<連載>OMと旅する鉄道情景(第3回/牧野 和人)GROUP K.T.R
国鉄色の電車と森林浴
懐かしの車両で賑わう伯備線
鉄ちゃん(鉄道愛好家)の間で中国山地を縦断する伯備線がアツイ。特急「やくも」に使用されている元祖振り子式電車の381 系をはじめ、多くの営業列車が昭和中後期に製造された国鉄型車両で運転されてている。381 系は近々新型車両への置き換えが予定されており、同車の勇退を惜しむ意味合いを込め2022(令和4)年に1 編成が車体をクリーム色の地に赤い帯で装った国鉄特急色に再塗装され、原色塗装車が充当される列車はJR 西日本のホームページ等で公表された。
緑が深い谷あいを彩る清々しい季節に旧国鉄の面影をOM-1 で追った。岡山県新見市の郊外を流れる西川がつくり出した渓谷と線路が絡みながら走る備中神代~布原信号場間。国鉄色の特急「やくも」を撮影する上で想い浮かんだ場所は、両駅間の中程となる道路が洞門で中腹を貫いている端山の稜線上だった。その前にやって来る普通列車や寝台特急「サンライズ出雲」は、他の場所で撮影するとしよう。
設営撤収が容易な小型軽量システム
初夏の装いとは言え、西方中国地方の夜明けは思いのほか遅い。ようやく線路の周辺に陽光が差し込み始めた頃、信号場の近くに架かる橋梁の袂に陣取った。装着したレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO。川の流れを入れつつ、短い編成の電車を迫力溢れる姿で捉えることができるように焦点距離12 ㎜で構図をつくった。
機材を設営してからしばらくして普通列車が通過。2 両編成の電車は、連結面付近に朝日を反射させていた。後は「サンライズ出雲」を待つばかりである。
曲線を描く橋梁を正面に見る小径へ移動する。ところが予定時刻を過ぎても一向に下り列車が来る気配はない。スマートフォンアプリの列車位置情報で確認すると、深夜に駅で人との接触があり、かなりの遅延が発生している模様だ。
ここに居座っていると本日の主役である国鉄色の381 系を目的の地所で撮影するのは厳しそうだ。しばし思案の後、次の撮影地候補に挙げていた稜線上へ移動した。
迅速に構図が決まるOM SYSTEM の仕様
列車の通過予定時刻まではあと僅か。木々が不規則に立つ急峻な斜面を一気に駆け上がった。携行した機材は先ほどと変わらずM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROを装着したOM-1と重量3.5kgほどの三脚。迅速な移動には小型軽量のカメラと広い焦点距離を一本でまかなえるレンズがありがたい。
それでも息を切らして稜線へ出ると、眼下で線路と川と木々の緑が出迎えてくれた。あわただしく撮影準備を行う中、ファインダーの中で適正露出、水平垂直の確認ができるOM SYSTEM機に共通する機能が活かされ、僅かな時間で設営が完了した。山中に遊ぶ鳥のさえずりへ耳を傾ける余裕ができた頃に、後方より「サンライズ出雲」が接近。その数分後には備中神代駅で交換した「やくも」が現れた。レリーズの反応は素早く、6 両編成が線路上に収まった瞬間を克明に捉える。振り子電車381 系の特徴である付随する機器が少ない銀色の屋根面が緑の中を流れた。
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筆者紹介
牧野和人(マキノ カズト / Kazuto Makino )
写真家。
幼少期より写真撮影に親しむ。2001(平成13)年より写真業、執筆業を生業とする。
臨場感に富んだ画像を撮影すべく、全国各地を訪れている。撮影成果は一般誌、児童書、旅行誌、鉄道趣味誌等に掲載。企業ポスター、カレンダー、時刻表の表紙等の大型図版も手掛ける。
※GROUP K.T.Rとは、このnoteを担当する「鉄道を愛し、OMを愛する」3人のフォトグラファー牧野和人、神谷武志、高屋力の名前のイニシャルから取った頭文字です。
グループの首謀者神谷の準地元であり、OM SYSTEMの地元でもある「京王線」の旧社名をリスペクトした名称でもあります。今後もさまざまな鉄道ネタをご紹介していきます。どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします。