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我が子との共同作業

出産から1ヶ月。ぐんぐん成長する我が子。
ここに出産の記憶を書き留めておく。


35週の検診から入院していた私は、産むまで帰れません状態となり、誘発剤による計画分娩をすることが決まった。
先生からは、状況によっては緊急帝王切開になる可能性が高いことが告げられた。
お腹の赤ちゃんも自力で出てくるために準備しているだろうから。それを応援したい。下から産みたい。
それが私の希望だった。
それに誘発してから、緊急帝王切開になったら、陣痛の痛みと帝王切開の痛みも両方あるって。
もう想像しただけでムリムリムリ!という気持ちも少なからずあった。


37週6日。誘発初日。
翌日の出産に向けて、子宮口を広げる処置をした。
1cmほど子宮口が開いており、そこから何やら水風船のようなものを突っ込まれ、広げていくとのこと。
お股の違和感と出血があった。
その後は、お腹にモニターをつけて、1時間ごとに陣痛促進剤を飲んだ。

陣痛=もの凄く痛い

そんなイメージがあった。
お腹の張りと共にやってくる痛みは、生理痛くらい。
まだ耐えられる痛みだった。
痛みよりも、我が子に会える楽しみの方が大きかった。
大きくなったら一緒にディズニー行きたいな。
産まれたら、まずなんて声掛けようか。
ワクワクがとまらなかった。


夕方には、その日の服薬が終わり、水風船のようなものを取り出すと、子宮口は4cmに広がっていた。

明日が本番。朝食は絶食。
そう言われていたので、夕食は何としてでも食べようとした。
しかし食べ終わる頃には気持ち悪くなり、吐いてしまった。
なんだかいつもと違う自分の身体。
お産に向けての不安が膨らんできた。


服薬をやめても陣痛は続いており、じわじわと痛みが強くなっていた。
消灯時間になり、ベッド頭上の電気を消そうとした時だった。
身体が思うように動かず、なかなか電気が消せない。
もがきながら、やっとの思いで電気を消して寝ようとすると、また痛みが襲って来た。
これ寝れるんかな…
そう思った瞬間

ジョワッ

え…破水!?
目の前で何かが弾けたような感覚とともに、なまぬるい液体が出てきた。
恐る恐るベッドを触ってみると、ぐっしょりと濡れていた。
ナースコールするとすぐに駆けつけてくれた看護師さん。
テキパキ荷物をまとめ、歩いて診察室へ行くことになるが、鈍い痛みとともにズンっと何かが降りてくる。

 「出る!!!」

思わずそう言うと、そのままベッドに横たわった。
診察室への移動を断念し、その場で内診された。
子宮口の開き具合によって行く部屋が決まるようだ。

 「あら!子宮口全開ー!分娩室ー!最後まで頑張るんやで!」

看護師さんがそう言うと、そのまま車椅子で分娩室へ運ばれた。
分娩台へ寝転がると、手術着の先生が現れた。

あ、なんかオペっぽい。

ドラマでよく見る風景にちょっと興奮してきた。
いよいよか。
先生がエコーで赤ちゃんの頭の向きを確認する。心拍も良好。

 「下から産めますね!」

あれだけ帝王切開を匂わせていた先生は言った。
先生や看護師さん達の様子から、ひっ迫した状況ではないことがわかった。
安心した私は、目まぐるしく変わる状況に笑っていた。
まるで遊園地のアトラクションに乗る直前のような気分だった。


陣痛は痛みというか、キタキタキタキター!みたいな波が押し寄せる感覚だった。
自然と身体が動く。
拗らないでと身体を押さえられる。

何度か波を迎えていると、次第にいきみ方がわかってきた。
グッと力を入れると、出そうなのは赤子なのか、ウンチなのか。
もはや、わからないけど力を込める。

 「パッツンパッツンやな!切開しましょう!」

先生は言う。
これはもう「はい」しか言えない空気感。
すぐに麻酔を注射されると、ジョキンという音が聞こえた。

また波が押し寄せ、力を込める。
まさに我が子との共同作業。
二人で息を合わせて動いている感じがして心地よかった。

 「頭出たよー!次で肩ね!」

下を見ると自分の股から我が子の頭が見えた。

キタキタキタキター!!
グググっと力を込める。
スルンと出てきて、産声をあげる我が子。


2021年5月10日 21時45分

愛おしい。
とんでもなく愛おしい。

産まれてきてくれて、本当にありがとう。

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