「凡者の合奏」で知った終の住処という言葉(024/100)
片岡健太さんの「凡者の合奏」を読み返した。sumikaのボーカル片岡さんが書いたエッセイだ。
1週間後の5月14日(日)に横浜スタジアムで行われる「sumika 10th Anniversary Live 『Ten to Ten to 10』」を控え、もう一度読み返したいと思ってページを開いた。
最初に読んだのは発売当初の2022年の初夏だったと思う。その時は理解できず、今回気づいて驚いたことがある。「はじめに」に書かれている通り、この本はライターの方を入れず片岡さんが全編書き下ろしだということ。ブックライターという言葉を理解するようになり、私が少しだけ書くことに向き合ったことで気づけたことだった。言葉を使うお仕事をしているとはいえ、歌詞とエッセイは別物だと思う。改めて、この本の愛しさが増したような気がした。
sumikaというバンド名は「さまざまな人にとっての住処のような場所になってほしい」というのが由来だ。ライブは家に「ただいま」と帰ってきたようなあたたかな空間だといつも感じる。
私がこのバンドと初めましてをしたのは2018年初春。仕事が忙しい時期で夜遅くにへとへとになって帰ってきた日だった。本当はすぐにでも寝た方がいいけれども、動けずにソファーに身を預けて小さく丸まってスマホでYouTubeを見ていた。そこでたまたま再生したのが「Lovers」という曲だった。そのあと、当時の最新アルバムをダウンロードして聞いた。繰り返し聞いた。アルバム丸ごと、どの曲も気持ちを前に押してくれる曲だった。
だから、はじめ、sumikaは一点の曇りもないバンドだと思っていた節があった。そうではないことはライブに行くようになり、ファンになり、理解して行ったけど。
むしろ片岡さんはひとりの人間で、悩んだり苦しんだり紆余曲折を経ながら、今まで歩んできているからこそ、私にとっては響く曲がたくさんあるのだと思う。この本を読んで幼少期からどんな出来事があったのかを知って、片岡さんを、sumikaをより好きになった。
音楽が鳴り止みそうなタイミングがいくつかあったことも改めて知った。
声が出なくなって、それでもバンドを辞めなかったこと。その時にバンドで売れることではなく「続けること」が目標になったこと。元々sumikaに込めていた”終の住処”という本当の想い。
続けることはとても大変だからこそ、価値がある。4人のメンバーで「sumika」だったところから、頭をガツンと殴られるような出来事が起きたけど、音楽を続ける限りは住処を続けると決めたからこその1週間後のライブのはずだ。
自分がファンになる前の過去も、好きになってからの過去も、これからの未来もひっくるめて、sumika、sumikaスタッフやファンも信頼して追いかけたいと思う。
この本は「信用」と「信頼」について考えさせる場面が多いと思う。信用と信頼の違いは何か。信頼できる人を大切にするとは何か、片岡さんの人生を通じて考える時間をもらったように思う。
来週はきっと、というか、絶対。涙が止まらなくなりそうだ。
笑ってもいい。泣いてもいい。とにかく今は「ただいま」と「おかえり」を伝えたいと思うのだ。
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