【茜】DIVER
ある日、とても大きな黒い波が都市を攫った。
その波に流された生き物達は記憶と共に影を殆ど失った。
波に攫われた多くの影は互いに混ざり合い、魚の形を模し、都市を泳ぎだした。
都市の住人は自身の記憶を取り戻すべく魚影と立ち向かう事となった。
だが、魚影はしょせん影。
普通の手段ではすり抜けてしまう。
当たり前の事だが、影を捉えることは出来なかった。
しかし、偶然にも魚影を捉えた者が現れた。
その者はガラス工房の職人で、自身の心を表現した水槽に気が付いたら小さな魚影が住み着いていたという。
住み着いた魚影は自身の影であり、それを取り込んだ職人は記憶を取り戻した。
この事が都市内に知れ渡り、記憶を無くした漂流者はそれぞれの心を表した水槽を作り出した。
その水槽に馴染む魚影を捕まえる為に、自身の記憶を捕まえる為に。
腰に自分の水槽をぶら下げて。
都市はすっかり魚影の住処となっている。
其処へ記憶を取り戻すべく、漂流者達は魚影の住む都市へ潜り込む為のDIVERとなった。
魚影の捕獲は難航した。
穏やかな魚影も居れば気性の荒い魚影もいる。
多くのDIVERは魚影に襲われ、影を全て奪われ記憶を無くし、塵になっていった。
だが、驚くべき事にその塵は魚影を払う事が出来る物質だった。
塵は影を奪われた者から取り出す事が出来、その塵を魚影に振りまくと影がバラバラになっていく。
バラバラになった影は様々な形をしており、それも水槽へ入れることが出来た。
その影は自身の記憶の一部に成り得た。
この塵を発展させ、対魚影兵器を作り出す。
その武器に使用している塵は魚影に限らず、周りの環境を壊す程の影響を及ぼす。
使用した箇所は忽ち立ち入り禁止区域になる程に。
しかし、周りを壊してでも記憶を取り戻したいDIVERは自分の塵を使いながらも武器を振るい魚影に立ち向かう。
魚影が蔓延る都市で記憶を探す為に溺れながらも彷徨う赤い髪の女性がいる。
今日も武器を携え炉心型の水槽の中身を探している。
炉心水槽の中にはレンチや機械の影がある。
この中に合う魚影をずっと探している。
いつの日か目の前に大きな大きな鯨の魚影が現れた。
武器に巻かれたKEEPOUTの布を解きながら塵を出力させ、立ち向かう。
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