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『映像研には手を出すな!』が最強にコーチング的なので布教したい
コーチングをバリバリやっている者です。
『映像研には手を出すな!』読んでますか? アニメも最高ですよね?
僕も大好きなのですが、読んでいると「とてもコーチング的だなあ」と思うところが多々あります。両者を愛する者として、布教するしかない! と義務感にかられているので、コーチングと『映像研には手を出すな!』の魅力を書きなぐりたいと思います。
〜〜『映像研には手を出すな!』〜〜
人並み外れた空想力を持つ浅草みどり、金儲けが好きな長身の金森さやか、カリスマ読モだがアニメーター志望の水崎ツバメの3人を主人公に、女子高生によるアニメ制作活動を描くストーリー作品。wikiより。全人類必読の漫画
コーチングとは?
そもそも「コーチングとはなんぞ?」について。団体や人によって表現は異なりますが、ざっくり言うと、「対話によって、相手の自発的な行動を促すコミュニケーション」のことを指します。
▲こんな感じです
どうやって自発的な行動を促すのか。それはクライアント(コーチングを受ける人)の「主語が自分の目標」を引き出し、安心感を与えることによって行動を促していきます。
「主語が自分の目標」を定めよ
人は社会的動物なので、他者の目を気にせずにはいられません。その目を気にし過ぎるがあまり、本当にやりたいことと、他者から求められていることを、がんじがらめにしてしまいがちです。つまり、「ありたい姿」と「あるべき姿」が混在してしまうのです。
▲「やるべきこと」なんて何もないのに
それによって「自分自身がやりたい」と思っていること、つまり「主語が自分の目標」が見えにくくなりがちです。僕自身コーチングする際は「この目標はクライアントが主語の目標かな?」といつもチェックしています。
なぜなら、他者が主語の目標だと頑張れないから。心から「これは自分の達成したい目標だ!」と認識することによって、人は自発的な行動を取ることができます。
こちらは『映像研には手を出すな!』の主人公の1人・浅草氏。ここで彼女が言う「私の考えた最強の世界」は、誰の目も気にしていない、まさに「主語が自分の目標」です。
学校で上映するアニメの締め切りに追われ、校内に残って作業していた浅草氏。もちろん締め切りがあったらからここまで頑張った、ももちろんあるのですが、仕事でもない作業を、学生の彼女がここまで頑張れたのは、「主語が自分の目標」が明確になっているからです。
目標は名詞ではなく動詞で
とはいえ、目標なんてそんな簡単に見つからないですよね。正直、なくても良いとも思うのですが、あったほうがモチベーションにつながるよね、ぐらいのスタンスがよい気がしています。
すみません、のっけから脱線してしまいました…。
気を取り直して、『映像研には手を出すな!』には、3人の主人公がいます。そして彼女たちは皆それぞれ「主語が自分の目標」が明確です。
まずは登場人物の紹介から。先ほど紹介した浅草氏に加え、本作品にはあと2人主人公がいます。1人目がカリスマ読者モデルでアニメーターオタクの水崎氏。そしてもう1人がお金が大好きで頭の回転がめちゃくちゃ早い金森氏です。
まずは金森氏から。金森氏はお金が大好きです。
新しく「映像研究部」を立ち上げ、学校から与えられたボロの活動拠点にやってきた3人。建物の中を探索していた際に、浅草氏が二階から落下してしまいます。普通なら心配するはずですが、
スマホで動画を収める金森氏。お金への反射神経やばい。仲間が落下しているのにマネタイズを考える姿、痺れますよね。
金森氏は「非効率」を嫌うのですが、そんな彼女が効率を度外視して、めちゃくちゃ頑張ったシーンがこちらです。
浅草氏と水崎氏の作業スピードアップのため、PCと液タブを探す金森氏。「PC探し→交渉する→PC取引の証明→液タブ探し→全6400項にも及ぶデータのチェック」と超めんどくさい作業をこなします。
なぜこんなにも頑張れたのか。先ほども書いたように、金森氏はお金が大好きです。ですが、お金のために果たしてここまで頑張れるのでしょうか。
おそらく、多くの人はお金のためにここまで努力できません。お金のために人が頑張れるなら、楽して大金が手に入る宝くじはあんなに売れないはずです。
こちらは、学校の委員会と金森氏の会話シーン。生徒会から目をつけられている(評価されている)映像研及び金森氏は、度々生徒会に絡まれます。
この生徒会の「金好きだね」発言に対し、金森氏はこう答えます。
「私が好きなのは金じゃなく、利益を出す行動です」
え? 待って、かっこいい。
と思いますよね。めっちゃわかります!
そう、金森氏にとってお金は目的ではなく、手段なのです。利益を出す行動が好きなのであって、お金そのものが好きな訳ではない。彼女はそのことを理解しているからあんなに頑張れたのです。
例えば、やりたいことはわからないけど、ファッションが好きな人がいるとします。そういう方には、ファッションにおける「何をしている時」=「動詞」が好きなのかを尋ねると「やりたいこと」のヒントが見つかる場合があるので、ぜひ試してみてください。金森氏のようにやりたいことが明確になるかもしれません。
「安心」が人の行動を促す
コーチングは「主語が自分の目標」を引き出し、安心感を与えることによって行動を促す、と冒頭でお伝えしました。
安心感を与えるとなぜ行動を促せるのか。
例えば、ミスをしたら死ぬほど怒る上司の元で、リスクをとって新しい挑戦ができるでしょうか? 僕はできません。不安定な足場じゃジャンプもできない。人は「安心」があって初めて自発的な行動を起こすことができます。
映像研には「安心」を育む天才・水崎氏がいます。
このシーンは、他者に絵を見せたことのない浅草氏が、金森氏によって無理やりスケッチブックを見せられてしまうところ。
普段は呼び捨てにしないのに「金森てめえ勝手に!」と叫ぶあたり、人に絵を見せること、そしてその感想をもらうことが、とても怖かったに違いありません。
そんな彼女に水崎氏は3つの「安心」を与えています。
①イメージボードと設定画であることを言い当てる
②自分の人生で「初めてあった人」と伝える
③「すごいよ、これ」と賞賛
②と③は、言われた側が「この人には心を開いて大丈夫だ」と安心することが想像できると思います。なぜならこれらは「褒める」行為に該当するから。ですが①に関してはちょっとイメージし辛いですよね。
僕は絵が下手なんですが、例えば犬を描いた時、見た人に「パンダだ」と言われたら凹みます。逆に「犬だ」と言われると嬉しくなります。
他にも、鼻歌を歌ってる時に、誰かにそれを聞かれ「やべ!聞かれた!」と思ったところに「ひこうき雲だね」と曲名を当てられると嬉しくなります。
つまり、人は自分の生み出したものが正確に他者に届くと、肯定されたように感じ、嬉しい気持ちになるのです。そして、相手に「肯定された」と感じさせるスキルをコーチングでは承認(アクノレッジメント)と呼びます。
承認(アクノレッジメント)と聞くと、なんだか難しそうですが、そんなことはありません。私たちが日常的に行う挨拶も立派な承認の1つ。「あなたがそこにいることを承認している=存在を肯定している」というメッセージです。
「金森さんおはよう!」のように「名前+挨拶」は最強のコンボなので、仲良くなりたい人がいたらぜひ試してもらえばと思います。(それにしても「おはよう!」のアンサーが「進捗はいかがですか」な金森氏、本当に痺れますね…!)
「承認」に加え、水崎氏はコーチングのスキルである「フィードバック」も完璧に使いこなします。このシーンは、浅草氏原案のたぬきアニメ、『たぬきのエルラルド』の説明をしているところ。
■フィードバック
コーチングスキルの1つ。コーチが感じた客観的事実を相手に伝え気づきを促す。
浅草氏はたぬきが大好きで、かなり気合の入ったストーリー&設定になることが予想されました。
しかし、「設定を忘れてしまった」と浅草氏。これには驚きました。いつも物語の設定に没頭しすぎてしまう浅草氏が、まさか忘れるなんて。
でも、我々読者は「忘れた」と言う浅草氏が、あまりにも「いつもの浅草氏」なので、そんなこともあるんだな〜と思っていました。
が、水崎氏は浅草氏の曇った表情を見逃しませんでした。
「忘れてないでしょ。忘れられるわけない」
これはいつも浅草氏の表情をしっかり観察している水崎氏だからできるフィードバックです。完全に思考を読み切り「私にはあなたが忘れているように見えない」と客観的な視点を伝えています。
この完璧フィードバックのおかげで、浅草氏は「時間がなくて書けなかった」と素直に告白することができました。
そこから浅草氏は思考を深め、「自分はもっと書きたい!」と自分の底にある想いに気づくことができます。
このように、フィードバックは相手に「私のことをよく理解してくれている」という安心感を与えるだけでなく、相手に気づきを促す強力なスキルでもあります。
が、強力であるがゆえに、的外れなフィードバックをした時のダメージもでかいです。相手をしっかりと観察していない時は大体失敗するので、テキトーに行うのはやめましょう。
(このあと金森氏の男前シーンがあるので、ぜひ漫画を買って読んでくださいね!)
質問は人を助ける
フィードバックは相手に大きな気づきを与えるとお伝えしました。それに加え、コーチングでは「質問」によって相手の気づきを促していきます。
先ほど浅草氏が原案のアニメ『たぬきのエルラルド』の製作過程で、質問の力がよくわかるシーンがあるので、そちらを見ていきたいと思います。
『たぬきのエルラルド』は浅草氏がストーリーを展開し、水崎氏がキャラデザインを担当しました。
ですが、浅草氏はキャラのイメージが暗いことに納得できません。そして、暗くなった原因がストーリーであると判断し、時間もないのに「修正する!」と言い出します。これには進行管理をしている金森氏が黙ってません。
(「人生は有限だ!」、名言すぎる…。)
このやりとりのあと、状況をまずいと感じた水崎氏が、キャラデザを新しく書き上げます。
それがこちら。まんま浅草氏。
笑えるシーンなのですが、同時に「人は自分を俯瞰で見るのは難しい」と示唆している内容でもあります。映像研すげえ。
前置きが長くなってしまいました…。
ここからです。新しいキャラデザを見て空気が変わったことを察した金森氏。すかさず質問を投げかけます。
「このアホが主人公だとどう変わるんですか?」
その下の浅草氏を見てください。無言で思考を巡らせています。このように質問には、これまで考えていたことを遮断させ、質問について考えさせる強制力があります。
浅草氏は質問を受け、
・ストーリーに辛気臭さがなくなる
・ストーリーが止まる
と思考を進めます。
「ストーリーが止まる」と言われたら、普通そこで試合終了ですよね。ですが、金森氏はさらなる効果的な質問を繰り出します。
▲同じシーンを貼ります
「何が起きれば止まらないのですか?」
その質問を受け、浅草氏はさらに、
<浅草氏の思考>
・周りに振り回されるとストーリーは進む
↓
・主人公に対して周りが「あーだこーだ」言うと良さそう
↓
・主人公のいる世界が「自分の正しさ」を主張し合う世界ならOK!
とストーリーを発展させることができました。金森氏は答えを提示していません。質問をしただけです。質問によって「修正するしかない!」と短絡的な思考に陥っていた浅草氏を助けました。
もし、自分が金森氏のポジションだったら、浅草氏が「ストーリーが止まる」と言ったあとに、なんと質問すると思いますか?
ぜひ、一度スクロールの手を止めて考えもらえると嬉しいです…。考えると、
これになれるんで是非。
ありがとうございます…!
おそらくなんですが、「ストーリーが止まる」発言に対し、
「なぜストーリーが止まるのか?」
と質問してしまうのではないでしょうか。
「why」の質問、やりがちですよねえ。あ、もちろん「why」の質問そのものが悪いわけではありません。むしろビジネスの文脈だと「why」でマインドを深掘りするのはとても効果的だと思います。
ただ、「why」は思考を過去に飛ばすので、考えが発展しない場合があります。例えば、自分が何かミスをした時に、上司や先輩から下記のどちらの声をかけられた時の方が、答えを出せそうでしょうか?
・「なぜミスをしたんだ?」
・「何があったらミスを防げた?」
考えるまでもなく、後者ですよね。「何があったら可能になるか」は思考が行き止まりに来た際にとても有効な質問です。実際、コーチングでもよく使うので、是非活用してもらえると嬉しいです。
さて、ここで、金森氏の質問をもう一度振り返りましょう。
▲3回目の貼り。いいシーンなんで何回でもいいんです
「何が起きれば止まらないのですか?」
もうお分かりですね。金森氏も「何があったら可能になるか」の質問を使っていたのです。このように、質問は他者の思考を拡張することできます。そして、その作用によって、質問は救いの手を差し伸べる術になりうるのです。
金森氏の質問によって救われた浅草氏。その後、最高のアニメが完成します。
浅草氏もこの満足具合。そのアニメはもちろん漫画を買えば読めますので、気になった方は是非チェックしてくださいね。もちろん最高です!
以上です!
めちゃくちゃ面白いのに、コーチングも学べる『映像研には手を出すな!』、本当に最高ですよね。今アニメもやっていて、そちらも最高なんでまだ触れてない方は是非この最高コンテンツを楽しみましょ〜〜!
コーチングやってますので、ご希望の方はこちらにDMお送りください!
*今回の記事を書けたのは、『アル』のコマ投稿機能のおかげです。こういう風に「作者の方に迷惑かけちゃうかな…」と考えずに、コマを投稿できる機能最高です。この場を借りて感謝の意をあらわしたいと思います。『アル』チームのみなさん、本当にありがとうございました!
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