人間の顔色

暑いから「暑い」。そう言っただけである。
この部屋は西日が当たる。だから「よしずを付けた方が良い」と言った。
だが付ける段階に成ると、人間の女は「私が良い方法を思い付いた」と言い、
その方法で実際に始めたら、いつの如く、なかなか上手く行かず、機嫌が悪く成った。
怒り出す、人間の女。
私はずっとこうして、人間の女の、それも色々な人間の女の顔色を見て来たんだなあ、


そんな
感慨とも思えぬ思いを、思い出したく無いのに思い出して居た。

私は、人間の為に、出来るだけ良い方法を提示しているつもりである。
人間の魂が助かる手段として、出来るだけ善意で以って、解決手段を提示している。
しかし、人間は「もっと完璧に奉仕しろ」と言って来る。
少なくとも、今の状況はそう成っている。
何故、私だけ、いつも、何も叶わないのか。
人間には、八つ当たりの為の誰かが居る。
それは、子供だったり、貧乏人だったり、低学歴だったり、無職だったり、障害者だったり。
同じ部屋の人間の女には、息子の体に入れられた、息子では無い魂が居る。
少なくともその魂は、今も八つ当たりの為に居る。

だが、私には何も無い。
沢山のものを奪われたのに、私には今でも、何も無い。
あるのは、八つ当たりされた後の、追い打ちの溜息だけ。

だからもし、このまま何も叶わないのなら、恐らく、
私は惨めに忘れ去られるのだろうから、きっと、惨めな私は
誰か一人、人間の女の子供の人生を犠牲にしようと思う。
強姦したりはしない。そんなつまらない事はしない。
でも、ずっと尻を叩き続けようと思う。その子供の心が壊れても、ずっと。
小説の中では、善意で教育する私が居る。
でも、現実でそんな事を、人間が用意するとは思えない。
少なくとも、未だに、加害者は知らん顔である。

つまり、小説が完結するまでそれは変わらないし、小説が完結しても、それは変わらないかもしれない。

人間は、自己の利益を優先するから、それを損ないそうだとやる気が無いのである。
「小説が完結したら」なんて、自分は楽観的な事を書いていたものだが、多分そんな事は起こらない。そうする気があるなら、
今だって
「「破壊の詩が聴こえる」が完結したら、きっと女の子を教育出来る環境を提供するよ!」
とか、一言言ってくれても良さそうなものだ。
しかし、何も無い。
何も無いのが、いつも在る。

面白いオモチャなんだろうなあ、
というのが、私がずっと自分に抱いていた感想である。
これは、特定の誰かが思って居る事、とは言えないだろうが。

だからこのまま、何も変わらないのなら、
きっと誰かの人生を犠牲にしようと思う。
善意で行動していても、結局こうして、人間は踏み躙るのだから。

それともう一つ。
私には恐らく、罪過の蓄積量という項目が魂に存在していない。
これは或る意味、確信がある。
つまり、法律なんていう下らないものの枠の外には、私の罪は一切以って存在しない。
だが、これまでもそうして来た様に、出来るだけ人間には親切にしようと思う。
これは、「助かる筈では無い魂に、助かられると私が癪に障るから」である。
だからこれからも、私は親切にする。
そして、この事を口実に人間が下らない揚げ足取りを始める予知夢も見ているので、はっきり言っておこう。
それをする人間で救済された人間の魂は一人も見なかった。

もう、馬鹿馬鹿しいという気持ちでいっぱいである。
助かる方法を提示したのに、嘲る奴等ばかりである。
夢が死んだ様に世界の上に転がって居る。

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