【オンボーディング失敗体験記 vol.3】 成果の出ないメンター制度
オンボーディング失敗体験記とは、とある新入社員が、上司とのコミュニケーションや会社の仕組みなどから、少しずつやる気を失ってしまう物語です。経営者や人事またはマネジャーが、「新入社員が会社になじむため、適切なオンボーディング手法を学んでいく」をコンセプトに発信しております。
そもそもオンボーディングとは、新しく組織に加わった新入社員(新卒・中途の両方を指す)に対して、早期離職を防ぎながら、有用な人材に育成する施策のことをいいます。もともとは、船や飛行機に新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して、必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指しており、そこから派生した人事用語です。
新入社員が入る全ての会社は、適切なオンボーディングを実施することを求められます。有効なオンボーディング施策の結果、早期離職を防ぎ、定着率を上げることができます。以下は、新入社員が新しい組織になじむフローを図式化したものです。
それでは、「本日の失敗体験記」を見ていきましょう!
本日の失敗体験記
〈「メンター制度」を導入したばかりの会社にて〉
会社「本日から、当社でもエンゲージメント施策のために、メンター制度を導入します。まずは入社したばかりの新入社員と先輩社員とのメンター制度から始めていきます!上司は、1on1などを通して、部下の面倒をしっかり見るように努めてください!」
社員「わかりました!(最近、メンター制度とか1on1とかよく聞くけど、うちでも始めたんだな)」
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◇あるメンターとメンティーの会話:案件管理化ケース
若手上司:「いきなり1on1って言われてもね〜、人事もとんだ無茶振りだね、、、とりあえず雑談でもしようか」
新入社員:「そうですね」(30分雑談を実施…)
(2週間後)
若手上司:「あの案件どうなった?」
新入社員:「すみません、まだ終わってないです。」
新入社員:「(あれ、案件管理の時間になってる…?)」
⇒現場にメンター制度の目的が曖昧なまま伝わった結果、案件管理の1on1になり、上司が喋りたいことを喋る時間になってしまっている。
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◇あるメンターとメンティーの会話:上司のマウンティングケース
上司「最近の業務で困っていることありますか?」
新入社員「⚪️⚪️と××が不安に思っていて、できるか心配です…」
上司「最初はみんなそう言うけど、他の新入社員もみんなできていたし、大丈夫だよ」
「俺も新入社員の時は、同期最速で達成してたんだけどさ・・・(自分語り)」
新入社員「… 」
⇒目の前の新入社員を見ておらず、過去の傾向や実体験から会話してしまっている。
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◇あるメンターとメンティーの会話:お節介メンターケース
メンター:「⚪️⚪️ちゃん、アニメが好きって言ってたよね!」
新入社員:「そうなんですよ!△△△が大好きでして!」
メンター:「え!私も〜大好き!今度、カフェで語ろうよ!」
新入社員:「え、嬉しい!ぜひぜひ!」
(2週間後)
メンター:「⚪️⚪️ちゃん、昨日の〜観た?」
新入社員:「観ました!(あれ、このメンターさんとは仲良くなってるけど、他の人とは全然話してないな…)
⇒メンターとメンティーとの関係性だけ深くなり、メンター以外の社員との関係性を築く機会を得られていない
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オンボーディング失敗体験記の解説
今回は、メンター制度についてのオンボーディング失敗体験記です。従業員満足度を上げるために、会社がエンゲージメント施策や1on1制度を、とりあえず導入し、”空中戦”になってしまう事象をよく聞きます。
今回も、具体的な目的やルールを浸透させないまま、スタートさせたメンター制度に対し、現場は迷走してしまいました。結果として、人事や経営陣が当初想定していた効果が得られていません。日頃、多くの人事の方々と会話する中で陥ってしまうあるあるです。
解説:メンター制度の目的が統一されていない
メンター制度がうまく機能していない大きな原因は、企業によって制度の目的がバラバラであることです。各上司や各メンターが、自分自身で調べたやり方のもとで進めてしまい、十人十色なメンタリングが社内で蔓延ってしまいます。
Omboでは以下の2つをメンター制度の目的として定義しております。
不安や悩みの相談に乗ること
社内の人的ネットワークを広げること
業務のキャッチアップについては、OmboではOJT担当がメインで担うことを推奨しております。
とはいえ、メンターもOJT担当も、時にはそれぞれの領域に踏み込んだ会話をしないといけないことが起こり得るので、その場合はメンター・OJT担当者間でコミュニケーションを取ることが大切です。両者が、それぞれ違うやり方やスタンスで新入社員にメッセージを伝えてしまうと、新入社員の不安が高まり、業務のキャッチアップの遅延に繋がってしまうこともあり得ます。
3つ具体的なケースを挙げましたが、いずれも目的が共通化されていないことが原因です。運営局(たいてい人事・経営陣)から目的が明確にされていない場合、こういった事象が起こります。運営局は明確にしていると考えていても、導入初期は粘り強く目的を発信し、メンター側の運営状況について直接ヒアリングをし、精度を上げていく努力が必要です。
その他の”失敗”の声
失敗体験記の他にも、実体験として、このような声があがったこともあります。
『入社1ヶ月目は、業務を覚えることに集中したいので、キャッチアップのためのフォローは欲しいですが、心のケアとかは正直なところいらないです。』
→中途入社者は早めに仕事ができるようになりたいという意向が強い場合がよくあります。この場合は、本人の意志を尊重し、一方で、状況は見守ってあげるようにしましょう。
(メンターの声)『最近、コーチングを学んでまして、他のメンターはティーチングをしているように見えるので、私のやり方が正しいですよ!』
→メンター側がメンター制度を自己成長の場として捉えているケース。メンター制度はあくまでメンティーのためにあり、どのようなコミュニケーションを取って欲しいか伝えないと、メンターの自己満足の場になってしまいます。
『必要以上にケアしていただいて、ありがたいのですが、ちょっとやりづらかったです。』
→優しい組織、上司ではあるものの、ケアが”Too much”だったケース。これは新入社員側もちゃんと「今はケアは足りているので、困ったら相談しますね」と伝えるべきですし、メンター側も新入社員を信じるというのは必要です。性格を、自己理解・他者理解するのも効果的です。
『メンターの方は良い人なのですが、自分が女性ということもあり、女性ならではの不安とかは女性のメンターがいると良いなと感じました。』
→これはメンター選びが誤っているケースでもありますが、メンターが他の女性先輩社員と繋げてあげることで解決できた問題でもあります。
メンター制度においてこのやり方が正解というものはないので、失敗はつきものではあります。ただ、その根底にはメンター制度は新入社員のためにあり、新入社員の不安や悩みを解消し、早期に組織に馴染み、業務キャッチアップができる状態にすることが目的という共通認識を持つことが大切です。
オンボーディングでやるべき3つのこと
今回の失敗体験記から得られる学びとして、3つの学びがあります。
①会社からのメッセージに軸を持たせる
1. 目的・役割の発信
解説した通りに、メンタリングの目的を ①不安や悩みに寄り添う ②社内の関係性を広げることと設定し、現場に伝えます。同時に、マネジャー・OJT担当・メンターとその役割を明確にします。
・マネジャー:組織の成果に責任を持つ(新入社員の育成全般に責任を持つ)
・OJT担当:業務キャッチアップの促進
・メンター:不安解消・社内の人間関係構築をフォロー
2. 運用ルールの発信
次は基本的な運用ルールを提示します。基本ルールであるため、メンターとメンティーとの会話の中で、柔軟に対応していくことが重要です。
◇基本1on1ルール
・初月:1週間に1回の30分1on1
・2ヶ月目〜:隔週で実施
・3ヶ月目〜:月1で実施
◇場の設定
・「どんな時間の使い方にしたいか」「どんな事を話したいか」はメンティー側へ聞くようにしましょう。無い場合はメンターから示唆を与えましょう。
3. メンター選び
メンター制度の実施においてメンターとメンティー(新入社員)の組み合わせは重要です。以下ポイントを考えながら選びましょう
ポジション:ポジションはできるだけメンティーと同じグレードで選びましょう
志向性:早期キャッチアップをして成果を出したいタイプなのか?組織にゆっくりと馴染んでいきたいタイプなのか?
性格:社交的か、悲観的か、チャレンジ精神があるかどうかなどの性格を考慮した上で組み合わせましょう。最初は、相談のしやすさ、共感のしやすさという観点から、性格が似ているタイプのほうが良いです。
経歴:共感・信頼できるかの要素の1つに、過去の経歴があります。特に強いキャリアビジョンを持っているメンティーには経歴がある人をつけるようにしましょう。
②メンターがリーダーシップを持つ
会社が1on1の方向性を定めた時に、メンターは、その軸に沿ってMTGを進めて行きます。しかし、必ずしも全てのルールに縛られる必要はありません。
新入社員が1on1に対して、どのような所感を持っているかは、もちろん「人による」からです。「心のケアをしてくれてすごく助かった」というメンバーもいれば、「入社直後は、業務を覚えることに集中したいから、2ヶ月目以降から業務以外の面倒を見てくれると嬉しい」というメンバーもいます。
具体的には、メンターとメンティーで、今日の1on1の着地がどんな風に終わっていれば良いかを話し合って決めます。例えば、『以前に、○○の話が出ていましたが、今日の1on1はそのテーマについて話しますか?他の話でも全然大丈夫ですよ』と聞いてあげることです。
会話の中でも、常にポジティブなコミュニケーションにしましょう。例えば相談内容に対して「なぜできなかったのか?」ではなく未来に対して「どうしたらできるようになりそうですかね?」と一緒に考えましょう。相手の人となりや存在を認めて、それを伝えることが大切です。
ちなみに、悪いパターンとしては、以下のような事例があります。
▼おせっかいメンター
→入社して半年経っても、ずっと頻度高く継続してしまい、1on1をすることが目的になっている(メンター側の自己満の可能性が高い)。
▼地蔵メンター
→基本的に何もしないメンター。メンティ側からのアクションがあったときだけ対応する。最初の挨拶すら設定しないケースもあり。(筆者体験談…)
とはいえ、急に業務として降ってきてしまったメンター側の心の状態も理解はできるため、新入社員をメンタリングするメリットも同時に伝えてあげましょう。新入社員のオンボーディングが適切に進むことで、結果として、自身の業務にも好影響を及ぼすこと、チームの成果や会社の業績に繋がることです。そうした納得感を持った上で、懸念があれば運営局で解消の場を設けましょう。
③メンティー(新入社員)側から自発性を発揮する
最後に、新入社員側からの視点で重要なことをお伝えします。
基本的に1on1の場では、新入社員から「こういう時間にしたいです」と伝えてもらうようにしましょう。新入社員はお客さまではありません。メンター制度の初回の場で、進め方や目的をしっかりと伝えましょう。
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Omboに関する詳細は、こちらもご覧ください。
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次回のnoteでお会いしましょう!
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