竜どもが空をゆく
洋上を白い紐が進んでいるように見えた。
<こちらフォアランナ、目標を視認した。どうぞ>
<こちらアイランドⅡ了解。これより管制をロングノーズに引き継ぎます。通信終了>
<こちらAWACSロングノーズ了解。高度と方位を維持し引き続き観測プロトコルに従って目標に接近せよ。どうぞ>
<フォアランナ了解。通信終了>
簡単な観測任務になりそうだった。どこからか現れる巨大飛行生物をお帰りになるまで観察する、いつものお仕事。
<こちらフォアランナ、目標の観測点に到達。どうぞ>
<こちらロングノーズ、確認した。観測を開始せよ>
<了解>
テキサンをドラゴンの体表に寄せると、後尾座席に載せられた観測機器がうなりを上げて仕事を始めた。
彼らについては、ほとんど何も分かっていない。
一つだけ、なぜかジェット機を酷く嫌うのだ。
無線が突然騒がしくなる。
<アイランドⅡより緊急連絡……爆装したジェット機が1機、こちらへ向かっています!>
<何だと……? どこからだ? 機種は?>
<いずれも不明! 不明機、さらに増速しています!>
<この空域を封鎖しろ! フォアランナ、お前も退避しろ、いいな!?>
<不明機、無誘導爆弾を投下! 迎撃間に合いません!>
目の前で2回、爆発が起きた。
ドラゴンがむずがるように勢いよく身をよじった。頭を回したとき、左から機体に恐ろしい衝撃が走って息が詰まった。
とっさに目をやると左翼が半分吹き飛んでいた。ほとんど反射的に脱出レバーを引いた。
風防が吹き飛んで強風が吹き付けてくる。頭上でパラシュートが開いたとき、尻の下でテキサンがバラバラになったのが見えた。ドラゴンがぶつかってきたのだ。
機体の破片には目もくれず、ドラゴンは飛び去って行こうとする。その鼻先で何かが光った。ジェット機だ。
ドラゴンはジェット機に勢いよく向かっていき、そのまま大口を開けて、ひと呑みにした。
【続く】