【ハースストーン】大会環境におけるターゲティング構成の組み方【HS】
0.はじめに。
こんにちはこんばんは。Ombreです。
先日行われたマスターズツアー『虐典裁判』を持って今年度のハースストーンの公式競技大会がひと段落しました。
私の結果は5勝3敗とそこそこの結果でしたが、構成をシェアしたOyatsuさん、執念の蒼汁はともに6勝2敗、構成としての勝率は17勝7敗の約70%と良い成績となりました。
今回構築した構成もそうですが、私が過去ハースストーンのマスターズツアーで上位入賞と言われるX-2の成績を残した4回のうち3回は特定のマッチアップを強く意識した所謂ターゲティング構成を構築し使用したものです。
個人的に得意としているパターンですので、今回はターゲティング構成を構築する際に特に大切にしているポイントをまとめていきます。
普段は戦略的な話についてはTwitterやTwitch配信などで軽く行う程度ですが、今回はこれから競技シーンがオフシーズンに突入すること、15歳から29歳までであれば誰でも参加が可能なIEFの日本代表決定戦が控えていること、今回の話は環境に依らない普遍的な部分が多い内容であることからこのような記事を執筆することにしました。
主に普段競技的にハースストーンを取り組んでいる人や、過去に大会に参加したことのある人向けの内容であり少しマニアックな内容も含みますが、自分ではもうプレイ頻度は下がったけれども普段大会配信をご視聴し楽しんでいる方にもより選手視点での思考が分かるような内容になればと思います。宜しくお願いします :)
1. 4Hero 1BANルールとは。
まず初めに公式大会や大型大会で良く用いられるBo5コンクエスト形式4Hero 1BANというルールについて説明します。
出場プレイヤーはそれぞれクラスが異なる4つのデッキを持ち込み、お互いが相手のヒーローを1つ使用不可(BAN)します。
残った3つのデッキで対戦を行い、勝ったヒーローは使用不可となります。これを繰り返し先に3勝したプレイヤー、すなわちBANされなかった全てのヒーローで勝利したプレイヤーがその対戦の勝者となります。
すべてのヒーローで勝利する必要があるというのがポイントで、これにより大会の構成には大きく分けて2つのパターンがあります。
2.構成の組み方の基本パターン。
(1) グッドスタッフ構成
グッドスタッフ構成とは、単体で優秀なデッキを4つ揃えた構成のことです。参加者が多い大会ではこの構成が大多数を占めます。
この構成を組む上で重要なのは何を持って「優秀」であると評価するかです。それは「どのデッキをBANするか」によって大きく変わってしまいます。前提となる戦う相手のデッキの範囲が変わってしまうと勝率の高いデッキも変わってしまうのでBANの一貫性も求められます。
具体的な構築手順としては、ラダーや大会の勝率の高いデッキを上から順に8つか9つほど抽出し、それらの中で共通の苦手としているデッキを探します。次に、その苦手なデッキをBANした想定で再度抽出したデッキの中から4つを選択しなおすことで使用デッキを確定させます。
実際のところ、1つか2つはこれだけでデッキが決まるのですが、この後は個別のデッキの採用カードによって特定のマッチアップで勝率が変わる部分もあり、3つ目や4つ目のデッキ選択が難しく毎回選手達はそれぞれの信じたデッキを持ち寄ることでコントロール系やアグロ系などバリエーションが生まれます。
メリットはデッキパワーが高いデッキを多く構成に取り込めるので対面時点で大きな不利を付けられるリスクが少ないこと、デメリットはミラーマッチも多くなるので個々の対戦でのプレイングの重要度が上がることが挙げられます。他のプレイヤーと差をつけたければ「統計上は不利だけど自分なら勝てる!」というマッチアップが2つほどあれば大きな強みとなるでしょう。私もそういったマッチアップがある際に積極的に選択します。
(2)ターゲティング構成
ターゲティング構成とは、特定のデッキに対して勝率が高いデッキを4つ揃えた構成のことです。その程度によって「ハードターゲティング」「ソフトターゲティング」などと表現されます。
ターゲティング構成では「どのデッキを倒すか」を重要視しており、目的を持ったデッキ選択やデッキリストになっていることが多いです。
全くターゲットがいない場合には対面した段階で圧倒的な不利を背負うことになります。そのためリスクを嫌って選択するプレイヤーは少ない印象です。反面、ターゲットがいた場合には再現性のある形で勝利ができるので大会でも安定して勝ち上がることができます。
ターゲットとするのはどのデッキか、そしてどのようにして倒すのか。
そこまでのイメージを固めるための手順が今回の記事のメインです。
3. ターゲティング構成の組み方。
具体的なターゲティング構成の組み方は2段階ステップに分かれます。
(1)ターゲットの選定
最も重要になるのがターゲットの選定です。この段階から失敗してしまうと全く良いところの無い構成となってしまいます。
失敗には2つのパターンあります。
①ターゲットにしたデッキの使用率が低い。
ただ大嫌いだからということで機雷ローグをターゲットにしても、大会で嫌いな機雷がいないのであれば勝率は上がりません。
当然対面する確率が上がるのでターゲットにしたデッキの使用率は高ければ高いほど好ましいです。
これは他の参加者の持ち込みによるので結果論になりやすく毎回的中するのは難しいです。しかしながら、例えばラダーでの使用率が高い、ラダーでの勝率が高いなどせめて何か1つか2つは大会での使用率が高くなるだろうと予測できる要因が欲しいところです。
可能であれば一度前述のグッドスタッフ構成を自身で考えてみた後にその候補になったデッキの中から選定するのが良いでしょう。
②ターゲットにしたデッキに普通に負ける。
こちらの失敗パターンの方が多いかと思います。
最強の戦術ができたと思ったのに実際に試してみたら全然勝てずに思っていたのと違うということはカードゲームプレイヤーならば一度は経験したことがあるはずです。
この失敗の多くはターゲットにしても良いデッキの条件を具体的に設定できていないことが原因だと考えています。
私がターゲットを設定する際に意識しているのは対象のデッキが以下の3つの条件全てに当てはまることです。
マナコストを踏み倒した動きがないデッキ。
勝ちパターンが固定化されているデッキ。
構造的有利によって倒せるデッキ。
1つ目、2つ目はどちらも再現性のある対策をするために必要になってきます。相手の勝ちパターンを成立させないことが最も簡単に対策する方法なのでその速度が極端に早くなったり、一つを封じても第二、第三の策があるデッキは対策が困難です。
3つ目はより細かくいうと「特定の対策カードを用いずとも、本来のデッキコンセプトを満たすために入っているカード群だけで有利であること」です。これを構造的有利と定義します。
特定の対策カードのみに依存したターゲティングは不安定であり、ソフトターゲットならば許容されますが、ハードターゲットをする際にはそれらのカードを採用することに加えて、構造的有利も付けられるデッキを選択するのが理想です。
(2)達成目標の設定
対策するデッキを決めることができたら次はどのようにして対策するのかを決めます。そのためには対象となるデッキの動きを知り、そこから逆算して目標となる速度と状況を設定します。具体的であればあるほど望ましいです。
例えば序盤の盤面の除去能力が低いが、7マナから除去性能が向上し、終盤のカードパワーが圧倒的なランプドルイドを対策するとすれば、勝利条件は「相手に7マナに到達される前に、相手のライフを10以下、自身の盤面の総体力を15以上にする。」などになるでしょう。
デッキに入っている総打点が46点しかないフリーズメイジを対策するとすれば「体力を0にされる前に、装甲をミニオンから受けたダメージの他に17以上獲得する。」になるでしょう。
重要な点は状況だけでなく、速度もイメージすることです。
これにより対策カードを採用する際の枚数や、採用する対策カードのマナコストにも影響が出ます。対象となるデッキの動きに詳しくなければ、この勝利条件の設定は難しいです。実際にそのデッキを自分でも回してみることで目標設定の精度を上げるのもとても大切です。
また実際に目標の設定を行ってみると、一見違うデッキタイプでも似たような目標を達成できれば一緒に倒せてしまうと気が付く場合があります。
過去の例でいえば、爆弾ウォリアーを倒すための目標と欠片デーモンハンターや武器アグロローグを倒すための目標はほぼ同じであり、爆弾ウォリアーをハードターゲットとした状態でも他の複数のデッキを同時にソフトターゲットできることが分かりました。
こういった共通点を見つけて同時に対策することが出来れば更に有利な対面が発生する確率は高まるためより良い構成を構築できるでしょう。一度抽象化して分解することで新たな気付きを得ることは日常生活でもよくあることです。
最後に設定した達成目標に合わせてデッキを構築していきます。
武器破壊カードであれば2マナのウーズにするべきなのか、5マナと重い代わりにリソースが得られるハリソンにするべきなのか、除去の選択はどれが好ましいかなど、詳細な条件が決まっているからこそ理由を持ったカード選択ができるようになります。
4. おわりに。
今回は大会におけるターゲティング構成を構築する際に個人的に大切にしている考え方や、失敗を避けるために設定するべき条件についてまとめました。
ハースストーンの競技シーンに参加するようになってから5年ほどになりますが、ある程度再現性のある結果も得られるようになってきてそろそろ言語化するタイミングかなと思いました。
今年の公式の競技シーンは終わってしまいましたが、日本ではまだまだIEF予選が残っているので参加される方は頑張ってください!
IEFは過去は学生限定の大会だったという歴史もあり、特に若いプレイヤーの皆さんの活躍に期待しています!
tiboltさんが運営している大会練習用Discordチャンネル「MT駆け込み寺」ではマスターズツアーだけではなく、IEFのようなコミュニティ大会用の調整相手を探すのにもおすすめです。練習環境にお悩みの方は参加してみたら如何でしょうか。私も参加しています :)
ではまた。最後までお読みいただき、ありがとうございました :)
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