間違って落ちて来た太陽1
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
【未来になんて希望を抱けない】
もう学校なんて2度と行きたくない…。
私は前世で悪い事をしてしまったのか?
幼稚園の頃から同じ子たちにいじめを受けている。
時には帰宅前に捕まってしまい、帰宅できず、本当の事を話せずまた厳格な両親に怒られて家に居場所が無い。母親が迎えに来てくれた後、締め出されてお隣のおばちゃんが助けてくれたこともある。
今度同じことがあると、うちの子に出来ないと父親が言っていたようだ。
それにもかかわらず、また似たような事を繰り返してしまった。
私何かした?
私は知里(ちさと)小学2年生。
もう消えてしまいたい。
学校でも家でも居場所が無い。
【奇跡】
どんな風の吹き回しなのか、8歳の誕生日に私は父親と出かける事になった。
もしかしたら違う家に預けられるのか?
辛いけど、泣きそうだけど受け入れるしかないのかな?
ドキドキしていた。
しかしながらたどり着いた場所は家から歩いて15分くらいの大型商業施設に囲まれた野外のステージ。
pillars(ピラーズ)という子どものアイドルグループのデビューステージだったのだ。芸能界の未来を支える柱たちという意味だそうだ。話題になっていたから私も名前は知っていた。
何と最年少が4歳、最年長が17歳の男女混合9人グループだった。
センターは日本人離れしたすらっとした明るい髪色ではっきりした顔立ちの10歳の少年だった。名前はレン
まだ小さいはずの彼らははち切れるばかりの元気な歌とダンスを見せてくれた。
時にはバック転や宙返りなどアクロバットなパフォーマンスも。
歌もpillarsらしい元気いっぱいのダンスミュージックからセンチなバラード、何とR&B、全英詞の歌、レンのソロ曲であるバラードダンスミュージック、レンのピアノで最後は合唱曲風の歌でお別れだった。
これで無料か…
凍りついた私の心が少し息を吹き返し、動くのが分かった。
みんなしっかりしてるなあ。全身全霊で人を楽しませる姿見を見て感動したのだ。
父親は何か感じたのか、pillarsのCDミニアルバムと写真集をその場で買ってくれ、メンバー全員との握手会にまで並ばせてくれたのだ。
皆感じが良く、幼いのに礼儀がしっかりしていた。
「ありがとう!」
レンは私の手をしっかり握ってくれ、頭を撫でてくれたのだ。
「頑張れ!君は間違っていない。」
何かを感じたのだろうか?
最年長のギョウも力強く私の手を握ってくれ、しっかり頭を撫でてくれた。
その日から私はpillarsの大ファンになった。
彼らのドラマ、壮大な冒険ストーリーも大ヒットで、私もハマってしまったのだ。レンが勇者、9歳のカンちゃんがお姫様、私と同い年の男勝りの剣士ランちゃんもレンが好きで…
やがて魔王を倒すが、レンは誰を選ぶか?という話だった。
CDもゆくゆくは擦り切れるほど何回も何年も聴いたのだ。
早い段階で全ての歌を覚え、歌えるようになったのだ。もちろん写真集もボロボロになるまで、本当に穴が開くほど見た。
あれ?
何も怖く無い…。
先日のライブに行って、冬休みが明ける頃には私は学校が始まる事に対して平気だったのだ。
これまではオドオドしていたけど、いじめグループが何かして来たらキレてやろうと決心出来たのだ。
これもまた奇跡。先生が話し合いを開いてくれたのだ。
「ちょっと気になっていたんだけど、」
と名指しでいじめグループに注意をし、真剣に叱ってくださったのだ。
彼女らもそれを素直に聞いて、私に謝ってきたが、それだけでは私の溜飲が下がらず、感情があふれ出し、私は泣きながら
「許さない!」
と言ったのだ。積年の恨みだった。
「もう許してもらえなくて良いわ。」
と彼女らも諦め、今後同じクラスになる事も無く、私も引っ越しや進級などで金輪際関わる事が無くなったのだ。
【これって再会ですか?】
私は過去に2回レンもしくはレンに似た人に会っている。それもどちらも声をかけられて、しばらくしゃべっているのだ。
1回目は小6。引っ越しをしてあまり学校は好きではなかったが友達は居た。学年が違う友達も出来た。
そんな時、いやもっと前からか?私には夢があった。
歌手・声優になりたい…
私は昔からアニメ好きだったし歌も大好きだった。しかしながら人前では歌った事は無かったが、ひそかな自信があった。
家族には、風呂場で歌っているのを聞かれて、
「あまり上手くない。」
とハッキリ言われて落ち込んだことはあったが。
周りの話題についていくために流行りの歌も勉強するようになったのだ。
これまではアニソンばかり聴いていたから。
肝心なレンらしき人に旅行先で会っている。
ホテルの中で声をかけられたのだ。お互いに家族旅行で、単独行動していた時だ。私は散歩していたっけな。
あまり人通りの無い休憩所みたいなところで2人で話をしていたのだ。
やはり相手はレンだったのだ。
「確か4年前、デビューステージに来てくれてたよな?」
「はい。」
まさかレン、私の事を覚えてくれてるなんて奇跡だ。
学校の話や、本当なら学校に行かずに声優、歌手になりたいことなども話した。
彼は優しく聞いてくれていた。
そして、
「君の歌を聴かせて。さあ歌って。」
と。
私は大好きなpillarsのレンのソロ曲を歌った。
レンは黙々と集中して聴いてくれた。
どんな評価が下されるのかと。
「なかなか良いぞ!10人目のメンバーのオーディションに来ないか?」
「えっ!?」
私は困った。
厳格な両親がOKしてくれるはずなく、説得する自信も無かったのだ。
しばらくしてレンのご両親がレンを呼びに来たのだ。
レンは名刺を私にくれ、私はレンが持っていたメモ帳に電話番号を書かせてもらった。
そして私は咄嗟にパーカーのポケットに入っていたビー玉をレンに渡したのだ。
小さいが、青くて暗闇でも光るのだ。
まるで地球のようだった。
レンは大切そうにビー玉を両手で包み、
「ありがとう」
と爽やかに笑って去って行った。
やがて時が流れ、私は中学3年生で今5月だ。
私はいろんな目に遭って懲りたせいか、友達はテレビゲームやアニメだった。今だって仲の良い友達とクラスが分かれ、ぶりっ子で性格のきつい子がリーダーのグループに入っている。他の選択が無く仕方なくそうしているだけだ。あまり楽しくはない。
中2の時同じクラスでゲーム友達も出来、もう古くて手に入らなかったゲームを先日まで長期間貸してもらっていた。なんと奇跡的にそのゲームをクリアしたのだ。人生初のクリアだ。
長い長い冒険の旅のお話しだった。その友達にはちゃんとゲームを返し、話が盛り上がったのだ。
そうあのpillarsのドラマと同じシリーズのゲームだったのだ。
それも主人公は女勇者で私の名前。
今日からは待ちに待ったゴールデンウィーク。
次は新しい機種で新しいゲームをする事にしており、性別選択が出来ず、男の勇者に私の名前をつけようと決めたのだ。それも面白いだろう。
昔住んでいた電車で一駅の隣町の図書館や街を歩いた後、初めてpillarsと会ったあの広場前の階段にたどり着いた。
何だか懐かしいなあ。pillarsは皆どうしてるのかな?
何だか初夏の爽やかな風に誘われてコーラが飲みたくなったのだ。
ゴロゴロ!自動販売機から勢いよくコーラが出てくる。そしてプルタブを引くとプシュー!と半ば泡が出てきた。
良いな。この感じ。
やはり私、コーラが好き。甘くてしゅわしゅわして…。どこか懐かしい。
でもこのコーラ、なんかデカイかな?飲みきれないかも…。
私はギブアップ寸前だった。
そこに長めの明るい茶色の髪を1つに束ねて濃いピンクと黒のパーカーを着た若い男性が声をかけてきた。シャカシャカの黒いズボンをはいていた。
まさか生まれて初めてナンパに会ったのか?でもその人は知っている人だと私の中の誰かが心をツンツンと突いた。
「お腹いっぱいか?良ければ俺が飲んでやろう!」
彼はウインクをして、私からコーラを缶ごと取って飲みながらどこかへ行ってしまったのだ。
(???何なんだ?あいつ。)
私はぽかーんとして立ち尽くしてしまった。
何の気なしに私は階段を降り、広場の舞台前まで行ったのだ。
するとライブの予定表が舞台の柱に貼られていて、なななんと…明日この場所でpillarsのライブがあると。
大型アイドルの再来なので、何となく周りもざわついているように感じた。
今でもpillarsは大人気で第一線を走り続けている。私も元気をもらっている。
その時にふと思い出しだのだ。
もしかして、さっきの人、レン?
確かにオーラがあるし、色気もあり、写真の感じと似ているし、子どもの頃ここで会った時と3年前旅行先で会った時の面影も残していた。
でも、そんなわけないよな?
でも、彼ら、明日ここで歌うんだってよ?もしかしてリハーサルするかもしれないし…。
きっとレンに似た人だよね?
ただレンならあのコーラの缶、飲んだ後返してほしかった。(黙れ)
そんな事はどうでも良い。かな?
明日は絶対にまたここに来よう。今度は1人で。また彼らのライブが見れるなんてまたとない機会だ。
新しいCDも買わず、新曲はレンタルや動画サイトで見るので済ましていた。有料のライブは高額すぎて中学生には手が出なかった。
有料のライブは大きいドームでするみたいで、とにかく凄い、興味がなくて友達の付き添いで行った人がとんでもなくpillarsにハマったり。
私はいつかpillarsの有料ライブに行けるかな?
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