前車のミラーに映る。怪談・逢魔が時物語「ルームミラー」

毎日、車で通勤しているといろいろなことがある。

通勤で急いでいるのに、前の車が異様なほどのろい。
後ろから見ると、五十代のおじさんのよう。
後続車もイライラして、こっちの車を煽りはじめる。

まあ仕方ないかと、少し車間を詰めた。
片側１車線の道路だったので、対向車も多い。
しばらくそのままノロノロと走るしかなかった。

ほどなく、信号で停まる。
すると、前の車から物凄い視線を感じた。

ぴったり車間を詰めているので、怒っているのかと
思った。
前の車のルームミラーをこちらの車から眺めてみる。

案の定、凄い目で睨んでいた。
怒りがほとばしり出るような憎々し気な目である。

しかし、あれ？　おかしいぞと気づいた。
もう一度、前の車のルームミラーをよく見る。

そこには物凄くデカい目しか映っていない。

そんなルームミラーなど聞いたことがない。
ミラーに顔を近づけていたなら、後頭部がミラー前
にあるはず。

しかし、おじさんはシートに背をくっつけたまま。

気持ち悪い。前の車のヤツ、おかしい！
理解不能の混乱状態でいると、信号が変わった。
気持ち悪いので、ぐっと車間を空けて走る。

前の車はルームミラーにギョロ目を映したまま、
やがて左折していった。

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　　　　　　　　　　　　　投稿　たなさん（男性）