リアル病完治後の日記
目が覚めると、私は黒い猫に戻っていた。
母も猫で、どうやら私はリアル病という病気に罹っていたらしい。
ひたすらに苦しい夢の世界を現実だと思い込んでしまう病らしく、罹ったまま夢を現実だと思い込んで死んでしまう者も居るのだとか。恐ろしい話だ。
通りで変な夢の筈だ。夢の中で私はひたすらに苦しく辛く、しかもそれを「お前が選んだから、悪いのはお前」等と言われたりもする、どうしようも無い、下らなくて馬鹿馬鹿しい世界だった。
で。
その日は母が寿司を取ってくれて、それで近所の者達が集まってくれて、みんなで私の無事を祝ってくれた。そこでこの世界の事を随分忘れてしまっている事に気付く。それでみんなに改めて自己紹介をして貰い、この世界の事を色々と聞いた。
どうやら私は、なんと40年もリアル病で寝たまんまだったらしい。
通りで何もかも忘れる訳だ。
んで、そんなこんなで騒がしい夜を過ごして、それからみんなより先に寝た。
どうでもいいが、私が取っておいたサーモン勝手に食うなよ。
次の日、朝日が部屋に差し込んで来ていて、それで起きた。
母はもう起きて居て、聞いたら、あれからみんな帰ったとの事。
母が朝御飯を作ると言い出したので、待ってる間にPCでネットでも見てるか、と電源を入れる。
『NFS』という質素なメーカーロゴが書かれた黒いパソコン。我が愛機のPC-9881ZXだ。夢の中でも現実でも、結局PCやってんのかよ、って自分にツッコミ入れたく成るが、まあ猫なんてそんなモンだよな、なんて勝手に納得する。
ネットでは、まあどうでもいいニュースが大半だった。
嫌なニュースじゃないだけいいか。
毛布に包まってヌクヌクしながらニュースサイトを流し見ていると、見知った顔を見つけた。
シオリだ。
結局、昨日もシオリは来なかった。いや。来れなかった。
東京に居るのだ、無理も無い。
母曰く、私がリアル病に罹ったばかりの頃は、何度も見舞いに来てくれたらしい。
まあ、会えないものは仕方無い。
きっと彼女も仕事を頑張っているんだろう。
芸能ニュースの中の画像で笑顔を見せる彼女に別れを告げ、私は母の「出来たよ―」の言葉に、朝御飯を食べる方に気を向けるのであった。
因みに、朝のメニューはスパゲティミートソースであった。寿司の次の日の朝がスパゲティ・・・そんな何とも言えない取り合わせが母らしくて良いと思った。
玄関の引き戸を開ける。
外はもう、大分明るい。
夢の中と現実で、同じ下豊松という場所に住んで居るというのは、何とも皮肉である。
しかし、ここに住んで居る者の大半は「あの人間」では無い。それは良かった。
向こうから、背の高い人の形をした者が二人やって来る。
マジンだ。
マジンとは、『魔法力を動力源とした機関化人間』の事である。
人間と言いつつ、見た目は完全に機械にしか見えない。体全体が金属体で構成されているのだ。パッと見、夢の中の創作物に登場したアンドロイドである。
しかし、ロボットでは無く、人間なのだ。
緑色の方がライジンさん、灰色の方がカノックさんだ。
ライジンさんが挨拶して来る。
「やあ、昨日は楽しかったですね。」
「でも本当に完治してよかった。」
これはカノックさん。
私は二人に昨日の完治祝いの礼を言う。
二人共両手で私に握手してくれた。
・・・私はどうも、マジンに好かれているらしい。
それは昨日、八十助(やそすけ)の爺さんにも言われたのだ。
マジンに限らず、機械そのものに好かれているのやも、とも。
まあ、いい。
そんなこんなして居る内に、向こうから一団が現れた。
大人の女一人と、子供数人。
いや。この言い方は正しく無い。どうにも夢の中のイメージを引き摺ってしまっている。
引率して居る女の名前は素奈子(すなこ)。耳が狐の様に後ろに尖っている。ラオクシャという人間だ。
んで。引率されてる方が、夢の中で言う所の人間、つまり「あの人間」な訳だ。
この世界ではこの人間は正確には、隷人間(れいにんげん)と言う。
この人間は、夢の中の世界で言う所の子供のまま体の大きさが止まる。
そこそこ数が居るらしいが、他の人間と違い、この隷人間、魔法力が極端に少ない。
後、当たり前だけど、他の人間同様、不老不死だ。
昨日、夢の世界では寿命がある、とみんなに説明したら、
「何それ?」と言われた。
「時間が経つと生物は死んじゃうんだよ。」と説明すると、みんな爆笑して居た。
「何でそんな出来が悪い生物ばっかりなんだよ!」
ってな具合に。
うん。確かに現実に戻って見ると、明らかに変な世界だったな。
不完全にも程がある。
「よっ!元気か?」
素奈子が気さくに声を掛けて来る。
因みに、さっきの回想の会話の「何それ?」は、この女だ。
「昨日は取っておいた寿司食って悪かったな。」
両手を顔の前で合わせて、謝罪のポーズを取る。
取っておいたサーモンを食ったのも、この女だ。
「美味かったよ。」
反省してないだろ。
「やあ、これは素奈子さん。」
ここでマジンの二人と素奈子の世間話が始まった。長いんだよな、これが始まると。
そこで人間に話し掛けられた。
「ねえねえ、猫さん。私、炎の魔法使える様に成ったよ!」
そう言ってリサ・・・この、肩より長い少し茶色っぽい髪の毛を下ろした人間ね・・・は、両手を体の前に何かを包む様に出した。すると、薄青い光が発されたのが目視された数瞬後に、両手の間に7、8cmの火球が生じ、そしてすぐに消滅した。
「よく頑張ったね。」
取り敢えず、頭を撫でておく。
リサは擽ったそうに目を細めた。
※折角新しい年(2022年)に成ったのだから、何か新しい話を書こうと思って書き始めたのが、これ。○○へ行った、△△を食べた等の日常の話を淡々と描いて行く様な作品。しかし、幸せな会話を書こうとして、「幸せな会話なんてした事あったっけ?」と思ったら、何も書けなく成った。なので、この後の展開だけ簡潔に書いておく。もし、書きたく成ったら、その内続き書くかも。
・素奈子が教えてるのは、魔法学校。魔法学校は、夢の中で登場した小学校に相当するもの。生徒は隷人間。隷人間の制服は、Tバックの様な尻頬が完全に露出している形状で、これは尻をすぐに鞭で打てる様にする為。で、実際この後、素奈子が主人公にしつこく纏まり付いてくる隷人間を叩く。
・魔法力は誰でも持っていて、隷人間だけが極端に少ない。魔法力は正確には『プシュケー』という名称。
・その後、家の裏手に在る小さな神社に住む、八十助という爺さんに会いに行く。リューダインという東洋の龍の様に胴体が長い姿の龍みたいな人間。
・んで八十助と別れ、その後また我が家の前に戻って来るとシオリが来ていて、『私』は凄く喜ぶ。だが、シオリは仕事が忙しいので、すぐに東京に帰ってしまう。私は少し、がっかりする。尚、シオリは隷人間では無い。
・そんな主人公を励まそうとしてくれたのか、後からやって来たニック(単眼のサイクロキューという人間)とジョーイ(狼の様な全身を体毛に包まれた人間。因みにジョーイの体毛は黒に近い灰色)
が、一緒にランドレイドで何処かに行こうと言い出す。
・ランドレイドは全高4から5mの搭乗型の人型のメカ。元々は兵器だったらしいが、現在は一般用の乗り物として流通している。内部は意外と広く、三人位なら余裕で乗れる。外見的な形状はズングリムックリしており、機体によっても異なるが、基本的には降着状態に成る時に天板(ルーフ)と前面のコンソール類が纏まっているコントロールパネル面が前方に開いて、簡単に乗り降りが出来る様に成っている。或いは胴体左側面部にも簡易な金属製の昇降梯子が取り付けられているので、ここからの乗り降りも可能(大袈裟に成らなくて済むので、この方法が選ばれる事も多い。事実、主人公達もこの時、側面部から梯子で乗り込んだ)。車も普通に存在するが、ランドレイドは頑丈でレジャーにも使えるので、ちょっと高い車みたいな感覚で使用されている。走る事には特化していないので、車よりは速度は出ない。ただ、背面部のスラスターを全開に吹かせば、どんな旧式のオンボロ機体でも時速120kmは普通に出る。但し旋回性は大幅に下がるので、小回りは利かなく成る(最小回転半径が大きく成る)。
・素奈子は隷人間達を連れて魔法学校に戻ると言い、ライジンさんとカノックさんも家に帰ると言い、なので、ニックとジョーイと一緒にランドレイドで麓の町(福山市)へ行こう、という話に成る。
・何処でこんな物(ランドレイド)を入手したのか、という話に成り、ニックがネットのオークションにて中古で落札したとの事。機種は『シータ・オートマトン社製VGAn-011 グレムリン』。相場750,000から1,000,000の所を500,000で落札したそうな。いろいろな部分が故障しているらしいとの事だが、破断していたエネルギー供給パイプを中古のパーツと交換したら、普通に動いたとの事。「本当に大丈夫なのかよ。」と主人公がツッコミを入れる中、でもやっぱり、ホンダソウのランドレイドとかいいよなあ、という会話に成る。『HONDA-SO』というメーカーで、宗一郎という人間が作ったらしい。そこのはこだわりの仕様らしく、マニア垂涎の物が多いそうだ。「俺達には高嶺の花だよ」なんて言いつつ外の風を受けながら進んでいると、やがて、街の姿が見えて来た。
この辺りで、第一話分が終わる位の頃合い。
・因みに、グレムリンは数世代は昔の機種で、完全に型落ち品。別仕様機種が軍用にも供給されており、『VGAf-011 グラムヘッド(Gram head)』という。
↓グレムリンのイメージ画像
このイメージ絵描くのに三時間位掛かった件_(:3 」∠ )_
後、こうして見ると、あんまり人型っぽくない(^ω^;)
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