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甘えたかったのか・・・。泣ける怪談「腕の重さ」

家族に不幸があった友人が、久しぶりに出社した。

身内の不幸をまだ引きずっているのか、元気がない。
どこか調子が悪そうなので、具合が悪いのかと
訊いてみた。

すると、友人は腕が重いとさすりながら言う。
ふ~んと思って、友人の腕をじっと見ていて
驚いた。


なんだか腕がボヤけて見える。


葬儀で、火葬場から帰ってからヘンだという。
よく聞くと、その火葬場はペットの火葬場も
併設しているらしい。

たぶん、動物の霊を腕に憑けてきたのかと思った。
いつも手首につけている数珠で、追い払ってやろう
と思った。

数珠を手首から外し、友人の重いという腕に近づける。
すると、ヒュンッ!
瞬間、「そいつ」はこっちの腕に来てしまった。

友人は腕が軽くなったと喜んでいる。
ところが、今度は自分の腕がずんずん重たく
なっていく。

だんだん肌の色も変わっていくように見える。

重い腕をもう一方の腕で支えながら、ふと思った。
この動物霊は寂しいのじゃないかと……。

犬なのか猫なのかはわからない。
おそらくは室内で飼われていたペットだと思われた。

生前はいつも飼い主に抱かれ、腕の中で甘えて
いたのだろう。

亡くなっても、愛された飼い主との『想い出』
は残る。

まだ魂の未練が、この世を離れ難かったのかも
知れない。
完全に消滅するまでの時間は長くはない。

温かかった飼い主の腕を求めて、憑いていたのだ
とすればよく理解できるし、憐れでもある。

一日経った翌日、腕は元どおりになっていた。
きっと、旅立ったのだろう。


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              ・投稿 arrowさん

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