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星野源「Eureka」、無常ということ
1月28日にリリースされた星野源の新曲「Eureka」。
曲の感想や考察については、すでに多くの方がSNSなどであげているので、ここではあくまで個人的な感覚にもとづいて、自分の言葉で綴ってみたいと思います。
近年の星野源は、曲作りにおいても、その発言やテレビでの佇まいにおいても、明らかに違うステージに行っている。
そんな彼が1年振りに出す新曲のタイトルが「Eureka(わかった)」。
自身の楽曲でもずっと、「わからない」と歌い続けてきた星野源が生み出す「Eureka(わかった)」は、一体どんなものなのだろうかと心待ちにしていた。
あぁ…………
冒頭のシェイカーとピアノの音で、一瞬にして悟りを感じさせられる。星野源はここまで来たのか……
声を張り上げて主張するでもなく、外の世界に牙を向けるでもなく、ただただずっと、そこに在ったものの歌。手放すように力が抜けていて、でも優しくて丁寧で、そっと寄り添ってくれる。曲を聴いてこんな感覚になったのは初めてだ。
星野源の楽曲からは、「わからないまま」や「まちがえたまま」など、どうしようもない不確かさと向き合い続ける誠実さを感じる。暗い部屋で一人、正座をして、それらと向き合い続けている。ありあまるほどの孤独や諦念を抱え、それでも心の中に、自分だけの炎を燃やし続けている。それが星野源だと思う。
「光の跡」がリリースされた時にも感じたが、近年の星野源の楽曲はもはや古典のようだ。何千年も前から続く、人の世の無常観が、そのサウンドや歌詞から溢れ出ている。
「Eureka」で流れるシェイカーの音を聴いていると、
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
という、方丈記の有名な一節が頭の中に浮かんだ。つい声に出して読みたくなるほどに、リズムや文体が綺麗で、無常観が表されている一節である。
「Eureka」は、これを現代の感覚で、サウンドや歌詞で表現していると思った。一定のリズムで鳴っているようで、どこかズレているようにも感じるシェイカーの音。優しく粒だつその音色には人の体温があり、息づかいがある。
そして、歌詞とメロディの美しさ。
窓から陽が差して滲む
季節が風と踊り纏い詩を歌う
くらだらないだろ
妙に綺麗で 泥臭い
わからない中で
ここまで力が抜けていて、かつ優しいサビは他にないだろう。言葉の一つ一つが、どうしようもないくらい意思を湛えていて、それでいてどこまでも儚い。
そこには、聴く者が、あぁ……………と感嘆するしかないほどの、静かで不思議な力がある。
個人的には、息がしやすくなるような、微かな希望と光を感じる2番の歌詞が大好きだ。
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「Eureka」は、静かに燃え続ける炎のようであり、ゆく河の流れのようである。
だから、人間の心が移りゆく炎の揺らぎや、変わりゆく水の流れに惹きつけられるように、この曲もまた、不思議とずっと聴いていたくなる。
今を生きる人々を包み込むような、そんな優しさを携えたこの曲は、きっとこの先も多くの人に聴かれ、人々の生活に、体温に寄り添い続けてくれるだろう。