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死んだペットの奇跡に涙する。怪談★逢魔が時物語#3「泣ける怪談ー犬と猫」

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           ━━ 2023 ━━
        ★ 怪談 逢魔が時物語 ★

            2.10号 #3
            
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       ★ 逢魔が時物語へ、ようこそ ★

 ここは、あの世とこの世の間にあるユラユラとした境界です。
 今宵も、ゾッとする怖い話、不思議な話をお届けしましょう。

 さて、ついに今号は泣ける怪談です。

               逢魔プロジェクト主宰・雲谷斎

 ━ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■oma-kwaidan『泣ける怪談ー犬と猫』
     ・逢魔怪談「咲いたよ」
     ・逢魔怪談「プレゼント」

 ■Information
     イベント 出版物 逢魔が時チャンネル 売店
 ■oma-column
     ・バレンタイン騒ぎ

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             逢魔怪談
      ~~~~~ 「咲いたよ」 ~~~~~

 ある年の夏、十七年間一緒に過ごした愛犬が亡くなった。

 私の人生の半分以上を一緒に過ごした犬である。
 悲しみも大きく、しばらくの間はこの子の写真を見ることも
 できないぐらい落ち込んでいた。

 やがて一年が過ぎると、少し悲しみも和らいでくる。
 やっと遺骨を庭に埋めてあげることにした。

 『冷たい土の下でも、寂しくないように……』

 この子を可愛がってくれていた友達が、一本の苗木をくれた。
 遺骨の側に、その木を一緒に植えてやる。

 その苗木は、『においざくら』という細い木だった。
 植えたときは、まだ枝は蕾をつけたまま。
 無事に根付くと、小さなピンクの花をつけるという。

 この子のために無事に根づいてほしい。
 どうか、美しい花を咲かせてほしい、そう願った。

 しばらくして私は夢を見た。
 私はキラキラと夕日を反射させる綺麗な川の土手を歩いていた。

 川を見ながら歩いていると、前の方からあの子がやって来る。
 私は思わず駆け寄っていた。

 「久しぶりだったね! 元気だった?」
 「うん、元気だったよ。お花が咲いたから見に来て」

 愛犬の声が、あの子の言いたいことが頭の中に直接入ってきた。

 促されるまま、あの子の後をついて行く。
 あの子は何度も何度も私の方を振り返り、尻尾を振ってくれた。

 すると、どこからともなく薄っすらといい匂いが漂ってくる。
 匂いのする方を見ると、そこには小さなピンク色の花を
 満開にして咲き誇るにおいざくらの木が……。

 私はうれしかった、涙が出るほどうれしかった。

 あの子が、花が咲いたよと報告しに来てくれたことが
 ほんとうにうれしかった。

 そこには私の背丈より遥かに高い、見上げるような
 満開のにおいざくらの大木があった。

 でも、ひとつだけあれ? と思うことがあった。
 夢の中で、あの子にやさしく訊いてみた。

 「ねぇ、私の植えたにおいざくらの木って、二十センチほどの
  苗木だったんだよ。どうしてこんなに大きな木になったの?」

 すると、あの子は少し自慢するようにクンクンと
 鼻を鳴らして答えてくれた。

 「すごいんだよ! こっちの世界ではなんでも百倍くらいの
  大きさになって届くんだよ。小さな花束でも、お花畑くらい
  になるんだよ!」

 目が覚めたら、花束もにおいざくらの元に供えてあげよう
 と思った。

          ・投稿:あっきーさん(女性・神奈川県)

 《雲谷斎のイッチョ噛み》
 においざくらが毎春花を咲かせるたびに思い出してやって
 ほしいなぁ。桜はこの子の化身になるかも知れん。

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            逢魔怪談
     ~~~~~ 「プレゼント」 ~~~~~

 一匹の野良猫が家の中に飛び込んで来た。
 以前飼っていたミーという猫によく似ていた。

 「ミーちゃんの生まれ変わりだ!」

 家族はみんな喜んだが、この子は誰にも懐かない。
 いくら呼んでも、決して誰の近くにも寄って来なかった。

 (まぁ最初は仕方ないか……)

 日にちが経てば懐くだろうと思っていた。
 しかし、エサをやっても食べないし、どこで寝てるのかも不明。
 それなのに我が家には必ず毎日来るのだ。

 懐かないなら追い出そうかとも思ったが、
 当時、この辺りでは猫獲りが横行していた。

 昼間は我が家に来ることが多いので、ここなら安全だし、
 まぁ何かの縁だから自由にさせておくことにした。
 そんな勝手な野良でも、一日でも来ないと心配だった。

 猫はいつも私の部屋に入って来る。
 遠くに座って、黙って私の方を見詰めている。

 私の部屋には大きな玩具箱があった。
 そこにはプラモデルやお菓子などがごちゃ混ぜに入れてある。

 子供だった私がオモチャで遊んだり、お菓子を食べている
 様子を猫はじっと見ているだけ。
 猫に近づくと逃げてしまうという繰り返しだった。

 そんな関係が一年近く続いた。

 ある日のこと。
 家に帰ると、懐かない猫が玄関に座って私に向かって鳴く。
 何かを私に伝えたいような様子だった。

 「なんだ? どうした。鳴くなんて珍しいな」

 私は気にせず部屋に入り、しばらくしてオモチャ箱を開けた。
 その中を見て驚いた。

 ネズミの死骸が入っている!

 なんとかつまみ出して外に捨てる。
 何日かすると、またネズミの死骸がオモチャ箱に入っている。

 (たぶん、あいつの仕業だな……)
 猫が犯人であることだけはわかった。

 「なんで汚いネズミを持って来るんだよ!」
 
 言っても無駄だが、猫に怒鳴った。
 それでも懲りず、猫はネズミの死骸をときどき運び続けた。
 野良にとって、ネズミはご馳走らしい。

 (まさか僕に分け前をプレゼントしてくれている?)

 そう解釈した後は、その猫が妙にいいヤツに思えた。
 野良と何か温かいものが通じ合ったような気がした。

            ◆

 そんな交流があってしばらく経った頃。
 いきなり悲しい結末が訪れた。

 猫が何日も帰って来ない日が続いた。
 もしかして猫獲りに捕獲されたのかも知れない。
 いや、野良だから気ままにどこかへ行ったのかも知れない。

 懐かない猫だったが、私にとってかけがえのない友達だった。
 もう心配で心配で、よく眠れないほどだった。
 表でカタンと音がすると、夜中でも見に行った。

 ある日の朝、玄関を見ると、そこに居た。

 顔も体も血だらけで、手や足の骨が折れている。
 ドロドロに汚れた姿のまま、猫は横たわっていた。
 腹にはタイヤの痕があった。交通事故だった。

 「なんだ! お前、どうした!」

 そんな私の必死の声が猫に聞こえたのだろうか。
 まだ、かすかに息はあったのか、私の方にゆっくり
 顔を向ける。

 ニャ~ ……と、ひと声だけ鳴いた。

 『ぼく……死んじゃうのかなぁ……』
 そう言っているように思えた。

 最後の気力を振り絞って、か細く鳴いたあと猫は目を閉じた。

 「お前……死ぬ前に、戻ってきてくれたんだね……」

 涙が止まらなかった。
 泣いても泣いても、涙が枯れることはなかった。

           ・投稿 asshuさん(男性・千葉県)

 《雲谷斎のイッチョ噛み》
 獲物のネズミをくれたのは、恩返しなんやろねぇ。
 最期は可哀そうやけど、猫とちゃんとつながってます。

 こんな泣ける不思議な話を集めた雲谷斎の本ありますよ。
 『泣ける怪談』自費制作ですけど、めちゃ好評でした。
 まだ読んでない方はぜひ!

 ■逢魔が時売店
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【読者便り】

 「2126」1.30号
 その『偶然』は、一体どのような法則によって導かれて、
 そこに在るものなのか。。。

 「二つの条件」1.30号
 場の記憶ではないとしたら、なかなか迷惑なヤツですよ、
 これは。

 テーマは『不穏な車』でしたが、将来自動運転システム
 が実用・普及したら、お化けにカージャックされたり
 なんて話も出てくるんですかねえ。

             <maoさん(女性・東京都)>

 「自動運転怪談は絶対に出てくると思いますわ」雲

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 ・「怖すぎる実話怪談ー叫喚の章」最新刊(文庫ぎんが堂)
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 昔はバレンタイン狂騒曲みたいに大騒ぎやったなぁ。義理と本命
 チョコが飛びまくりや。もらえる者ともらえない者という、あか
 らさまに差別される異常。チョコを用意する女子も苦痛やったと
 思う。今の自分のため、仲のええ友達のためにとの潮流は健全や
 と思う。まぁあれやね、チョコ屋の策略に踊らされんこっちゃね。

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