3000文字チャレンジ!第99弾!【酒】
20✖✖年、人類は滅亡しなかったが、俺は彼女にフラれた。
核戦争も勃発しなかったし、恐怖の大王も現れなかったが、俺は2~3ヶ月つきあった彼女にフラれた。
どうせ、フるならデートの待ち合わせ場所に、ノコノコでかける前にフってくれよ。アズキ色の電車にのってお出かけするまえにフッてくれよ。
肩をおとし、頭をさげ、はぁ~と大きくため息をつく。
さてさて、せっかく大阪の中心部にヨッチラコッチラでてきたのだ、現在地はキラキラしたショーウィンドウがまぶしい阪急うめだ本店の前。
まわりを見渡すと、人人人。サラリーマンがおおいが、イチャイチャしてるカップルもチラホラ見えるな(タンスに小指ぶつければいいのに)
チラッと左腕の時計をみると、時刻は17:00。待ち合わせ時刻10分前には集合する男だ。デートがはじまる時間になったが、俺一人。
キラキラウィンドウ前にいてもしかたないので、灰皿のある薄暗い場所に移動する。
タバコに火をつけ、ゆっくりとハイライトの濃い煙を肺にいれていく。
ふぅ落ちついてきた。
ゆっくりとこれからの計画をたてよう。薄茶色のチノパンの左後ポケットには、財布がはいっており、さらに豊富な元デート軍資金がはいっている。
季節は7月、気温は26℃ほど風はやさしく吹いており、酒を呑み、ご飯を食べるには良き日だと思われた。
せっかく大阪市にでてきたんだ、うまい酒とおいしい料理を食べて帰ろう。
天六(天満橋六丁目)に先輩がBARを出店したばかりだ、挨拶がてらBARで酒を呑もう。1件目の店が決まった。
地下鉄にのり、天六へとガタンゴトンとむかう。天六は大阪とすこししか離れていないのに、キドった感じがなく、人の顔も活き活きしている気がする。通天閣のちかくと、天六をぶらっと歩けば、大阪のだいたいの雰囲気はつかめるんちゃうかな。
天六商店街がキョロキョロ見渡しながら、ゆっくり歩いていく。うっすら汗をかいてきた。いいねいいね、一杯目のビールがおいしくなるよ。この現象をビール力を高めると言っている。
あるある。トラかジャガー、チーター、目がチカチカするシャツを売ってる服屋、ほんまに天六商店街にはあんねん。
先輩のBARに無事到着する、店先に黒い看板がでており、白い文字で店の名前と電話番号が書かれている。店の名前は読めないや。
木製の扉をカランコロンとあける、BAR店内は木目調のバーカウンターがあり、丸い椅子が6脚。壁には酒がズラっと並べており、つり下げ式の電球がボンヤリと店内を照らしている。
黒いTシャツをきている先輩がバーカウンター内にたっていた。
「いらっしゃい、おったろうか、よく来たな。いっぱい飲んで店に金を落としていってくれや。おったろうなら、ほっといても飲むか。」
「BARの開店おめでとうございます。これぞBARというシンプルな店構え好きですわ。」
「小さい店からコツコツとや、まずはビールか?」
「ビールおねがいします。」
先輩がBARの奥の椅子に座るよう案内する、一人で飲んでいる60歳台と思われるスーツを着ている男性の後ろをとおり、丸椅子にすわる。
白い紙製のコースターがおかれ、シュッとしたビールグラスに注がれた薄金色のビールがおかれた。
コテコテの天六商店街を歩き渇いた体に、ビールサーバーから注がれたばかりの泡と薄金色の液体を胃にながしこむ。
「ぷはぁ~、この瞬間のためにに生きてると思いますわ。」
「おったろうは、ほんとウマそうに飲むよな。」
ぷはぁ~と言うと、ビールの『おいしさ3倍アップ』(おったろう調べ
さらにビールを飲んだあと、ゲップをすると胃から戻ってきた、麦芽の香りを鼻でダイレクトに楽しむことができる。時と場所を選んでゲップしようネ。
ビールグラスを見ると、半分ほどなくなっている。もう半分と思うか、まだ半分と思うか、うん、もう一杯頼めばいいな。
ビールを飲んでいるとき考えることがある、泡って必要なの?泡がたたないようにビールを注いだほうが、ビールをたくさん飲めるのではないだろうか?
口当たりがよくなるや、炭酸が抜けないようになど意味があるらしいが、ビールを提供している店がケチっているのではないだろうかと、なんども考えたことがあるが、飲んでいるうちにどうでもよくなってくる。
1杯目のビールをのみほし、2杯目のビールを注文する。
「ビールは泡なしか?」と先輩が言った。
「え?どういうことですか?」
「酔ったとき、いつも言うてるやろ?『ビールに泡があるのは、店がビールをケチってるんじゃないのかと疑ってるんですよ。』って」
もう一人のお客の男性が、カカカッと笑った。
はずかしい、体温が2℃ほどあがり、頭皮にしっとり汗をかいた。酔っぱらいって喋ったことコロッと忘れるよね。さらに何度も何度も同じことを話したんだろうな。
蚊のように小さい声で「はい、泡なしでお願いします」
「あいよ。泡なしビールはいります」
2杯目のビールを、2℃あがった体温をさげるために胃に注ぎこむ。
「で、どうや?泡なしビールの味は?」
「泡ありとあまり違いわかりませんね。強いて言うなら、泡なしビールのほうがガツンと刺激的な飲み口、さらにビールの風味を感じるような・・・」
男性のお客が「ぼくも泡なしビールを注文していいかな?」と注文した。
「もちろん、大丈夫ですよ。泡なしビール」と先輩が男性のお客に泡なしビールを提供する。
「たしかに泡がないと口当たりが強くなり、ビールの風味をよく感じれますね。ビールの量はたしかおおいですね。」と男性はニッコリと笑った。
「これから、泡なしビールが流行るんじゃないですかね?」
「いや、流行らないよ。」と先輩にピシャリと言われる。
2杯目のビールを飲みおわると、タプンタプンとお腹に水分がたまり体がドッシリ安定してくる。よしよし酒を呑む準備ができてきた。
つぎに何を飲もうかと、グルりとメニューと店を見渡すと、冷蔵庫にいれられた瓶ビールが目にとまった。お洒落な文字が書かれたラベルが貼られたドップリした瓶。
「冷蔵庫にはいっている、瓶ビールをもらいます。」
「瓶ビールあげへんで、売るわぁ。」
「そんな人の揚げ足ばっかりとってると、モテないですよ。」
「おったろうより、モテるから問題なし。」
くう、フラれたばかりなので、グウの音もでない。
「どうせ、今日もデートの予定が流れてBARに来たんだろ?」
ドキッんちょ。
「S◯X、S◯Xと鼻息の荒い牛か、発情した猿みたいにガツガツしてるから、フラれるんやで。」
そろそろ『ヤラハタ』どころか『ヤラサー』にリーチがかかってきた現在、ガツガツしすぎたようだ、反省。
『ヤラハタ』というワードを考えたやつ、滅せヨ!!
一応説明すると、ヤラズにハタチ。S◯Xせずにハタチになった男を『ヤラハタ』とおったろう界隈では言われておりました。
瓶ビールと足の短いワイングラスを目の前にだされた。自分でビールを注ぐスタイルのようだ。足の短いワイングラスに見えたグラスは、瓶ビール専用のグラスのようだ。
瓶ビールの名前は『シャウエッセン』みたいな名前だったと思う。
瓶ビール専用グラスとか恰好いいな、シャア専用みたいなもんか、赤くなく透明だけどな、とクダラナイことを考えながら、専用グラスにビールをトクトクと注ぐ。
瓶ビールの色は麦を焦がしたような黒茶色をしており、日本ビールの黄金色と黒ビールの中間と思ってもらえば間違いない。
よし!ビールと泡の量は7対3、完璧に注ぎきった。
「泡つくるんか~い。」「自分で作るときは泡を作るんですね。」