お別れは唐突すぎて、さようならも言えなかった。
昼間までは何事もなく使えていた充電の線が突然使えなくなってしまった。
モバイルバッテリーにつないでも、うんともすんとも。
線、応答せよ。
しーん。
ストライキかよ。
いいなぁ自由で。
別の線に変えたら何事もなかったかのようにわたしのiPhoneは充電されはじめた。
見た目には何の変化もないまま、ある日突然壊れてしまう。
前触れがないのがこわい。
いつも一緒だったのに、ありがとうもさようならも言えなかった。
自分はその充電器のようにならないように、今日は少し遠回りしても東京タワーを見て帰ろうって思った。
自分の断線しそうなところに養生テープを巻いておく意味で。
ぷつんと切れないように、今のわたしには東京タワー分が🗼必要だったのかもしれない。
silentカラーに染まった、いつもと違う表情のタワーにこんばんはのご挨拶を。
胸がいっぱいで食べられなかったお昼のおにぎりをかばんから取り出し、特別ライティングの東京タワーを見ながら食べていた。
人目につきにくい場所で、ひとりこっそりと。
少し歩いたところにはお洒落なテラス席のあるカフェだってあるのに、わたしは自分で握ったおいしいおにぎりをほうばった。
海苔もちゃんと巻いてある。
残念とかつまらないなんて思わない。むしろ幸せな気持ちになった。
おいしく食べられたら、場所も何を食べるかも関係ない。
ひとりでホッとできる場所に、相棒と来れてよかったんだよ今の状況は🧸
朝から冷たい雨が降ったこと、とても億劫で移動も大変だったけどそのおかげでいいこともあった。
水たまりに写る東京タワーもまた一興。
一興どころか、こっちがメインでもいいのでは?と言った出来栄えの写真。
ビルに映るタワーも、今日だけはsilentのカラーに染まる。
目の前に見えているものが全てじゃないんだよって、大好きな東京タワーが教えてくれたこと。
あと何十年もしたら全部ネタにして笑い飛ばせるのかもしれない。
だがしかし。だがしかし、なのだよ今はね。
早くここから脱出したいと思っているのに、無駄な責任感がわたしをそうはさせてくれない。
出来ないくせに、責任感だけは一丁前なんだから。
苦しくてムカついて黒い感情しか出て来なくて。
このまま全部ゴミ箱に捨てて、記憶喪失のフリでもしてみようか、なんて。生まれ変わったら一度だけやってみたい。
気持ちいいのかな。あんまりよくはない気はするけど。
ブッチするくらいなら、明日もがんばって行くよわたしは。
真面目さだけが売りですから。
見透かされたように、お前はこうこうこうだからこうなんだよなんて久しぶりにあった人にずっと愛のある小言を言われていた。
それが今日の主な仕事かな。
わかってる、変えたい、脱皮したい。
でも出来ない。
悔しい。ダサいボロいみすぼらしい感情。
静かに照らしてくれた、タワーの淡い光。
それはそれはとても静かに。
だって、今日はsilentカラーなんだから。