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マスク、嫌だもん!ーーアメリカ人とマスク

 …と駄々をこねているようにしか見えません、一部のアメリカ人。マスクしたくない人の割合がどれほどかわかりませんが、かなりいます。アメリカ人はとにかくマスクが嫌いです。マスクが存在しないわけではありませんが、つけていたらとんでもない病人という位置づけです。今回は、慣れてないのはわかるけどそこまで抵抗するかね、という話です。

 個人的には、コロナのことがなくても身の危険を感じていました。この国、毎年インフルエンザでとんでもない数が死にますから。それでもマスクしないのよ! ステイ・ホーム前のことですが、密閉空間で何人もゴホゴホしていたことがありました。極めつけに、隣の男性が私の方を向き袖で口を覆って何度も思い切り咳をした時には、やめて〜と言いたくなりました。日本でマスクが不足した時に紹介されたのでご存じの方も多いと思いますが、咳をする時に袖で口を覆うのは欧米マナーです。彼はとても育ちのよい方だったわけです。それでも、たまには逆の袖を使ってくれないものかと私は思ったのでした。

 そんな中、確固たる意思でマスクを装着していたのは中国人です。SARSやMERSで学んだと言っていました。怖い病気を経験しなかった我々日本人は、「周りがしてないのにできないよねー」と流されていました。コロナがじわじわ来ていた2月頃は、消毒液などで消極的に立ち向かうしかできませんでした。コロナ流行直前のマスクから、中国人、日本人、アメリカ人の危機管理の程度が伺われます。人は身をもって怖い思いをしないと学べないようです。コロナを知った私も今は、藁にもすがる思いでマスクを手放しません。最近まで紙マスクは買えなかったため、さらし布とペーパータオル、ヘアゴムで乗り切ってきました。

 国家緊急事態宣言が出てから半月あまりの4月上旬、CDC (疾病管理センター) のホームページではTシャツなどを利用した簡易マスクの作り方をビデオで紹介していました。見出しにのせた写真、公衆衛生長官ジェローム・アダムズ医師の初々しい手つきには胸を撃ち抜かれました。勢いあまって目まで被せちゃってるよー! かわいいー! この頃、ニューヨークでは地獄のような事態になっています。

 現在、フロリダやテキサスを中心に、コロナ感染者数が急増しています。ニューヨークが苦しんでいた頃、フロリダではビーチ開きをしていました。先週になり感染が止まらないので、ようやくベイエリアでのマスク義務命令が出て、7月4日建国記念日の週末はマイアミのビーチを閉鎖すると決まりました。フロリダ州知事は「みんなコロナなんて存在しないかのような振る舞いをする…」とこぼしていました。ニュース映像で見たビーチの人々は、99%がノーマスクで密集しリゾートを満喫していました。ゾッとする光景です。

 お年寄りが多いのとノーマスク罰金があるのとで、私の近所のマスク着用率は99%です。サングラスもする人が多く、みんな強盗のような姿で歩いています。ホームレスの方のマスク率は、一時期に比べ低くなりました。警察や市庁舎に頼めばマスクを無料でくれるはずですが、あまり関わりたくないのかもしれません。何かに挑戦しているのか、マスクなしの若者をたまに見かけます。

 若いから感染しないもーんと単に舐めているだけかもしれませんが、主張があるとしたら、いったい何に挑戦しているのか。多分それは、自由。自由の国アメリカで、マスクをしてもしなくてもいい自由。ノーマスク主張をするのはトランプ大統領支持者に多いようです。ご本人がしないのは有名な話です。男性らしさやリーダーの強さが損なわれるからのようです。国民の自由を尊重しているのだとも言っています。彼が今なお感染していないのは本当に驚きです。

 これも先週のことですが、アリゾナ州ではマスク着用令に対する抗議集会がありました。主催したガイ・フィリップス市議会議員は、「I can't breathe. (息ができない)」と言いながらマスクを外しました。現場は大喝采でしたが、ジョージ・フロイド氏の最後の言葉をパロディに使ったことで世間ではバッシングの嵐が吹き荒れ、市議は謝罪しました。人種差別の意図はなかったと言っていましたが、言い訳を認めてあげるにしても無神経です。

 マスクが嫌なのは呼吸がしづらいから以外に、神の恩寵である呼吸を邪魔するなんてという理屈をつける人もいるようです。そして口を覆われると発言を制限されている気がするという主張まで。私のような声の細いアジア人がマスクをすると確かに聞き取ってもらいづらいですが、あなた達、めちゃくちゃ声が大きいじゃないか。大丈夫、聞こえてるよ。

 トランプ大統領の対抗馬になるバイデン氏は、民主党への投票は科学への票と繰り返す戦略を取っています。今日も記者会見で「大統領よ、科学者の言うことを聞いてください、マスクをしてください」と言っていました。聞いていて悲しくなってきました。大国でマスクごときが政治問題になるなんて…。次期大統領候補が2人してマスクしろ、いやしないと言ってる…。他人の国のことながら、情けなくて泣けてきそうです。されど大統領選を控えた今は、大問題なのです。

 私には呼吸やマスクに思想がないので、単に嫌なだけじゃないの? としか思われません。この件に限っては思想ではなく健康管理の問題なので、とにかくこれ以上医療関係者を困らせないでほしいと言いたいです。CNNのお姉さんが、「自由を主張するのに何をしてもいいということではありません」と一刀両断にしていました。全面的に賛成します。

※マスク等の規制は自治体ごとに決めます。アレルギーや敏感肌、健康上の理由でマスクできない人はいるはずなので、命令で一律に扱わず、配慮はほしいものです。

※2020年7月2日追記: 現地時間の昨日夕方、ついにトランプ大統領が「マスクには大賛成だし、自分がつけるのも問題ない」と言いました。検査の時も渋った末に同じ言い方をしてようやく受けましたから、近々マスク姿が見られるかもしれません。最近は自分の党からまで散々プレッシャーかけられていました😅。この日アメリカではたった1日で5万人の感染者を出しました…。

※2020年7月16日追記: 世界中で報道されましたが、7月11日、トランプ大統領がついに米軍医療施設訪問でマスク姿を公開しました。だからと言ってマスク派に転じたわけではなく、マスクが政治的に語られる雰囲気は変わりません。うんざりだ!

※2020年7月22日追記: 21日、トランプ大統領が「マスクをつけて愛国心を示してほしい」と、ついにマスク奨励に転じました。国内で相当な批判を受けているこれまでのコロナ対策が、間近に迫った大統領選の障壁となりかねません。

※2020年7月31日追記: 南部を中心に感染が増えまくって、7月下旬頃からようやくマスクはしとけという意見が主流になりました。まだ嫌だと主張している人もいますし、少し収まった所で油断して外してたりしますが。






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