この間コーラの缶を持って行かれた時も、凄い色気で私はクラっと来たのだ。
ここから寝ても冷めてもレンの事ばかり考えるようになった。
これから受験だが、片想いの恋って成績が上がるって言うもんね。ラッキーだったと考えた。
ただ嫌々入っているグループでも恋バナばかりで、いつも憂鬱で黙っていた。しかしながら今ならめちゃくちゃしゃべれそうだけど私は口が裂けてもレンの事はしゃべりたくない。
「あんたバカじゃないの?」
「付き合えると思っているの?」
とバカにされるのが関の山だ。
絶対にやめておこう。
ただ受験勉強をしないといけないのにpillarsの曲や幸せな恋愛を歌った洋楽ばかり聴き、私は脳内お花畑だった。
ただ夏前のテストで酷い目に遭い、そこから禁音楽、禁pillarsで頑張ったのだ。
インターネットも切断されてしまったのだから動画サイトも見る事が出来なかった。
そのかいあって希望の高校には合格。
そして高校生、大学生の時はpillarsとは会えなかった。
しかしながらその代わり、私は小6の時からpillarsの事務所に年賀状を送っていた。全員から寄せ書きのような年賀状が来るのだ。年に1度それが至福の時で、他は動画やテレビで彼らの姿を拝んでいたのだ。
彼ら、あまり浮ついた噂もなく凄いなあ。
いつも感心していた。
【念願の有料ライブ】
そして時が流れ、私は社会人になり、一般のOLになったのだ。
大学卒業後、ずっと同じ会社に勤めていて、真面目に休まず有給休暇もためていったのだ。
そして24歳の初夏、待ちに待った有料のpillarsのライブに行ける事になったのだ。
値段は1万円近くしたが、それ以上の価値があったのだ。それも巨大ドームの真ん中あたりの席で、ファンもマナーが良く騒ぎ立てたりしなかったので気持ちよく鑑賞できたのだ。
音響も本当によく響き、無料の野外ライブよりも全然違ったのだ。
内容も濃く、歌とダンスやレンのピアノはもちろん、クイズ大会やレクリエーションもあり、pillarsと楽しく遊ぶことが出来たのだ。
全て終わって帰路につく時、テンションが上がって走り出してしまったほどだった。また来年も再来年もずっと行こう。
【突然のお見合い】
私はずっと彼氏が居なかった。たった2回ほど恋愛関係になりそうになった人が居たが、自然消滅だったのだ。
やがて私も20代半ばを過ぎ、父の知り合いから男性を紹介される事になりそうだった。
「ええっ?」
内心私は困ってしまった。正直嫌だ。
最近特に母が嫌味なのだ。以前は焦らなくて良いと言っていたのに、
「あんたにも誰か居たらなあ。あんたは変わってるからなあ」
と何度言われた事か。
まあどうせそうですよ…。
何だか憂鬱になってしまったし、その紹介されそうになった男性は非常に遠方の方で、私はそこまで遠方に行こうとは思わなかったのだ。
そう伝えて断ってもらったのだ。
心の底には想い人が居るが、もうそんな事は言ってられないかも。
私も婚活しようかな?
【ミラクル】
私は28歳になっていた。
もう言っている間に30歳だ。
今年は職場の近くでpillarsのライブがあるのだ。
私は有給をいただいてもちろん行くのだ。
そしていつものようにハッスルして帰路につき、また明日から頑張ろうと思ったのだ。
次の朝、私のSNSが騒がしく、何事かと思ったのだ。
何とpillarsが突然の追加公演を昨日と同じ会場で行うようなのだ。
何で?
当日券もたくさんありますとの事だ。
私は心臓がやけに早く打つのを感じたのだ。
今日は定時退社が出来そうだ。
普通に行けば開園時間に間に合う。
一方その頃、レンは
楽屋裏で地球のようなビー玉を何度も何度も角度を変えて眺めていたのだ。時に切ない色っぽい溜息をついて。
他のメンバーたちは、
「レン、いつもあんな事してるよな。」
「きっとあれは恋だな…」
レンはある事で頭がいっぱいだった。
ラッキー!ちゃんと間に合った!当日券も手に入ったが、
「お待ちしておりました。お席まで案内します。」
「???」
それも私がスタッフに案内されたのは最前列の一番良い席だった。
メンバーとも目が合いまくりで、たくさん笑いかけられたし、一番盛り上がってライブだった。
そしていつも通りレンのピアノで彼らの合唱風の歌が終わった。
レンが出てきて、
「ここでお知らせがあります。私事ですが、結婚することになりました。今後とも何卒応援をよろしくお願いいたします。」
どよめきだの悲鳴だの。
凄いエネルギーが会場内を駆け巡ったのだ。
私は何かが崩れ落ちた感じがしたが、不思議と冷静だったのだ。
ただ何だか見せしめにされたようだった。
もう関わって来ないでねというレンからのメッセージだろうか。少し悲しい。
(レン、結婚するんだ。そうか、そうだよね…)
同時に卒業のようで少し寂しかったが、これで心置きなく婚活が出来るかと思うようにした。
【手を取って未来へ】
私はそのまま会場を出て帰宅しようとした瞬間、スタッフさんに止められて、勝手口の方に行くように案内されたのだ。
「???」
そこにはpillarsのメンバーが居て、「おめでとう」
と声をかけられたのだ。
「何がですか?」
レンが私の手を取り、私を車に乗せたのだ。その後に他のメンバーたちがついて車を運転してきたのだ。
「突然驚かせてしまい、すまない、」
「どこに行くんですか?」
「内緒」
「ちょっと困りますよ!」
「君にちゃんと話をしないとな。」
やはり私、ふられるの?
車を止めた先は有名ホテルだった。
そしてディナーをpillarsのみんなとほおばり、ふとレンが居なくなり、私は困っていたらスタッフさんが出てきてチャペルに案内されたのだ。
そして扉を開けるとレンが前に立っていたのだ。
私はそのままレンの前に進んだのだ。
「どうか俺と一緒になって欲しい。ずっとずっと気になっていたし好きだった。」
これ、夢ではないようだった。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
私はそう言ったのだ。
このプロポーズ用にpillarsはゴスペルのような新曲を披露してくれたのだ。
もう大丈夫。
もし両親の反対に遭っても、説得してみせるし必ずものにしよう。
そう決心したのだ。
案の定最初は両親も反対だったが、レンと私が懸命に説得し、承諾してくれたのだ。
私はその後、なんとまさかのpillarsの新メンバーになり、加えて寮母さんのように彼らのご飯を作ったりする事にもなったのだ。
小6から途中で止まっていた夢が今結婚と一緒に実現したのだった。
レンとならどこまでも歩いていけそうだった。
完
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