石に関わる2つの思い出
◆祖父と石を交換した話
小さい頃、石を集めていた。公園で拾った石。河原で拾った石。海岸で拾った石。当時は何も知らなかったが綺麗な石だと思って拾ったガラスのかけら。集めた石は薄いお菓子か何かの箱に詰め込んでいた。
丸い石。おにぎりみたいな石。赤みがかった石。黒ずんだ石。
色から形から全く同じものが無い。その無限ともいえる石たちの中からお気に入りを見つけ集めていた。何か光るものを感じてたんだろう。
無心に宝を探すように地面とにらめっこしていた。
きっかけは祖父の影響。祖父も石コレクターで、祖父の家にある棚の一つの引き出しを開けるとマス目上に区切られ、綿が引き詰められ、そこに石が丁寧に置かれている。そしてその下に小さく「〇年□月~で採取。」と記録されていた。小さい頃、その引き出しに僕は石の魅力を見出してひかれたんだろう。
そんな祖父のコレクションと自分のコレクションの石を交換し合った事があった。何を貰ったかは覚えていないが、僕が渡したのは日本の公園で取れる良くある石。祖父は海外で取ってきた石。俯瞰的な価値観でみたら完全な不釣り合いな取引である。
子供のコレクション何て雑である。たぶん乱雑にお菓子の箱に詰め込んで、気が付いたら興味が薄れて物入れの奥底に。もう捨てたかもしれない。
そんな事すら忘れさられ、高校生の時に祖父は亡くなった。
葬式も終わり、一通り整理がついてから1年後位にたまたま祖父の家に遊びに行った。残された祖母と談笑しながら近況報告をし終わった後、ふと石の引き出しの事を思い出して「確かここにコレクションしてたよねぇ~」と祖母と話しながら引き出しを開けるとあの頃のまま。
マス目上に区切られ、綿が引き詰められ、そこに石が丁寧に置かれている。そしてその下に小さく「〇年□月~で採取。」と記録されていた。
改めて見ると沢山の土地の石をコレクションしていたのが分かった。本当に好きだったんだろう。その中で一つだけ「〇年□月~から貰った。」と僕の名前が書かれた紙と共に素朴な丸い石が置かれていた。
大切なコレクションの中に僕の選んだものを大切に保管してくれて凄く嬉しかった。
思い返すと石を交換してから大きくなって祖父と石の話をした覚えがない。というより亡くなってからその時まですっかり忘れていた。
あの頃は小さくて石について説明されてた覚えがあるが何もわかってなかった。大きくなってまた石の話を聞いておけば良かったなぁと思っています。
◆黒曜石
中学生の頃、社会の授業で黒曜石が道具の一部で使われていると習った。
それから少し経った後、学校からの帰り道に道路工事の途中で地面が掘られた場所があった。作業員は休日だったのか誰もおらず、小さい区画で誰もいなかった。「工事してるんだぁ」程度に地面を見ていたら、灰色の石の中に黒く光る石を見つけた。ついしゃがんで手に取る。砂を払い良く見ると綺麗な断面と鈍く反射する表面。これもしかして黒曜石じゃね!?と思いそのまま持ち帰った。
次の日、社会の先生に見せたら本物らしい。「どこで見つけたの?」って聞かれたが謎の優越感からか「企業秘密です」と変なマウントを取る。なんだコイツ。厨二の見本の様な少年ですね。それから学ランの内胸ポケットにお守り感覚で持っていた。
もしかするとこの石から超絶なパワーが体内に流れ出し、超能力を生み出す…!はたまた石に封印された…!的な妄想をしながら暇な時に石を弄ってた。
ある日、クラスメイトに黒曜石を自慢したらどういう流れか忘れたが石の耐久テストをしようという流れになった。
黒曜石をクラスメイトに渡すと勢いをつけて手から放たれた黒曜石。
数メートル先のコンクリートの壁にぶつかり「ガキンッ!」という音と共に粉々に砕け散った。
「あんま固くねぇな~」的な会話をしてた気がする。僕は回りに合わせて愛想笑いを浮かべてた。そのままチャイムが鳴り皆が一斉に教室へ帰る間際、砕け散った黒曜石のかけらを手に入れてポケットにしまった。
この時は悲しいとか怒りとか余り感じてなかった。しょうがないって気持ちが強かったかも。中学生の頃は特に周りに合わせようと必死で感情が死んでた覚えがある。
黒曜石のかけらは割れた影響で先端が凄く尖っていた。試しにノートに先端を当てて一気に引くとノートがスパッっと切れた。
それからの記憶は全く無い。飽きて捨てたのだろうか。ただ拾った時の嬉しさと砕け散った悲しさは強く残ってる。
今思えば耐久テストってなんじゃい!!!!石は固いけど靭性が無いから簡単に割れるんじゃボケッ!!!!!!!!!しかも人の物割っといて詫び一つないんかい!!!!!てめぇの頭を耐久テストしてやろうか!?あぁ!?!?!?!?!?!?!?!?
と今更ながら怒りを覚えるが当時は中学生、たぶん相手も悪気は余りなかったんじゃないかな~。
そこまでやべぇ奴でもなかったし。
まぁ子供の行動って無意識に残酷な事をするわけで、その中で生きていくために良く分からない同調しなきゃならないのは辛い環境ですね。
黒曜石は砕け散りましたが、色々な思い馳せる石です。
黒曜石のナイフってかっちょいいから買ってみようかな。