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夢を書く百一夜⑨

八十一夜

おれはボーリング場へやってきた。
おれは靴をぬぎ、ボーリングシューズを借りる。
いっしょにボーリング場にやってきた大学時代の友人が、おれの靴は3万円ぐらいするバスケットボールシューズじゃないか、靴箱にいれたほうがよいと忠告してくれた。
100円をいれると鍵がかかる靴箱に触ったことも見たこともない靴をいれ鍵をまわした。
100円は、返ってこないと細かい小さい字で書かれている。

ボーリング場のなかにはいると、赤いアロハシャツをきた老人がベンチに腰かけているが見えた。
老人の肌は、漁師のように健康的に焼けているが、腕や足は骨のうえに皮だけを張りつけたようにやせこけている。
髪は白く、肩までのびている。うらやましいことにハゲていない。

異様に元気な老人は、おれを一目みて気にいったと肩に手をまわし、「一緒にボウリングをしよう」と闊達な声でいった。
おれはボーリング場の左端から二番目のレーンへと連れていかれた。

おれは、緑と白が混ざりあったマーブル状のボウリングの球を投げた。
みごとに10本のピンははじけとび、ストライクを獲得。
老人は、とつぜん立ちあがりおれの横にダッシュでやってきた。
そして、「連射じゃ」と叫んだ。
どこから現れたのか空中に固定された小さい黒いボタンを老人は押しだした。
玄関のチャイムをならすように、人差し指いっぽんで必死に黒いボタンを連打している。
「はよ押せ」とおれは老人に怒られた。
おれも目のまえの黒いボタンを人差し指と中指でこするように押しまくる。
銀色の硬貨が、黒いボタンの下あたりからあふれだした。
おれと老人の足元に、ひざに達する高さの銀の山ができた。

硬貨をどう処理すればよいのか、おれは呆然とあたりを見まわす。
とつぜん、おれはオレンジ色のふちのメガネをかけた女性に告白された。
黒髪のショートカットに天使の輪がきらめいている。
銀色の硬貨の効果だろうか。(おやじギャグみたいだと夢のおれも思った)
老人とわかれ、ボーリングシューズのまま外にでる。

おれに告白した女性が、壁にもたれかかっている。
おれがやってきたことに気づいた女性は、くりくりのお目目でおれを見つめ、にこッと笑った。

八拾二夜

窓のそとがうるさい。
おれは、窓をあけた。
窓のそとには、ぶどうの幹が四方八方にのび、青々とした立派な葉は日光をさえぎっている。
そして、丸々とこえた緑の果実、シャインマスカットがみのっている。

その果実をオレンジのくちばしをもつムクドリがついばんでいる。
さらに緑色や黄色のセキセイインコたちも、緑の宝石をむさぼるようにすすっている。
鳥たちの黒い目には喜怒哀楽がなく機械のように見える。

おれは、「こらッ」とおこり、窓をゆらした。
鳥たちは恐れることなく器用にぶどうの皮だけをよけ、果肉だけをかじっている。

とつぜん近所にすむ子どもが、鳥たちに殺虫剤を噴霧した。
鳥たちはギッと、首をしめられたような声をあげ空へと飛びさっていった。
子どもは、してやったりと得意げな顔だ。
殺虫剤をふりかけたぶどうは食べられるのだろうか、とおれは思った。

八拾参夜

おれは、女性に告白された。
健康的に小麦色に焼けた肌。
まっしろい目が、爛々と輝いている。
黒いストレートの髪は、肩甲骨あたりまでのびている。
肩幅はしっかりとしており、競泳選手のように、しなやかで健康的な肉体。

彼女はきっと、罰ゲームでおれに告白してきのだろうと思った。
そうではないようだ。
おれは悦び、彼女と一緒に白い布団にもぐりこんだ。
白い布団に、彼女の黒い裸体があざやかに浮かびあがる。

彼女は、ひじでおれのわき腹をつつき、
「スマホがないと不便だわ、ラインができないわ、スマホを買いましょう、わたしがお金を払うから」といった。

ビルの天井に観覧車がそなえつけられている大阪のビルにやってきた。
スマホだけでなく、おれの服装もださい。
なので洋服やら靴やらをたくさん買ってもらう。
おれは、夢のようだなと思った。

スマホ売り場についた。
スマホを売っている店員は、メジャーリーガーの大谷選手だった。
見上げるほどに身長がたかい。
そして、彼はにっこり笑い、右手にスマホをもち、「このスマホがおすすめです」といった。
見上げている首が疲れた。
彼女は、「このスマホを買います」といった。

おれはたくさんの買い物袋をぶらさげながら、スキー場にある二人のりリフトに彼女と一緒にのりこんだ。
大阪城やツインビルのはるか上空を通りすぎていくリフト。
「いい買い物できたわ」と彼女はつぶやき、右のひじでおれのわき腹をつっついた。
その衝撃で、買ったばかりのスマホが真っ逆さまに落ちていった。

八拾四夜

おれは女性の知り合いと買い物にきた。
買い物中に、知り合いのカップルとばったりと出会い四人で買い物をつづける。
知り合いたちは、携帯電話と服を買いたいようだ。
おれは、とくに買いたいと思うものがない。
ただ、ぶらぶらと皆のあとを金魚のウンコのようについてまわる。

あちらこちらの携帯電話ショップを見てまわり、ついに購入する携帯電話を決めた知り合いたち。
携帯電話の設定のために2時間ほどの時間が必要なようだ。
おれたちは、どこかで時間をつぶすべく電車の駅ちかくの商店街をぶらぶらと歩く。

ふと、新しいタイプのミニクーパーが目にとまった。
車どめが置かれている白い線でくぎられた駐車スペースにバックで進入している。
とつぜん、ミニクーパーは轟音をひびかせ猛烈な勢いで後退しだした。
黒いタイヤからは、白い煙があがっている。
ミニクーパーの後ろのタイヤは、車どめをのりこえた。
さらに下回りは、車どめにガリガリと削られ、金属を研磨したときに飛ぶようなオレンジと赤色が混ざったような細かい火花が飛びちっている。
ミニクーパーは、やがて前にも後ろにも動かなくなった。
車どめが、やじろべえのようにミニクーパーを浮かしている。
ミニクーパーのタイヤは、空回っている。

知り合いのひとりが「この店あたらしいお札がつかえる」といった。
その店は、ファミリーレストランのように見えた。
ファミリーレストランのドアをあけ店内にはいると、「営業時間は23時までですが、大丈夫ですか」と店員にたずねられた。
おれは腕時計で時刻を確認した。
腕時計の短針は、12の数字を指していた。

八拾伍夜

おれは、三日ほど勉強をがんばっていた。
いまは、休憩する時間だと思っている。
おれは従兄弟がいる部屋で漫画を読みふける。
従兄弟たちが寝る布団のうえで漫画を読みながらおれは煙草のハイライトをふかしている。
煙草の灰色の燃えかすが、白い布団のうえに落ちた。
おじさんにジロりとにらまれた。

おれと一緒にグダグダしている従兄弟をおじさんが、真っ赤な顔で怒りだした。
これは、おれまでも怒られると思った。
おれはあわてて部屋をでてトイレへむかう。
トイレへとつづく道は、一流ホテルのようでもあり、飛行場の通路のようにも見える。
広々として清潔ではあるが、どこか物悲しい印象をうける通路。
その通路の壁ぎわに、細長い台がおかれている。
そのうえには、白い陶器にバラの絵が描かれている花瓶が飾られている。
花瓶に花はいけられていない。

おれのほかには、だれひとり歩いていない。
トイレはかなり遠くにあった。
用をすましたおれの携帯電話が鳴った。
おじさんからだ。怒られるのだろうとおもい電話をとらず。
部屋にかえろうと、来た道をとぼとぼと歩いていると、おれが飛びだした部屋の近くにいくつものトイレがあることにきづいた。

八拾六夜

今日は、なにかのテストの日だ。
おれはテスト会場にむかったはずだが、大型書店のまえにたっている。
書店の入り口は、バーゲンセールをしているように混雑している。
混雑する入り口あたりにむらがる人をかきわけ、すきまをぬうように書店のなかへとすべりこむ。

音楽が流れておらず、店員の姿も見えない閑散としている書店の内部。
広々とした通路の空間はさみしげ、本棚だけが物言わずにたたずんでいる。
2階建てのビルほどの高さの本棚。
おれは本棚の一番うえをあおぎ見た。
本棚にはスキマがなく、本がみっしりとつまっている。
なぜか、いまにも倒れてきそうだと思った。
おれは書店を飛びでた。

おれはテストをうける部屋の扉を横にあけた。
そして、部屋のなかにはいった。
長方形の教室だ。
おれがはいってきた入り口の左手には教壇がある。
教壇の背後には、でかい黒板がある。その黒板は、二分割されており、上下にうごかせるタイプの黒板だ。

教壇側のスペース半分には、なにも置かれていない。
ワックスをかけたような綺麗な木目の床が輝いている。
教室のうしろ半分には、机と椅子がスキマなくおかれいる。
机と机のあいだは、ひとひとりが横になればやっと通ることができるほどの幅だ。
すこしお腹のでているひとは座ることができないほどに、椅子と机の空間はきわめてせまい。

すべての椅子にひとが座っているように見えた。
ただひとつだけ、だれも座っていない椅子があった。
おれはその椅子にむかい歩きだす。
おれは、前髪がすだれのようにスカスカの女性に「テスト時間はまだですよね?」とたずねた。
女性は、「もうすでにテストははじまっていますよ」とこたえた。
女性の机のうえには、なにも置かれていない。文房具すらおかれていない。
おれは空いている椅子にすわった。

教室の入り口が、乱暴にあけられた。気の弱いひとが、びくッとするほどの衝突音がひびく。
神経質そうな教授が教室にはいってきた。
教授はなぜか、ぷんすかと怒っている。

八拾七夜

おれは、友人たちと正方形の教室のなかにいる。
文化祭の出し物の準備をしていたようだ。
文化祭の準備は、すべて終わったようだ。
教室内にのこっている生徒たちの数はまばら。
おれと友人ふたりは、教室の窓をあけ、よっこらせと壁をのりこえ廊下にでた。
おれにつづき友人が壁をのりこえる。
その瞬間、友人のカバンについていたキーホルダーが、何かにひっかかり地面に落ちた。
星型のキーホルダーは、廊下と衝突しこっぱみじんに砕けた。
友人は、足をホウキのようにつかいキーホルダーの残骸を廊下のはしによせた。

おれたちは、雨にぬれないようにトタンの屋根がひきつめられた渡り廊下を歩いている。
廊下のよこでは、何人もの生徒たちが段ボールや板になにかを描いたり、色を塗ったりしている。
友人が「1年のときはワクワクし、2年はめいっぱい楽しんだ、3年は卒業するだけ」とつぶやいた。

友人とは校門で別れた。
おれは、真冬のように太陽が落ちるの速度がはやい暗い夜道をひとり歩いている。
しばらく歩くと、ちいさい灯りが見えてきた。
塔のような建物が見えてきた。
塔に見えたものは、縦に細長い家だった。
家の幅は、大人三人をならべたほどしかない。
家の左側にある扉のうえには、木製の看板が掲げられている。
その看板には、イタリア料理の店とだけ書かれていた。
扉のよこには縄ばしごがぶらさがっている。
その縄ばしごは、2階の窓からたれさがっているようだ。
2階の窓のうえには、黒い板に金色の文字でBarとだけ書かれていた。

八拾八夜

部屋のそとが騒がしい。
おれは部屋のカーテンをあけ外を見た。
家のまえの道路にレッカー車がとまっている。
おれの家の駐車場に見知らぬ車がつっこんでいる。
レッカー車は、駐車場につっこんでいる黒いセダンをひっぱりだそうとしているようだ。

おれは、家のそとにでた。そして、状況を確認しようとした。
黒いセダンのドライバーが、つかつかとやってきた。
運転手は、腹がみっともなくつきでて、スキンヘッドのおっさんだった。
そして、「なんでこんなところに駐車場があるんだ」とツバを吐きちらしながら放言した。
「阿呆か、どうやって、一軒家の駐車場につっこむような運転をしているんや」とおれは怒鳴りかえした。
つかみあいのケンカになりそうな雰囲気になった瞬間、ドライバーの背後にレッカー車のフックがぬっと現れた。
その海賊の義手のようなフックは、ドライバーのベルトをすくいあげた。
フックにつながっているワイヤーが、ゆっくりとまきあげられる。
ゆでられたエビのような姿で空中に吊りさげられるドライバー。
ドライバーは、まるで茹でダコのように真っ赤な顔になり、ひっくりかえった亀のように手足をじたばたとうごかし怒っている。
黒いセダンの色もなぜか赤色にかわっていた。

八拾九夜

おれは、ゲームに参加している。
銃をもって戦うサバイバルゲームだ。
4人1組になって戦うようだ。
コンピューターゲームのように、半透明の緑色の画面を空中にひらくことができ、戦っている島の様子を見ることができる。
おれたちのチームのいる地点は、白い点でしめされている。
おれが緑の画面を眺めていると、YOU LOSEと表示された。
おれたちのチームは負けたようだ。

おれたちのリーダーが「つぎはミッションをしっかりとこなそう」と提案した。
ほかの3人は、その言葉に賛成した。

つぎのゲームがはじまった。
ミッションは、ウサギを狩れというものだった。
おれとリーダーは、ウサギを狩ろうとあたりを見渡す。
ほかの2名のメンバーは、敵陣めがけて一目散に猪のごとく駆けていく。
あっけにとられるリーダー。

呆然としているおれたちめがけて、凶暴な牙をむいた狼の群れがつっこんできた。
おれは、先頭を走る狼の頭を銃で撃ちぬいた。
リーダーも銃を撃とうとしているが、銃弾がつまってしまったようだ。
ガチャガチャと銃をあれこれといじっているリーダーの左ふくろはぎに狼のするどい白い歯がつきささる。
さらに飛びかかった狼が、右肩に噛みつく。リーダーは、地面に転がされた。
悲痛な悲鳴があがる。赤い血が煙となってふきあがる。
おれはその場から、そそくさと逃げさった。

九拾夜

おれは男の知り合い3人と歩いている。
旅行からの帰り道のようだ。
ひとりの男が、ダンス教室にいくからここで別れるといった。

おれたちは、電車がくるのをホームでまっている。
怪しげな男が、音もなく近づいてきた。
その黒いスーツを着た男は、「実入りのよい仕事をしないかね」と尋ねてきた。
おれは見るからに怪しげだとおもい、提案を断ろうとした瞬間、おれのほかの2人がやると答えてしまった。
不審な男は、コンドームぐらいの大きさの白い紙をおれたちにてわたした。白い紙は黄色いネバネバした物体をつつんでいる。
男は、おれたちに5つずつその物体をくばった。
「電車のなかで、左の尻をさわってきた人間に白い紙をわたし金をうけとれ」と怪しげな男はいった。

電車が到着した、おれたち3人は電車にのりこみ、それぞれ別々の車両へと移動した。
歩いているとおれの左の尻がこすられた。
まるで、鳥の趾でひっかかれたような感触だ。
おれは、白い紙を右手でさしだす。するとおれの左手に10万円が無造作におかれた。
おれは、すべての白い紙を手渡し、50万円を手にいれた。
おれは、その50万円を左の尻ポケットにつっこんだ。
左手の親指と人差し指に黄色いネバネバした物体がついている。

おれと知りあいたちは、電車をおりた。
ホームには怪しい男が、影のようにたっている。
男は、「金をよこせ」と静かにいった。
知りあいたちは、札束を男にてわたす。
おれも左の尻ポケットをまさぐる。
尻ポケットには、なにもはいっていなかった。
おれは、直観的にスラられたと確信した。
つめたい汗がながれ、ジェットコースターが落下したときのように胃がきゅッとちぢんだ。

おれは、怪しい男に拉致された。
知りあいたちが、何もいわずに立ちさっていく後姿が見えた。
黒のSUVの後部座席に乱暴に座らされる。
おれの横には怪しい男が、ぴったりと座っている。
運転席に人の姿は見えないが、黒のSUVは静かに走りだした。

しばらく走った黒のSUVは、個人が運営するこじんまりとした中華料理屋のまえで停車した。
中華料理屋の入り口が、デパートの自動トビラのようにひらく。
黒のSUVは、中華料理屋の店のなかに進入し、そしてエンジンをとめた。

丸い木のまな板に中華包丁が刺さっているの見えた。
白いエプロンをきたオークがいる。
二本足であるく恰幅のよい豚だ。白い豚の顔のなかで、目だけが異様にギラギラと輝き、凶暴性がにじみでている。
鼻血がとまったときのような赤色の液体で汚されている白いエプロン。
おれは、殺される、そして食べられると思った。

おれは渾身の力をこめてSUVの窓ガラスをつきやぶり、外にころがりでた。
そして、2階にあがる階段をかけのぼる。
丸い窓が見えた。おれは、丸い窓に頭からつっこんだ。
おれは怪我することなく道路へと転がりおちた。

飛びでた道路は、海岸に隣接しているようだ。
防波堤が壁のようにせりあがっており海を見ることはできない。
おれは、右側に走りだした。
しばらく走ると、防波堤がどんどんと低くなってくる。
防波堤の向こう側は、黒い岩がゴロゴロしている岩場がひろがり、その先に白い波をたてている海がひろがっている。
さらに走ると、黒い岩が、どんどん白い砂にかわってくる。
そして、ついには白い砂浜になった。
水着姿の人間たちが、アザラシのコロニーのように寝そべっている。
色とりどりのビーチパラソルがたっている。

肌をこんがりと焼いた坊主頭の少年が、砂浜にぽつねんとたっている。
少年はすべての肋骨が見えるほどにやせ細っている。
少年は、ボディービルダーのようなポーズをとりだした。
左腕を前にだし力こぶを強調させる。
すると、少年の体に空気をいれたように、ぽんッと肉体がひとまわりでかくなった。
つぎに、ゴリラのように両手あげ、右足をすこしだけ前にだす。
すると少年の胸は、肉体派ハリウッドスターのようにふくらみ、タケノコが成長するように身長ものびた。
少年は、両手を背後で組み、そして、胸をつきだした。
少年の肌の色は、ますます黒くなり、筋肉の陰翳がよく見える。
ふと、少年の顔をみると、なぜか平安貴族のように真っ白だった。

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