窓の中に何かが・・・。怪談・逢魔が時物語「パルテノン神殿」
車の免許を取りたての頃、毎夜仲間とドライブや
心霊スポット探検やらに繰り出していた。
その日も、男三人女二人で東京Мの町を走っていた。
駅を過ぎた左側には、廃墟になった大きな建物が
あった。
車を停めて門越しに敷地を覗くと、かなり広い中庭
がある。
樹木が茂る庭の五十メートルほど先が、建物の
入り口だった。
ただ、何の建物だったのか不明だった。
何か、すごくヤバそうではあった。
まず、門の右側にプレハブの警備小屋がある。
そして中庭は、左右に自動で動く明るいライトに
照らされていた。
まるで、アメリカ映画に出てくる刑務所の
サーチライトのようで、それが二、三機庭を
隈なく照らしている。
そんな中、若気の至りで我々は脱走兵のように
ライトをかいくぐりながら、何とか建物の玄関前
まで辿りついた。
玄関はパルテノン神殿みたいな感じで、かなり
威圧感があった。
どこか侵入できそうなところを探していると、
電車のように上に開く窓があった。
閉め忘れなのか、窓は下半分が開いている。
「よし、あそこから入ろう!」
友人に小声で促した。
「いや……ちょっと待て。ダメだ……」
いちばん乗り気だったヤツが弱気になっている。
玄関前は警備小屋から丸見えだった。
とりあえず、その窓の近くまで行って様子を見よう
と提案した。
それでも友人は、ヤバイヤバイと必死に繰り返す。
何が? と訊き返しても、後で言うからの一点張り。
仕方なく、またライトをかいくぐって車の所まで
戻った。
「何だよ、どうしたんだ?」
問い詰めると、友人は驚くべきことを言う。
下半分開いていた真っ暗の窓の奥に、
奇妙なモノが居た、という。
それは、鼻のすぐ上まであるヘルメットのような
ものを被った顔だった、というのだ。
そんな得体の知れぬ何かが、無人の真っ暗な窓の中
から、じっと見ていたらしい。
私を含め、他の者にはまったく見えなかったが……。
不思議はそれから一ヶ月後に起きた。
それを目撃した友人とドライブしていたとき。
友人は見えないモノが『見える』ようになっていた。
電柱が立つ間隔ぐらいに、人が立っているという。
そしてついに「危ない、ぶつかる!」と、
何もないところで急ブレーキかけた。
急停車してハンドルにしがみつき、大きく肩で
息をしている。
どうしたのだと訊くと、人を轢いたという。
深く帽子を被った子供だった、と。
もちろん、私には見えていない。
振動もないので、何も轢いていない。
それは、友人にだけ見えていたようだった。
深く帽子を被った……という風貌。
あの日、窓の中にいたというヘルメットのような
ものを被った『何か』に似ている。
投稿 マサルさん(男性・東京都)
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