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成功するPoCとは

自分がシリコンバレーに通い始めた2016年くらいから,"Proof of Concept",通称"PoC"っていう言葉をよく聞くようになった。

日本語訳では"概念実証"という,あまり理解できない表現ではあるが,自分自身の解釈としては,"考え出された新しい技術やサービスが,本当に実社会において有効なのか?"を検証することだと思っている。

似たような言葉で,”トライアル”というのがあるが,これは現在市場で販売されているサービスのFit & Gapだと思っていて,基本導入するための前作業みたいに捉えているので,前述のPoCとは目的が全く違っている。

で,ここ2~3年前くらいから"PoCの屍(しかばね)"という言葉がよく出てくるようになった。とても残念なことだが,PoCのフィールドを提供したプレイヤー企業・自治体が,予算や補助金が続かずにPoC終了となってしまう現象である。終了という形でフェーズが切られればまだよくて,そのまま放置されている現場もある。

自分も前職のSIer時代に,製造現場におけるIoTやDXを実現するためのサービス構築を目的にPoC実施の提案を積極的に行って,一部のお客さまはPoCのフィールド提供に協力してくれた。当時は,”本格運用できるまでお客さまへ寄り添う"をモットーに取組んでいたが,お客さまはあくまでも"自社利用での有効性"ファーストなので,"よいサービスが構築できるかどうか"は優先度が低いのが当然であり,寄り添うことを意識しすぎて逆に個別ソリューションにしてしまった。

"PoCはトライアルとは違う"。この意識をプレイヤーとなる企業・自治体も,技術やサービスを提供する企業も理解することがまず大事であると思う。つまり,業界が盛り上がるような新しい技術やサービスを世に出すために取組むのだという目的を共有することが成功のファーストステップだと思っている。PoCを通してサービスに必要な要素を構築して,ビジネスモデルを創り出すことまでもプレイヤーが加わるほうがよい。

そう考えると,技術やサービスを提供する企業側に多い,"事例を増やすためのPoC"という発想は失敗へ繋がる危険な考えであると思う。"うちはこれだけ事例があります"とホームページに華やかな実績として掲載されていても,導入してはいるが誰も利用していないとか,本運用のコストが高くて導入できないなど,必ずしもうまくいっているとは言えない状況もあったりする。

現在,三原市デジタル化戦略課が主体で行うPoCについては,プレイヤーとしての実証フィールド提供だけを行うようなことをしない。三原市だけでなく,他の自治体や企業などにも広く利用してもらえるようなサービスの開発を,サービス提供企業との共創で構築していくつもりで進めている。なので,ビジネスモデル,特にマネタイズについては,個別ソリューションになってしまうような要求仕様は考えず,サービスとしての最大公約数は何という角度で適正価格を企業と一緒に検討していきたい。

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