突然の客が来た日に・・・。怪談・逢魔が時物語「叔父の来訪」
昔、些細な喧嘩が元で、父と叔父は疎遠になった。
だが、ひょっこりと正月に家族を連れ叔父が
挨拶に来た。
なんといっても兄弟だから、父も歓待し叔父達を
招き入れた。
そして、そこから不思議が起きる。
まず、叔父が玄関に入った途端、カレンダーが
パサッと落ちた。
応接間に通すと、何年も壁に掛けてある豪奢な額縁
がドサッと落ちる。
続けさまの落下だったが、まだ偶然だろうと思って
いた。
「今日は何だか変な日だねぇ」
母は愛想笑いを浮かべながら、それらを片付けた。
次に、テレビでも点けようとスイッチを押した瞬間、
バチバチバチッ! 凄い音を立てて故障してしまう。
まだ買って二、三年しか経っていないのに……。
正月にいきなり故障かとガッカリしたが、
私は気を取り直して「叔父さん、いらっしゃい」
と声をかけた。
そこで初めて叔父の姿を見たのだが、あれ? と
思った。
叔父の体の輪郭が、どう見てもぼやけて見える。
それだけではない。
姿全体がフィルターをかけたように黒っぽい。
何度も目をこすって、見返しても同じだった。
たぶん年末の仕事の疲れが、まだ残ってるのだろう
と思った。
その時は気にせず、久しぶりの叔父家族と楽しい時
を過ごした。
夜遅く、叔父達は機嫌よく帰って行った。
悲しい知らせが届いたのは、それから二週間後。
叔父が突然亡くなったのだ。
叔父の運転する車が、高速道路の側壁際に停まって
いたらしい。
故障なのか、ガソリン切れなのかと思われた。
パトロールが急行すると、ハンドルに突っ伏したまま
叔父は冷たくなっていた。
心筋梗塞とのこと。
正月のいろいろな不可解な出来事は、この不幸を
暗示していたのだろうか。
投稿 涼風さん(女性・山形県)
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