隣席の臭い爺さんが・・・。怪談・逢魔が時物語「電車の隣席」
電車の中で異様な体験をした。
その日は友人とイベントに参加した帰り。
天気も良く、休日だったこともあって帰りの電車は
混んでいた。
運よく座席が空き、友人とともに七人掛けの真ん中
に座る。
足元の温かさと電車の揺れの心地よさに睡魔が襲う。
友人は買ったばかりの本に夢中だった。
居眠りをしたかったが、隣のおばさんの肘が脇腹に
当たるので、その都度目が覚めてしまう。
それでもいつしか眠りの世界に落ちたようだった。
何分か経った頃、ふぅっと目が覚めた。
イベントの疲れなのか、倦怠感を感じる。
今どこを走っているのか、正面と横を向いて
確かめようとした。
すると、隣にはおばさんではなく小柄なお爺さんが
座っていた。
ウトウトしていたが、駅に停まった記憶はない。
いつ入れ替わったのかと思った。
ただ、そのお爺さん、身なりがみすぼらしい。
よく駅や公園で見かけるホームレス風なのだ。
そのお爺さんが、横を向いたときに顔をぐっと
近づけてきた。
臭かった。
垢と汗が染みついて発酵したような臭いだった。
眠気も吹っ飛び、慌てて逆の友人の方を向く。
友人は相変わらず涼しい顔で本に熱中していた。
友人に窮状を訴えようとしたとき、
またあの強烈な臭いが……。
顔をしかめつつ、恐る恐るもう一度お爺さんの方に
視線を戻す。
すると、そこにお爺さんの姿は無かった。
しかも座っているのは、さっきのおばさんだった。
何が何だかわからない。
狐につままれたような感じでいっぱいだった。
友人によると、私が挙動不審だったことには
気づいていたという。
しかし、居たはずの薄汚いお爺さんは、
まったく見てないらしい。
投稿 ROSEさん(女性・東京都)
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